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航空管制解説

世の中の航空機は、一般的に自由に飛ぶことはできません。誰がその飛行機をコントロールしているのでしょうか。答えは、航空管制官です。日本では、航空管制官という職業は、国が募集していて、国家公務員扱いになります。一般的な仕事としては、各空港に配属され、空港周辺の航空機の管制を行ったり、着陸する航空機の誘導を行ったりします。

航空管制官という職業は、パイロットと比べてマイナーであるように感じられます。普通に生活をしていて、出会うことのない職業だからです。ですが、実際、彼らは我々の空の安全を守り、効率化を図っているのです。

本日は、航空管制という仕事の一部を解説してきたいと思います。


まずどのような流れで航空管制が行われているかを概説していきます。

航空機が、出発するところから到着するところまでコンタクトする航空管制の部署を羅列してきます。

デリバリー→グラウンド→タワー→ディパーチャー→コントロール→アプローチ→タワー→グラウンド

といった形になります。

それぞれ解説していきます。

デリバリー


これは出発承認を行うところです。パイロットが管制官に、目的地、予定ルート、予定高度を伝え、管制官側が承認しなければ、出発することはできません。

交信例

ANA73 “Tokyo delivery spot44.”

Delivery “ANA73, go ahead”

ANA73 “request clearance to Shinchitose Airport ”
Delivery “~~~~~~~”

(以下略)


という風な感じになります。

グラウンド 

こちらは、航空機が空港を地上走行する際に、通るべきルートを指示します。航空機が自由に空港内を走行されたら衝突しかねません。なので、空港内を走行するときも管制官に従う必要があります。プッシュバックから滑走路までの間、ここのお世話になります。

タワー

タワーの役目は、滑走路を使う航空機に指示を出すことです。離陸や着陸は両方とも、滑走路を使用します。タワーは、滑走路を使用する航空機に対し、離陸許可や、滑走路前待機、着陸許可、着陸復航などを指示します。

あの有名な、cleared for takeoffはここから発出されます。


ちなみにほかの用語も覚えておきましょう。


離陸許可 cleared for takeoff
滑走路内待機 line up and wait
滑走路前待機 hold short of runway
着陸許可 cleared to land
着陸復航 go around

ディパーチャー/アプローチ


ディパーチャーとアプローチはそれぞれ、出発機と到着機が空港周辺の空域に近づいたときに誘導を受けるところです。それぞれの空港には、SIDやSTARと呼ばれるような、出発経路や、到着経路が設定されていますが、空域が混雑していたり、逆にすいていたりする場合、ショートカットして飛行する場合があります。これを許可するのが、ここの部署になります。


コントロール


コントロールと呼ばれるこの部署は、一般的に航空路管制を行うところで、正式名称は航空交通管制部と呼ばれます。日本には、札幌、東京、福岡、沖縄と4つあります。ディパーチャーからやってきた航空機に対し、他の航空機を衝突しないように管制する場所ですが、管制塔がなく外部からは見えないため非常にマイナーな部署になっています。個人的には、ここも非常に興味深いところではあるのですが、知名度は高くないようですね。
目的地が近くなると、アプローチに引き継ぎます。その後は、アプローチ管制の管轄になります。


航空路


さて、本来であれば、最初に説明するべきだった航空路に関して説明してきたいと思います。

鉄道や、車が道や線路の上を走っているように、航空機にも道というものが存在します。


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これは、日本の航空路の一部を表した地図になります。

上記の航空路はRNAV航法と呼ばれ、GPSを基本とした航法方式になります。以前より、目的地と目的地を直線で結ぶことができるようになりました。この航空路管制を行っているのが、航空交通管制部と呼ばれるところなのです。車で例えるなら、高速道路といったところでしょうか。空港固有の経路である、SIDやSTARを一般道と高速道路につながるランプと例えるとわかりやすいと思います。

またこの航空路の一つ一つには名前がついており、またそれぞれ一方通行になっています。また東向きと西向きでは巡航高度を偶数と奇数で分けることで、正面衝突を起こさないようになっています。それでも、進路が重なることや、特に羽田で顕著にみられる到着ラッシュ時などは、アプローチ管制の空域を超える到着機の列が出来上がります。これらを誘導するのは、航空交通管制部の役割ということになるわけです。



航空管制官という職


僕は、この職を経験したわけではありません。なので、詳しい現場の話は分かませんが、決して楽な仕事ではないことは誰にでもわかります。航空機は24時間飛びます。勤務地によっては夜勤もあり、シフトのバラバラ。勤務スケジュールはかなり厳しいものがあります。レーダーにとらえる一つ一つの機体には、何百という命が乗っています。いざ、インシデントを起こせば、その命が危険にさらされることになります。管制官にかかる負担やストレスはものすごいものがあると考えられます。ですが、世界ハブ空港との競争や航空産業のさらなる発展により、扱う航空機の数は年々増加しています。その分管制官に求められる能力も高まってきています。ですが、それを扱う管制官の労働環境を変えなくてもいいのでしょうか。今は変わっているのかもしれません。日本の悪いところの一つが、ミスを犯したらそのミスをチームや全体の責任と考えず、一人個人の責任にしようとします。今後、国土交通省に勤務するような人や、管制官になりたい人は、現場のこのような状況をどのようにして改善していくかという課題を乗り越えてもらいたいと思います。

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