忘備録>日本のヘルスケア業界を取り巻く環境
大きな前提課題
1. 高齢化による医療費の増大
多剤併用: 高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、複数の薬を服用する「多剤併用」が問題となっています。これは、副作用のリスクを高め、医療費を増大させる要因となります。
社会保障制度の持続可能性: 高齢化の進展は、医療保険制度や介護保険制度の財政を圧迫し、持続可能性を危うくしています。
2. 医療従事者の不足
医師の偏在: 医師は都市部に集中する傾向があり、地方では医師不足が深刻です。特に外科や産婦人科などの専門医不足は、地域医療の崩壊に繋がります。
看護師の労働環境: 看護師の労働環境は厳しく、離職率が高いことが問題です。長時間労働や夜勤など、過酷な労働条件が改善されなければ、看護師不足はさらに深刻化します。
3. 医療の地域格差
医療機関の偏在: 最新の医療機器や高度な医療技術は、大都市の病院に集中する傾向があります。地方では、高度な医療を受けるために長距離移動を強いられる場合もあります。
へき地医療の維持: 離島や山間部などのへき地では、医療機関の維持が困難な状況です。へき地医療を支えるための財政支援や医療従事者の確保が急務です。
4. 医療情報の共有と活用
電子カルテの普及: 電子カルテの導入は進んでいるものの、医療機関間での情報共有は十分ではありません。標準化されたシステムの導入や、セキュリティ対策の強化が必要です。
PHR(パーソナルヘルスレコード)の活用: 患者自身が自分の健康情報を管理・活用できるPHRの普及が進んでいません。PHRの活用は、予防医療や健康増進に役立ちます。
5. 健康意識の低さ
生活習慣病の増加: 食生活の欧米化や運動不足などにより、生活習慣病が増加しています。生活習慣病は、医療費増大の大きな要因となります。
予防医療の推進: 健康診断の受診率向上や、特定健診・保健指導の充実など、予防医療の推進が重要です。
6. 医療技術の高度化と費用
高額な新薬: がん治療薬など、高額な新薬の登場は、医療費の高騰を招きます。費用対効果を評価し、保険適用を適切に判断する必要があります。
再生医療などの先端医療: 再生医療やゲノム医療などの先端医療は、大きな可能性を秘めていますが、高額な費用が課題です。公的支援や保険制度の整備が必要です。
新型コロナウイルス感染症の影響
医療現場の負担増: 新型コロナウイルス感染症の流行は、医療現場に大きな負担をかけました。医療従事者の疲弊や、病床不足などの問題が顕在化しました。
オンライン診療の普及: 感染拡大防止のため、オンライン診療が急速に普及しました。オンライン診療は、医療へのアクセス改善に貢献しますが、対面診療との適切な使い分けが必要です。
よくあるお題で考えてみると
1.DX (デジタルトランスフォーメーション)
医療情報の共有と活用促進: 医療機関間での電子カルテの相互運用性向上、PHR (パーソナルヘルスレコード) の普及促進、AIによる画像診断支援など、医療情報のデジタル化と共有を推進することで、診断・治療の質向上、医療の効率化、地域医療格差の是正に貢献します。
遠隔医療の推進: オンライン診療、遠隔モニタリング、遠隔リハビリテーションなどを推進することで、医療へのアクセス改善、医療従事者の負担軽減、地域医療の維持に貢献します。
健康管理アプリの活用: 個人の健康データを収集・分析し、生活習慣改善を支援するアプリの活用を促進することで、健康意識向上、予防医療の推進、医療費抑制に貢献します。
行政手続きのオンライン化: 医療機関や薬局における各種申請・届出のオンライン化、オンライン資格確認の導入などを推進することで、事務作業の効率化、医療従事者の負担軽減に貢献します。
2. 自動化
医療現場の業務効率化: AIによる診断支援、手術ロボット、薬剤調剤ロボット、清掃ロボットなどの導入により、医療従事者の負担軽減、医療ミスの削減、医療の質向上に貢献します。
介護現場の負担軽減: 介護ロボット、見守りセンサー、AIによるケアプラン作成支援などの導入により、介護従事者の負担軽減、介護の質向上、介護サービスの効率化に貢献します。
物流・在庫管理の効率化: AIによる需要予測、自動倉庫、ドローン配送などの導入により、医薬品や医療機器の物流・在庫管理の効率化、医療現場への安定供給に貢献します。
3. プラスα
AI: 医療画像診断、創薬、ゲノム解析、個別化医療など、AIの活用は医療の質向上、新薬開発の加速、医療費抑制に大きく貢献します。
IoT: バイタルセンサー、ウェアラブルデバイス、スマート病院などの導入により、患者の状態把握、遠隔モニタリング、医療現場の効率化に貢献します。
ブロックチェーン: 医療データの改ざん防止、個人情報の安全な共有、臨床試験データの信頼性向上などに貢献します。
5G: 高速・大容量・低遅延の通信により、遠隔医療、遠隔手術、医療現場でのIoT活用などを推進します。
プラスαをちょっと深堀してみるとどうなる?
