ETOPSについて(航空機のエンジンはなぜ二つになったのか)
今回も引き続き航空機ネタでございます。ただ、前回ほどマニアックな話題にはなっておりません。ETOPSという言葉を聞くと聞いたことないし…って思うかもしれないでしょう。専門用語でそのように言うだけで実際にどのようなものか説明していくのでご安心を。
ところで、みなさんは飛行機に乗る機会は多いでしょうか。それとも飛行機を目にする機会は多いでしょうか。皆さんの頭の中で思いつく航空機のエンジンは何個あるでしょうか。4個の方、2個の方、その二つぐらいでしょうか。三つだと思った方はマニアックな方です。4個だと思った方のほとんどはB-747だと思います。通称ジャンボジェットです。日本ではかつて、全日空や日本航空が国内線でも国際線でもたくさん使用されており、前側は二階建てという当時としては珍しい機体でした。さて、最近の飛行機はどうでしょうか。A-380を除けば、ほとんどが双発機、つまり、エンジンが2機しかないことに気づきましたか。この理由は何でしょうか。それが今回のお話です。
ETOPSの歴史
ETOPS制定より以前、1960年代当たりのころ、航空機のエンジンは信頼性が現在よりも低いものでした。双発機では、エンジンが2機しかないため、一つが停止するともう片方しかありません。これでは危険です。もう片方が止まれば、航空機はただのグライダー状態になってしまいます。これでは危険なので、近くに空港がある空路を飛ぶ必要があります。ここで、双発機は空港から60分以上離れたところは飛んではいけないというルールがありました。これがETOPSの原型です。ETOPSの正式名称は、Extended-range Twin-engine Operational Performance Standardsという名前です。つまり、この60分という規定を延長していくためのルールをというわけです。時代が進むにつれ、エンジンの信頼性は向上し、ETOPS-120が制定されるようになりました。これは、60分という規定から120分という規定に代わったもので、最初に認定されたのはB-767になります。
ETOPSの影響を受けた機体
ETOPSがもうすぐ制定されるかされないかをさまよっていたころに、エアバス社はちょうど新しい機体の開発を進めていました。中距離から長距離用で、中型から大型ぐらいのサイズを考えていました。
先ほども申し上げた通り、ETOPSが制定される前は、双発機では60分以内に空港のあるところしか飛ぶことができません。
よって太平洋を横断することができないのです。
これは大きな問題です。いくら航続距離が長くても太平洋が横断できないのは致命的です。なら、4機のエンジンを搭載すればいいのではないかと思うかもしれませんが、エンジンが増えるとその分機体の重量が増加し、配線も多くなります。双発機のほうが燃費もよく整備も楽なので、航空会社は双発機のほうが運用コストは安いので欲しがるのです。一方で、太平洋を横断することができない。その需要を考えて、エアバスが出した答えは、機体全く同じで、
エンジン2機バージョンと4機バージョン両方出しちゃえ
ということです。これが、A330とA340です。エンジンの個数以外違いはほぼありません。コックピットも共通化されており、片方のライセンスがあれば、もう片方も簡単な移行訓練で操縦ができます
しかし、ETOPSが制定されてからは、4発機の利点はなくなりました。燃費の悪さ、整備費用、つまり、運用コストが双発機よりかかるからです。この影響により、A340はだんだん売れ行きが悪くなっていきました。
これから
現在では、ETOPS-370が発行されています。つまり、空港から370分離れたところでも航路にしてよいということになります。つまり、双発機でもはや地球上どこでも行けるようになりました。以前のように、エンジンの個数を稼ぐために、わざとエンジンを3個したり(みんなだいすきDC-10など)、4個にしたりする必要はなくなったのです。現在でも、B747-8や、A380はエンジンが4つありますが、これは大量輸送のため、機体のサイズが大きくなってしまい双発機では推進力が足りなくなってしまうからです。ですが、もう高度経済成長期ではありません。大量輸送の時代は終わりつつあります。今は、どれだけ便利にできるかという時代です。中ぐらいのサイズの機体を多数用意し、本数を確保することで、いつでも乗ることができる。そんな時代です。4発機は今後なくなる傾向にあるでしょう。4発機は私たちに、飛行機という交通手段をより一般的なもの、日常的なものにしてくれました。飛行機といえばジャンボというイメージが今でもあります。
もし空港に行くことがあれば写真に収めておくというのもよいのかもしません。