忘備録>水素脆化検査機および昇温脱離検査機(TDS: Thermal Desorption Spectroscopy)の、半導体製造工程のいくつかの段階で重要な役割

水素脆化検査機および昇温脱離検査機(TDS: Thermal Desorption Spectroscopy)は、半導体製造工程のいくつかの段階で重要な役割を果たすことができます。以下に、それぞれの検査機が関係する主要な工程を説明します。

1. 前工程 (ウェーハプロセス)

イオン注入

  • 関係する項目:

    • 注入量、分布、深さ: イオン注入では、シリコンウェーハにイオンを高エネルギーで打ち込むため、ウェーハ表面や内部にストレスがかかり、材料の脆化や損傷が発生することがあります。水素脆化検査機は、イオン注入によってウェーハ内に蓄積された水素の影響を調べ、材料が脆化していないかを確認するのに役立ちます。

    • 検査装置: TDSを使って、ウェーハ内の水素量やその分布を測定し、水素脆化のリスクを評価することができます。特に、深部に埋め込まれたイオン注入後の水素が材料の結晶構造に与える影響を調べることが可能です。

成膜(CVD、PVDなど)

  • 関係する項目:

    • 組成、欠陥、応力: 成膜中には薄膜中に水素が捕獲されることがあり、これは薄膜の脆化を引き起こす可能性があります。水素脆化検査機を使用して、成膜された層内の水素含有量を検出し、成膜材料の安定性を評価できます。

    • 検査装置: TDSを使用して、成膜工程中に捕獲された水素を脱離させ、その量を測定することで、材料の安定性や脆化のリスクを評価できます。

洗浄

  • 関係する項目:

    • 残留物の有無: 洗浄工程後に、表面に残留した水素や水素化合物がウェーハにダメージを与える可能性があります。水素脆化検査機を用いることで、洗浄後に表面や内部に残る水素を測定し、洗浄の影響を評価できます。

2. 後工程 (組立・検査)

モールド

  • 関係する項目:

    • 封止状態、気泡、クラック: モールド工程では、樹脂封止材中に含まれる水素や水素化物が半導体デバイスに悪影響を与えることがあります。モールド材料や封止プロセスがチップの水素脆化を引き起こさないかどうかをTDSを用いて評価することができます。

    • 検査装置: 昇温脱離検査機 (TDS) を使用して、モールド工程で封止材や樹脂中の水素を測定し、デバイスの劣化リスクを評価します。

最終検査

  • 関係する項目:

    • 信頼性試験(高温高湿試験など): デバイスの信頼性試験では、水素がデバイスの動作に与える影響を検査することがあります。特に、水素が蓄積された場合やデバイス内部で脆化が進行しているかどうかを確認するためにTDSを使用します。

    • 検査装置: TDSを用いることで、デバイス内に残存する水素の濃度を測定し、高温高湿環境での劣化や性能の低下を予測できます。

水素脆化検査機と昇温脱離検査機が関係する主な工程

  • イオン注入工程での水素の蓄積確認

  • 成膜工程での膜中の水素の影響評価

  • 洗浄後の残留物(特に水素)の確認

  • モールド工程での樹脂中の水素脆化リスク評価

  • 最終信頼性検査での水素の残存量の確認

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