忘備録 最近のファッション系の新素材ってこんな感じ??!!
1. スマートテキスタイル(Smart Textiles)
主な研究・製造企業・研究機関
Google(米国): Googleの「Project Jacquard」は、織物にセンサー技術を埋め込んだ素材を開発中。リーバイスと共同でジャケットを発表。
デンソー(日本): 車載用スマート繊維を研究。座席やステアリングにセンサーを内蔵。
早稲田大学(日本): 生体センサーを埋め込んだテキスタイルの研究。
ヘキサニット(HexaNet、日本): 柔軟性のある導電素材を製造。
開発状況
産業用(医療・自動車)が多く、商業ウェアへの応用が進む見込み。
国内ではヘルスケア分野に注力する企業が増加中。
2. バイオファブリック(Bio-fabricated Materials)
主な研究・製造企業・研究機関
MycoWorks(米国): キノコを用いたレザー「Reishi」の製造。
Bolt Threads(米国): クモの糸由来の繊維「MicroSilk」や菌糸体レザーを開発。
Spiber(日本): クモ糸繊維を開発し、ザ・ノース・フェイスとコラボ。山形県鶴岡市に生産拠点を持つ。
京セラ(日本): バイオ素材の導入を進める。
開発状況
生物由来の素材は、エコフレンドリーな方向性としてファッション業界で注目。
商業化の課題は、コストと量産技術の確立。
3. 3Dプリント素材
主な研究・製造企業・研究機関
Carbon(米国): 3Dプリント技術でスニーカーのミッドソールを製造。
アディダス(ドイツ): Carbon社との提携により「4Dシューズ」を展開。
Stratasys(イスラエル): 3Dプリンタの主要メーカーで、テキスタイル向け素材も開発。
大阪大学(日本): 素材工学部が立体繊維構造の研究を進めている。
開発状況
国内ではアパレル向けよりも工業向けが主流。
高機能素材としての活用が期待される。
4. エアロゲル繊維
主な研究・製造企業・研究機関
Aspen Aerogels(米国): 断熱材としてのエアロゲル繊維を開発。
NASA(米国): 宇宙服用素材としてエアロゲルを研究。
帝人(日本): エアロゲルの布帛化技術を開発中。
信州大学(日本): ナノマテリアル研究所がエアロゲルの応用研究を推進。
開発状況
高断熱性素材としてアウトドアや工業分野で注目されるが、一般市場への浸透は遅れがち。
5. リキッドテキスタイル(Liquid Textiles)
主な研究・製造企業・研究機関
Fabrican Ltd(英国): スプレー素材「Fabrican」を開発し、即席の服を作れる技術を発表。
理化学研究所(日本): 液体素材の硬化制御に関する基礎研究を行っている。
開発状況
医療用途(包帯や傷口保護材)での実用化が先行。ファッション用途はデモ段階。
6. 再生セルロース素材(Regenerated Cellulose Materials)
主な研究・製造企業・研究機関
レンチング社(オーストリア): 「リヨセル」「モダール」の世界的メーカー。
東レ(日本): 再生セルロース素材を活用した環境対応型のテキスタイルを開発。
帝人(日本): バイオマス素材を用いた合成繊維を製造。
開発状況
欧州ではファストファッション向けに普及。日本国内では持続可能な高級ブランドに採用されるケースが増加。
7. 特殊発泡素材(Foam-based Materials)
主な研究・製造企業・研究機関
ナイキ(米国): 「Nike React Foam」など独自技術でスニーカー素材を進化。
住友化学(日本): 軽量で弾力性のある発泡素材を製造。
宇部興産(日本): 工業用高機能フォームを提供。
開発状況
国内ではスポーツやアウトドア市場向けに特化。
8. カーボンファイバー繊維
主な研究・製造企業・研究機関
三菱ケミカル(日本): カーボンファイバー市場で世界シェアをリード。
東レ(日本): 航空機や自動車向けの布状カーボンファイバーを製造。
サイクロン繊維技術研究所(米国): 軽量で強靭なカーボン繊維を開発。
開発状況
航空宇宙分野からファッションへの応用が進行中。
その他の注目企業
Spinnova(フィンランド): 木材パルプを使用した完全循環型素材。
山陽染工(日本): 環境対応型の新素材に注力。
クラレ(日本): 新しいポリマー素材のテキスタイルへの応用。
日本
大学と企業の連携
東京大学や大阪大学が新素材の基礎研究をリード。大手企業(東レ、帝人など)が実用化を進める。中小企業の独自技術
織物産地(京都、西陣織など)では、伝統技術を現代素材に融合させた革新的な製品を開発。行政の支援
経済産業省やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、研究開発への補助金を提供。
米国
シリコンバレー発のスタートアップ
Carbon、MycoWorksなど、イノベーション企業が資金調達を受け、大規模生産化に取り組む。大学との連携
スタンフォード大学、MITなどが、AIやバイオテクノロジーを駆使した素材設計で先行。