AI
医療画像診断: AIによる画像認識技術は、X線写真、CTスキャン、MRIなどの画像から病変を検出する精度を向上させ、医師の診断を支援します。また、大量の画像データを学習することで、早期発見が難しい疾患の検出も可能になります。
創薬: AIは、新薬候補物質の探索、薬効予測、副作用予測などを高速化・効率化し、新薬開発の期間短縮とコスト削減に貢献します。
ゲノム解析: AIは、個人のゲノム情報を解析し、疾患リスク予測、個別化医療、遺伝性疾患の診断などに役立ちます。
個別化医療: AIは、個人の遺伝情報、生活習慣、病歴などを総合的に分析し、最適な治療法や予防法を提案する個別化医療の実現を支援します。
IoT
バイタルセンサー: 心拍数、血圧、体温、血糖値などを測定するセンサーを装着することで、患者の状態をリアルタイムで把握し、異常を早期に検知することができます。
ウェアラブルデバイス: スマートウォッチや活動量計などのウェアラブルデバイスは、個人の健康データを収集し、健康管理や運動指導に役立ちます。
スマート病院: IoTデバイスを病院内に設置することで、患者の位置情報把握、医療機器の稼働状況管理、エネルギー管理などを効率化し、医療現場の安全性向上とコスト削減に貢献します。
ブロックチェーン
医療データの改ざん防止: ブロックチェーン技術は、医療データを分散管理し、改ざんを困難にするため、医療データの信頼性を向上させます。
個人情報の安全な共有: ブロックチェーン技術は、個人情報を暗号化し、アクセス権限を制御することで、個人情報の安全な共有を可能にします。
臨床試験データの信頼性向上: ブロックチェーン技術は、臨床試験データを改ざん不可能な形で記録するため、臨床試験データの信頼性を向上させ、新薬開発の効率化に貢献します。
5G
遠隔医療: 5Gの高速・大容量通信により、高精細な画像や動画をリアルタイムで共有できるため、遠隔診断、遠隔手術、遠隔リハビリテーションなどの質を向上させます。
遠隔手術: 5Gの低遅延通信により、遠隔地にいる医師がロボットを操作して手術を行う遠隔手術が可能になり、高度な医療技術を地方でも提供できるようになります。
医療現場でのIoT活用: 5Gの多接続性により、多数のIoTデバイスを同時に接続できるため、医療現場でのIoT活用を促進し、医療の効率化と安全性向上に貢献します。
として、日本でこの分野で注目でいるところはどこか?
