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第45回「インド少数民族アート展が始まるよ!」

 NPO法人伊豆in賀茂6では、空き家バンク事業のほかに、移住・交流促進事業、ワーケーション事業なども、下田市と協働して行っている。

 16年前、下田に来てびっくりしたのは、お祭りの多いことだった。

 3月お吉祭り、4月桜まつり、5月黒船祭、6月あじさい&きんめ祭り、7月マリンフェスタ、国際かじき釣り大会、8月太鼓祭り、9月ビッグシャワー、12月アロエの花祭り、1月水仙まつり、2月には、両隣の河津町と南伊豆町でで河津桜まつりがあるので、年がら年中祭りをやっているような感じだ。

 しかも多くの祭りには下田市や下田市観光協会が関わり、料理飲食店組合や旅館組合なども、そのたびに人を拠出し、過疎化が進む昨今は、負担が大きくなって困るという声も聞かれる。

 観光地らしい悩みなのだが、それでも我がNPOでは、今年度、各種のイベントを打つ予定だ。いずれも財団法人地域活性化センターの助成事業として採択されたからである。

 そして僕が考えるイベントは、これまでのような、規模の大きな観光的なものではなくて、文化的価値の高いもの、地域の課題克服を目指したもの、新しく新住民となった人たちに、ネットワークを作ってもらえるようなものを企画した。

 その第一弾が「インド先住民族アート展」である。昨年は助成はもらわなかったものの、「インド展」として、インドの手作り出版社タラブックスを紹介する展示会を開いている。

 地方に少ないのは、文化的発信である。これまで開催しているイベントも、歴史や花、海といった、この土地の持つ価値に根ざしたものばかりだ。都会人にとっては、そうした地方らしい癒やしが心地良い。たしかにそうだが、それでは文化が育たない。

 僕はいま、下田市総合計画の審議員に選ばれて、下田市の今後5年間の政策策定に関わっている。そんな中で重要視されているのが、子どもたちの市外への流出どう食い止めるかという課題だ。

 地元を愛する子どもたちを育てたい。個人的には今でも十分、下田人たちは下田のことをこよなく愛していると思うが、働く場がないので都会に出るといった、日本が抱える幻想を真に受けている。

 たしかにこの町には職種は少なく、大企業もほとんどなく、賃金も安い。しかし実は過疎地は、職種によっては人手不足が深刻だ。つい今しがたも、愛知県から移住希望の4人家族が相談に来たが、ご主人は土木関係、奥様は介護関係の仕事についており、だったら、下田でも十分仕事はありますよと答えると、俄然移住への意欲が湧いたようである。

 2週間前くらい前のオンライン移住相談会でも漁業関係の仕事を希望される方がいて、漁協に連絡すると、すぐにでも面接します、他にもいたら紹介してよと頼まれたほどである。

 話がそれたが、これまでの祭りは、そのほとんどが観光客向けのものだった。地元の人が愛してやまない、黒船祭や太鼓祭りのような伝統的な行事もあるが、全体として文化的には、高い発信をしてきていない。

 これは、下田に限らずどの地方も抱える問題である。資本や経済、人材、文化まで、都市部に吸い取られしまい、文化の豊かさを味わいたかったら、都会へ集まるような仕組みになってしまっているのだ。

 それが子どもたちの地域離れにつながっている。

 この町は自然がきれいだ、空気が澄んでいる、食い物がうまいなど、表層的な話ばかりで、大人は子どもたちを地域に食い止めようとしているが、実のところ、こんなところに暮らしても未来はないよと、多くの大人が子どもたちに言ってきてしまった過去があり、それが若年世代の人口流出を促進させてきたのであった。

 好きな町に暮らせない。だったら、よその町で暮らす未来を探すしかない。それが子どもたちなりの選択だったのだ。

 そういう僕も、故郷を出て、もう三十五年になる。世界に出ていき、この下田にたどり着いた人生である。だから出ていく人のことをとやかく言う権利はないし、若い子たちに、この地にいてほしいとも思わない。

 僕たちは、自分が気に入ったところに住む権利を得たのだ。そういう時代になったのである。

 地元の人でもそうじゃなくても、町のことを好きな人が、その町に暮せばいいではないか。そして町の人が楽しく暮らせるような仕掛けが必要だろう。

 それが今回の「インド先住民族アート展」なのである。コロナもあって、都会ではこうしたイベントは開きにくくなっている。それにもまして、レアでキッチュなイベントである。しかし魅力は深く、世界につながっている。

 こうした文化的イベントが、ちょくちょく開催できるような町は、きっと楽しい。僕はそう考えて、NPO法人で主催した。

 来週10月18日(日)の「インドカレーを食べさせられ放題&蔵前仁一トークショー」も満席である。

 豊かな地方の空間である海の見えるBBQ場を利用した、愉快で爽快なイベントである。

 地方の持つ魅力は、これまでの価値だけにこだわらず、自分で創造できるはずだと、僕は確信している。


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