欧州
持続可能なファッション市場
スカンジナビア諸国を中心に、再生可能素材の普及に注力。フィンランドのSpinnovaやスウェーデンのH&Mグループがパートナーシップを強化。政策による推進
EUの「グリーン・ディール」に基づき、低環境負荷素材の開発が優先事項。
アジア
中国の台頭
中国は、合成繊維やバイオマス素材の量産化技術を急速に進めている。テンセントやBYDなど、非伝統的プレイヤーも参入。韓国
韓国企業(サムスン、LGなど)は、スマートテキスタイルや再生素材の応用研究に積極的。
5. 新素材の実用化に向けたアプローチ
新素材の開発が進む一方で、製品化や市場への浸透には多くのプロセスがあります。以下では、実用化に向けた具体的な取り組みとその事例を挙げます。
1. 実用化を加速するパートナーシップ
新素材の開発には、複数分野の専門知識が必要です。産学連携や異業種間の協力が鍵となっています。
Spiberとゴールドウィン(日本)
山形県鶴岡市に本社を置くSpiberが、クモ糸繊維を使った衣服をゴールドウィンと共同開発し、「THE NORTH FACE MOON PARKA」を商品化。アディダスとCarbon(ドイツ・米国)
アディダスが、Carbonの3Dプリント技術を使ってランニングシューズ「Futurecraft 4D」を量産化。
2. サステナブルデザインの重要性
新素材は環境負荷低減を目的に開発されることが多いですが、単に「エコ」だけでなく、デザイン性や実用性も重要です。
例: Stella McCartney(英国)
Bolt Threadsのバイオ素材を使用し、高級ファッションブランドの製品に採用。デザインとサステナビリティの両立を実現。
3. コスト削減と量産技術の改良
新素材の最大の課題は製造コストの高さです。これを解決するために以下の方法が取られています。
自動化技術の導入
生産工程にAIやロボットを活用し、生産効率を向上。素材のハイブリッド化
高コスト素材を他の一般素材と組み合わせ、価格競争力を向上。
4. 規格化と標準化
新素材の市場展開には、品質基準の整備と認証が不可欠です。
ISO規格への対応
国際標準化機構(ISO)で新素材に関する規格が制定されつつあり、特にエコ素材分野で重要。国内基準の整備
日本ではJIS(日本工業規格)が中心。産業用途の素材では安全性基準が重要視されています。
6. 新素材開発の成功事例とその背景
1. スマートテキスタイルの普及
事例: Google × Levi’s「ジャカードジャケット」
ジャケットの袖部分にタッチセンサーを埋め込み、スマートフォンを操作できる機能を搭載。価格を抑えたモデルの登場により普及が進む。
2. バイオファブリックの拡大
事例: MycoWorks「Reishi」
菌糸体から生成したレザーをルイ・ヴィトンやHermèsなどの高級ブランドが採用。エコでありながら、従来のレザーと同等の質感を実現。
3. 再生セルロース素材の活用
事例: Lenzingの「TENCEL™」
再生可能な木材を原料とし、持続可能なファッション市場で急成長。環境に配慮した生産工程が評価され、H&MやZARAなどの大手ブランドが採用。
7. 今後の新素材開発の方向性
1. 多機能性素材の進化
素材が単一の機能を持つのではなく、複数の特徴を持つ「多機能性」が求められています。
例: 自己修復繊維
スクラッチやダメージを受けた場合でも、自ら修復する素材の研究が進行中。例: 形状記憶素材
温度や圧力に反応して元の形状に戻る素材は、医療やスポーツギアで需要が高まる。
2. ウェアラブルデバイスとの融合
衣服が「デバイス」の一部となる時代が近づいています。スマートテキスタイルに加えて、以下のような応用が期待されています。
例: 健康モニタリング素材
生体センサーを組み込んだ素材が、心拍数や体温をリアルタイムで測定可能。例: 電力供給素材
繊維自体が発電機能を持つ素材が開発され、ウェアラブルデバイスに電力を供給。
3. 完全循環型素材
廃棄物をゼロにすることを目指した「完全循環型」素材の研究が進んでいます。
例: 再生ポリエステル
使用済み衣類や廃棄プラスチックを再生して、新たな衣料品を作る技術。例: 生分解性素材
土中で完全分解され、環境に戻る繊維素材。
8. 新素材開発の機会と戦略
1. 産業別アプローチ
ファッション業界: サステナブルファッションのニーズを捉え、高価格帯のブランドをターゲットに。
医療分野: 再生医療や健康モニタリング用素材の開発で市場拡大。
建築・インテリア: 高耐久性や断熱性能を持つ新素材の需要増。
2. 海外展開の重要性
国内市場が飽和状態の中、海外での販路拡大が重要です。
現地パートナーとの連携: 地域ごとの規制や需要に対応。
展示会への参加: 欧米やアジア市場でのプレゼンス強化。
3. デジタル技術との統合
データ駆動型開発: AIやビッグデータを活用して、市場の需要を予測し、素材設計を効率化。
オンラインマーケティング: 消費者への直接的なアプローチで新素材の魅力を伝える。