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仲介手数料無料?有料?その中身について考える
1.仲介手数料の是非について
不動産取引において、仲介手数料の存在については度々議論が巻き起こります。特に不動産SNSを見ていると、「無料派」と「有料派」に意見が二分されているのがわかります。
この議論が再び注目を集めたのは、ポータルサイト大手のSUUMOが今まで禁止にしていた「仲介手数料無料」の文言を掲載する許可を出し始めたことがきっかけでした。これにより、多くの不動産仲介会社が方針転換を迫られ、真剣に考え直す必要性が出てきました。
有料派 vs 無料派
それでは、それぞれの立場について見ていきましょう。どちらの肯定をしているわけではなく、中立な立場として記載しています。
有料派の主張
有料派は、「しっかりとした仕事をするために、その対価を頂くのは当然です」「プロとして、価値のある業務をしている」と述べています。高い手数料は理解しつつも、その対価として専門知識や質の高いサービスを提供していると主張します。逆に、質の低いサービス提供でも、同等の仲介手数料を頂く不動産会社や営業マンがいるのも事実です。
無料派の主張
一方、無料派は、「高い仲介手数料を支払わなければ、その分を引越し費用や家具代に回すことができます」「自分たちのサービスとして安くするだけなので、他人にとやかく言われる筋合いはない」と述べています。彼らは低コストでのサービス提供を通じて、より多くの人々が不動産取引に参加できるようにし、市場の活性化を図っています。逆にそれを宣伝文句にお客様を誘い込み、無料を良いことに低いサービスを提供している不動産会社があるのも事実です。
仲介手数料の仕組み
ここで、改めて仲介手数料について説明します。仲介手数料は、物件購入価格の一定割合に消費税を加えた金額です。具体的には、物件価格の3%+6万円に消費税が加算されます。例えば、5000万円の物件を購入する場合、150万円(3%)+6万円の合計に消費税がかかります。不動産仲介の取引は1~2ヶ月が主流ですから、高額と言えば高額になります。
高額な仲介手数料の問題点
この高額な仲介手数料は、不動産業界において一部の問題を引き起こしています。特に一つの取引で双方(売主と買主)に仲介手数料が発生する場合、その金額は先程の計算式に対して×2になります。
5000万円の物件取引で156万に消費税が、双方から頂けますので、312万円に消費税という仲介手数料が発生します。このような取引を「両手取引」と呼び、売主または買主の片方からのみ手数料を受け取る取引を「片手取引」と言います。当然ですが、不動産仲介会社、営業マン共に、この両手取引を狙って仕事をしています。
仲介手数料無料は全部の物件では難しく、この両手物件のみに限られます。片手物件ならいくらか報酬を頂いているようです。私の経験則ですが、手数料無料で会社を大きくしていくのはかなり難しいです。
仲介手数料の透明化が必要
結論にはなりますが、不動産業界での長年の経験から「仲介手数料の透明化」が重要であると感じています。無料か有料かという議論は本質的な解決にはなりません。不動産会社や営業マンが仲介手数料について説明する際、詳細を明確に説明できることが必要です。
そのためには、現在行っている業務を棚卸しし、それぞれの業務に対して項目別の価格設定を行います。そして、その詳細を顧客に公開し、顧客が選択できるようにします。たとえば、「このサービスを削るといくら安くなる」「これはこのくらいの料金が発生する」といった具合に、具体的に料金を提示します。
未来の仲介手数料
今後、スマートキーの普及や顧客同士の直接案内が増えることで、鍵を開けるだけの営業マンの価値は減少するでしょう。しかし、この変化もまた顧客の選択次第です。金額と価値が明確であれば、料金を支払ってでも頼むお客様もいるでしょうし、その逆もまた然りです。その判断はお客様にあるべきです。仲介手数料の透明化と適正価格の設定は、不動産業界全体の健全化に繋がりますね。
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2.一方、アメリカではどうだろう?
さて、ここで他国のアメリカの不動産取引についても見てみましょう。欧米が正しいとは言いませんが、違う国のやり方や考え方も見てみるのも勉強になります。
アメリカの不動産仲介手数料
アメリカにおいても、不動産仲介手数料は重要な要素となっています。一般的に、アメリカの不動産取引では手数料は物件価格の6%前後が相場とされています。この手数料は売主が支払い、売主のエージェントと買主のエージェントで分け合うことが多いです。
アメリカの仲介手数料の内訳
アメリカでも、日本と同様に仲介手数料の透明性が求められています。手数料の内訳としては、以下のようなサービスが含まれます:
物件の市場調査と価格設定のアドバイス
プロフェッショナルな写真撮影とマーケティング資料の作成
オープンハウスの実施と個別見学の手配
契約書の作成と法的手続きのサポート
交渉の代理
両手取引と片手取引
アメリカでも、両手取引(Dual Agency)と片手取引(Single Agency)の議論があります。両手取引では、一人のエージェントが売主と買主双方の利益を代表することになりますが、この場合利益相反の問題が発生する可能性があります。片手取引では、各エージェントが一方の利益を代表するため、透明性と公平性が保たれるとされています。
板挟みになる。仲介の頭の痛いところですね。
アメリカの市場の透明性と競争
アメリカの不動産市場では、仲介手数料の透明性と競争が非常に重要です。特にインターネットの普及により、物件情報が広く公開され、エージェントのサービスの質と価格競争が激化しています。これにより、エージェントは自らのサービスに対する価格設定を明確にし、顧客に対して信頼を築くことが求められています。
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メルカリの手数料モデル
ここで、少し視点を変えてメルカリの手数料モデルについても触れておきましょう。メルカリでは、売主からのみ手数料を徴収しています。それも売れた金額から一定の割合を差し引く形です。具体的には、販売価格の10%が手数料として課されます。このモデルは、売主が物件を売却した場合のみ手数料が発生し、買主には手数料が発生しないため、取引の透明性と公正さが保たれています。
メルカリモデルの不動産取引への応用
メルカリの手数料モデルは、不動産取引においても一部参考にできるかもしれません。売主からのみ手数料を徴収し、取引が成立した場合にのみ手数料が発生するというシステムは、透明性を高め、買主の負担を軽減する可能性があります。このようなモデルを採用することで、より多くの人々が不動産取引に参加しやすくなり、市場の活性化が期待できるでしょう。
私は一度メルカリさんにメルカリ不動産をしないかと持ちかけたことがあります。上場前で不動産には手を出さない判断に至ったのですが、不動産取引とメルカリさんは親和性が高いと今でも思います。
まとめ
日本とアメリカの不動産仲介手数料の仕組みには多くの共通点がありますが、アメリカの市場はより透明性と競争が進んでいる点が特徴です。また、アメリカやメルカリの手数料モデルのように、売主からのみ手数料を徴収するシステムも一考の価値があります。
どちらの市場でも、顧客に対する明確な価値提供と信頼の構築が不可欠です。自身のサービスの価値を見つめ直し、仲介手数料の透明性を追求することで、お客様からの信頼を得ることができるでしょう。そうなると、もっと取引が活発化され、より楽しい不動産購入ができる世の中になります。