AI
医療画像診断:
LPixel: AI画像診断支援ソフトウェア「EIRL」を提供。
エムスリー: AI画像診断支援サービス「AIドクター」を提供。
CureApp: 呼吸器疾患、ニコチン依存症などの治療用アプリを開発。
創薬:
Insilico Medicine: AI創薬プラットフォーム「PandaOmics」を開発。
ペプチドリーム: AIを活用した創薬技術「PDPS」を開発。
スクラムベンチャーズ: AI創薬スタートアップへの投資を積極的に行う。
ゲノム解析:
ジーンクエスト: 遺伝子検査サービスを提供。
DeNAライフサイエンス: 遺伝子検査サービス「MYCODE」を提供。
サリバテック: 唾液によるがんリスク検査サービスを提供。
個別化医療:
MICIN: オンライン診療サービス「curon」を提供。
Ubie: AI問診サービス「ユビー」を提供。
IoT
バイタルセンサー:
アップル: Apple Watchで心電図測定、転倒検知などの機能を提供。
フィットビット: 健康管理トラッカーを提供。
オムロン ヘルスケア: 血圧計、体温計などの健康機器を提供。
ウェアラブルデバイス:
ガーミン: GPSスマートウォッチを提供。
ファーウェイ: スマートウォッチ、スマートバンドを提供。
スマート病院:
NEC: 顔認証技術を活用した病院向けソリューションを提供。
富士通: IoTプラットフォーム「FUJITSU IoT Solution」を提供。
ブロックチェーン
医療データ管理:
メディブロック: ブロックチェーン基盤の医療情報プラットフォーム「Medibloc」を開発。
データチェーン: 医療データ共有プラットフォーム「Connected Healthcare」を開発。
臨床試験データ管理:
エーピーコミュニケーションズ: ブロックチェーン技術を活用した臨床試験データ管理システムを開発。
5G
遠隔医療:
NTTドコモ: 5Gを活用した遠隔診療の実証実験を実施。
KDDI: 5Gを活用した遠隔手術の実証実験を実施。
医療現場でのIoT活用:
ソフトバンク: 5Gを活用したスマート病院の実証実験を実施。
その他、注目企業
メドピア: 医師同士の情報交換サイト「MedPeer」を運営。
FiNC Technologies: AIパーソナルトレーナーアプリ「FiNC」を提供。
カケハシ: 薬剤師向け業務支援システム「Musubi」を提供。
先の考えにスマート病院というテーマを組み合わせて考えてみると?
1. AI × スマート病院
高度な診断・治療支援: AIによる画像診断、ゲノム解析、個別化医療などは、医師の診断・治療を支援し、精度向上、早期発見、最適な治療選択に貢献します。
業務効率化・自動化: AIチャットボットによる問診、AIによる医療事務処理の自動化、手術ロボットによる精密な手術などは、医療従事者の負担軽減、医療ミスの削減、病院運営の効率化に貢献します。
個別化医療・予防医療の推進: 個人の遺伝情報、生活習慣、病歴などをAIが分析し、個別化された治療法や予防法を提供することで、患者一人ひとりに最適な医療を提供し、健康寿命の延伸に貢献します。
2. IoT × スマート病院
患者の状態把握・遠隔モニタリング: バイタルセンサーやウェアラブルデバイスで収集したデータをIoTで連携し、患者の状態をリアルタイムで把握、遠隔モニタリングすることで、病状悪化の早期発見、入院期間短縮、在宅医療の質向上に貢献します。
医療機器・設備の効率的運用: IoTデバイスで医療機器や設備の稼働状況を監視し、故障予測、メンテナンス時期の最適化、エネルギー管理などを効率化することで、病院運営コストの削減、医療の安全性向上に貢献します。
院内感染対策: IoTデバイスによる人の流れや接触状況の把握、AIによる感染リスク予測などを活用し、院内感染対策を強化します。
3. ブロックチェーン × スマート病院
医療データの安全性・信頼性向上: ブロックチェーン技術による医療データの改ざん防止、アクセス権限管理は、個人情報保護、医療データの信頼性向上、研究開発の促進に貢献します。
医療情報のセキュアな共有: ブロックチェーン技術により、医療機関間での患者の診療情報や検査結果などの安全な共有が可能になり、スムーズな診療連携、重複検査の削減、医療の質向上に貢献します。
臨床試験の効率化・透明性向上: ブロックチェーン技術による臨床試験データの改ざん防止、透明性の確保は、臨床試験の効率化、信頼性向上、新薬開発の加速に貢献します。
