忘備録 CG>注目すべき日本の生成AI企業とその取り組み
日本のAI業界は、近年、生成AI(Generative AI)の分野で著しい進展を遂げています。特に、大規模言語モデル(LLM)の開発において、国内の大手企業やベンチャー企業が競い合い、独自の技術を展開しています。以下に、注目すべき日本の生成AI企業とその取り組みを紹介し、ChatGPTやDeepSeekとの比較を行います。
1. NTT(日本電信電話株式会社)
強み:
日本語特化: NTTは、軽量な日本語特化型LLM「tsuzumi」を開発しました。このモデルは、6~70億のパラメータを持ち、GPT-3.5に対して81.3%の勝率を誇る高い性能を示しています。音声認識や画像認識にも対応しており、音声から人間の感情を読み取り、それに応じた反応を示すことが可能です。
ChatGPTやDeepSeekとの比較:
ChatGPT: OpenAIが開発したChatGPTは、英語を中心とした多言語対応が特徴で、汎用性が高いモデルです。一方、NTTの「tsuzumi」は日本語に特化しており、日本語の文脈理解や感情認識において優位性を持つと考えられます。
DeepSeek: 中国のAIスタートアップが開発したDeepSeekは、中国語や日本語などアジア言語に強みを持つとされています。NTTの「tsuzumi」は日本語特化型であり、特に日本市場における適応性が高いと考えられます。
2. NEC(日本電気株式会社)
強み:
高速性と精度: NECは、高い日本語能力と高速性を備えたLLM「cotomi」を開発しました。このモデルは、業務システムとの連携にも適した素早いレスポンスが可能で、日本語の複雑な言語処理に高い精度で応答できます。GPT-4と肩を並べる精度が確認されており、世界的にもトップレベルの性能を有しています。
ChatGPTやDeepSeekとの比較:
ChatGPT: ChatGPTは多言語対応であり、特に英語での性能が高いとされています。NECの「cotomi」は日本語に特化しており、日本語の業務システムとの連携や高速な応答が求められる場面で優位性を発揮します。
DeepSeek: DeepSeekは低コストでの開発とオープンソース戦略を特徴としています。NECの「cotomi」は高速性と精度に重点を置いており、特に日本のビジネス環境での実用性を追求しています。
3. オルツ(Alt Inc.)
強み:
商用プライベートLLM: オルツは、日本語商用プライベートLLM「LHTM-OPT」を提供しています。このモデルは、オープンデータと独自のデータを組み合わせて学習させており、パラメータを低く抑えて軽量化し、実用に最適化されています。2024年3月には、AWS Marketplace上に公開され、APIサービスとしても提供が開始されています。
ChatGPTやDeepSeekとの比較:
ChatGPT: ChatGPTは大規模なパラメータを持つ汎用モデルであり、幅広い用途に対応しています。オルツの「LHTM-OPT」は軽量化と実用性に重点を置いており、特定の業務用途において効率的な運用が可能です。
DeepSeek: DeepSeekは低コスト運用とオープンソース戦略を採用しています。オルツのモデルは商用プライベートLLMとして、企業のニーズに合わせたカスタマイズ性を提供しています。
4. ELYZA株式会社
強み:
日本語能力の強化: ELYZAは、Metaが開発したLLM「Llama 3」に日本語能力を追加したモデル「ELYZA LLM for JP」を開発しています。最新モデルは700億パラメータを持ち、GPT-4を上回る日本語性能を達成しています。無料のデモサイトで誰でも試すことができ、商用利用可能な形式で一般公開されています。
ChatGPTやDeepSeekとの比較:
ChatGPT: ChatGPTは多言語対応であり、特に英語での性能が高いとされています。ELYZAのモデルは日本語能力を強化しており、日本語での高度な言語処理が求められる場面で優位性を持ちます。
DeepSeek: DeepSeekは中国語や日本語などアジア言語に強みを持つとされています。ELYZAのモデルは日本語に特化しており、日本市場での適応性が高いと考えられます。
5. 楽天グループ株式会社
強み:
商用利用の実績: 楽天は、日本語に最適化した高性能LLM「Rakuten AI 7B」を公開しました。このモデルは、文章の要約や対話システムの構築など、様々な文書生成タスクにおいて商用目的で使用することができます。
言語モデル評価ツール「LM Evaluation Harness」においてトップの評価を獲得しており、高い実用性と信頼性を備えています。
ChatGPTやDeepSeekとの比較:
ChatGPT: ChatGPTは広範なタスクに対応する汎用モデルですが、楽天の「Rakuten AI 7B」は日本語向けに最適化されており、特にECサイトやカスタマーサポートでの利用に適しています。
DeepSeek: DeepSeekはオープンソースとして開発されているため、多くの研究機関や企業がカスタマイズ可能な点が強みですが、楽天のモデルは商用利用を前提としているため、企業向けのサポートや運用のしやすさが優れています。
総合比較: ChatGPT、DeepSeek、日本のLLM
以下に、それぞれのAIの特徴を比較します。
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今後
現在、日本のAI企業は生成AIの分野で急速に成長しており、日本語特化型のLLMが次々と登場しています。特に、**NTTの「tsuzumi」やNECの「cotomi」**のように、日本語処理に優れたモデルが強みを発揮しています。
また、ELYZAや楽天などの企業はGPT-4に匹敵する性能を持つ日本語モデルの開発に成功しており、今後の進化次第ではChatGPTに匹敵するモデルが登場する可能性があります。
一方で、DeepSeekのようなオープンソース戦略を採用する企業も増えており、日本企業がオープンなAI開発にどのように関わっていくかが今後の鍵となるでしょう。
今後、以下のような方向での発展が期待されます。
日本語特化型AIのさらなる強化
日本語の表現力やニュアンスを深く理解するAIの開発が進む。
業務システムと連携したカスタマイズAIが増える。
生成AIの商用活用の拡大
企業向けのカスタマイズ可能なプライベートLLMが普及する。
楽天やオルツのように、商業分野に特化したAIが増える。
オープンソースAIとの競争
DeepSeekのようなオープンソースAIが普及し、カスタマイズ性が求められる。
日本の企業がオープンソース戦略を採用するか、独自の商用モデルを強化するかが問われる。