4. 5G × スマート病院
遠隔医療の高度化: 5Gの大容量・低遅延通信により、高精細な医療画像や動画のリアルタイム共有が可能になり、遠隔診断、遠隔手術、遠隔リハビリテーションなどの質を向上させます。
医療現場でのIoT活用促進: 5Gの多接続性により、多数のIoTデバイスを同時に接続できるため、医療現場でのIoT活用を加速させ、患者の状態把握、医療機器管理、病院運営効率化などを実現します。
AR/VR技術の活用: 5Gの高帯域通信により、AR/VR技術を活用した手術支援、医療教育、患者への情報提供などが可能になり、医療の質向上、医療従事者教育の効率化に貢献します。
これらの技術の融合がもたらす新たな価値
患者中心の医療の実現: 個別化医療、遠隔医療、AI健康相談などにより、患者一人ひとりのニーズに合わせた医療サービスを提供し、患者のQOL向上に貢献します。
医療の質向上と効率化: AI診断支援、IoTによる状態把握、遠隔医療、手術ロボットなどは、医療の質向上、医療ミスの削減、医療従事者の負担軽減、病院運営の効率化に貢献します。
医療アクセスの向上: 遠隔医療、オンライン服薬指導、AI健康相談などは、地理的・時間的制約を超えて医療へのアクセスを向上させ、医療格差の是正に貢献します。
医療データの利活用促進: ブロックチェーン技術による医療データの安全性・信頼性向上は、医療データの利活用を促進し、研究開発、新薬開発、個別化医療などを加速させます。
新たな医療サービスの創出: 5G、AR/VR、AIなどの技術融合は、遠隔手術、AI創薬、個別化医療など、従来にはない新たな医療サービスの創出を促進します。
先に挙げた企業以外にも、スマート病院の核となる産業は多岐にわたる。特に重要な産業分野とはどういうところか?
建設・不動産業界
病院建築・設計: スマート病院の実現には、IoTデバイスやロボットの導入を前提とした病院建築・設計が不可欠です。センサーやカメラの設置場所、ロボットの移動経路などを考慮した設計が必要です。
病院設備・インフラ: 病院内のネットワーク環境、電力供給、空調設備などを最適化し、大量のデータを処理するAIやIoTデバイスを安定稼働させる必要があります。
病院施設管理: AIやIoTを活用した設備の故障予測、エネルギー管理、清掃ロボットの導入などにより、病院施設管理の効率化・省力化を図ります。
通信・ITインフラ業界
高速・大容量通信ネットワーク: 5GやWi-Fi 6などの高速・大容量通信ネットワークは、大量の医療データの収集・共有、遠隔医療、AI処理などを支える基盤となります。
クラウドコンピューティング: クラウド上に医療データを保管・処理することで、医療機関間でのデータ共有、AI分析、遠隔アクセスなどを容易にします。
サイバーセキュリティ: 医療データは機密性が高いため、高度なサイバーセキュリティ対策が求められます。
医療機器・デバイス業界
ウェアラブルデバイス: バイタルデータ収集、健康管理、リハビリテーション支援など、多様な機能を持つウェアラブルデバイスの開発が重要です。
医療用ロボット: 手術支援ロボット、リハビリテーションロボット、薬剤調剤ロボット、搬送ロボットなど、医療現場の様々な業務を支援するロボットの開発が求められます。
診断・治療機器: AI診断支援機能を搭載した画像診断装置、治療効果を高めるIoT対応の医療機器などの開発が重要です。
ソフトウェア・サービス業界
電子カルテシステム: 医療情報のデジタル化・共有を促進し、病院運営の効率化、医療の質向上に貢献します。
医療情報連携プラットフォーム: 医療機関間での情報共有を促進し、スムーズな診療連携、重複検査の削減、医療の質向上に貢献します。
AI医療ソフトウェア: 画像診断支援、創薬支援、個別化医療支援など、AI技術を活用した様々な医療ソフトウェアの開発が重要です。
その他
医薬品・医療材料業界: 再生医療、細胞治療、遺伝子治療など、スマート病院で活用される新たな医薬品・医療材料の開発が重要です。
人材育成・教育業界: スマート病院で働く医療従事者や技術者を育成するための教育プログラムの開発が求められます。
コンサルティング業界: スマート病院化に向けた戦略策定、システム導入支援、業務プロセス改善などを支援します。
資本参入:やっぱり要はこれだな。
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