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星鎧騎装エルダーヘクス6
これはビーストバインドトリニティのリプレイ小説です。GM夏風が、あらかじめ提出されたキャラクターシートを元に作ったシナリオのため、再演は無いのでネタバレを気にせずに読んでいただけます。
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気付けばそこは池袋の駅前だった。
オーバーライドが進んでいるようで、少しまた少しとビルが近未来SF的な外観へと変わっていく。
マザーのサーバーを物理的に破壊する手もあるが、オーバーライドを起こしているのはドミネーターであるクトゥグアの力を引き出しているエルダーヘクスだ。
マザーを破壊してもパイロットの不破の記憶を元に『True』の基底現実への実装は続くだろう。
つまり、半魔たちの取るべき道は、星鎧騎装エルダーヘクスの撃破しかない。
ただし、封印の解かれたクトゥグアの力を宿す機体に、ギアライダーと化した凄腕ゲーマー不破狩蔵と、能力が未知数のテータ姫も搭乗している。
真正面から戦えば非常に苦しいだろう。
加えて、密鍵がいつまでナイアールラトテップを足止めできるかわからない。
勝つための作戦が必要だ。
1.ヘイトのセキュリティプログラムとしての権限でエルダーヘクスに搭載された一部の機能をチートと判断、特定のアーツを使用不可にする。
2.友志が不破とインカードで対戦した時の記憶から、彼の戦術のクセを読み、特定のアーツを使用不可にする。
3.陽雨の邪神としての権能で同じく邪神である灰人の権能の一部を抑制、特定のアーツを使用不可にする。
ヘイト
「チート行為を感知。消去します」
友志
「不破のおっさん……おっさんは大技を決めるとき、長めの溜めを入れる。その隙を突けばいいぜ!」
陽雨
「さーて……こんな状況だから仕方ねえが、アイツの権能は厄介極まりねえからなあ」
クーロ
「うむ、対策は万全にさせてもらうぞ」
上空をエルダーヘクスが飛び回っている。
戦いを挑むなら地上からでは圧倒的に不利。
そう思っていると、死霊課の火蜥蜴刑事が走ってきた。
火蜥蜴刑事
「お前たち! あれと戦うのか!?」
友志
「ん、誰だオッサン!?」
ヘイト
「誰」
陽雨
「おいおい、ンだよ刑事さんよぉ……」
クーロ
「我らは各々友を救うためにあの鉄の巨人と戦うのじゃ、邪魔をするではない!」
友志
「ああ、早く不破のおっさんの所に行くぜ! 『True』とやらも楽しそうだけど、やっぱり『インカード』は顔を合わせてやるのが楽しいからな!」
ヘイト
「ゲームの楽しみ方は人それぞれか」
火蜥蜴刑事は鞄の中から酒瓶らしきものを取り出した。
火蜥蜴刑事
「この前、押収した黄金の蜂蜜酒だ」
刑事は瓶を掲げて呪文を詠唱する。
火蜥蜴刑事
「いあ! いあ! はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい! あい! はすたあ!」
何も無い空間から黄色味がかった黒い触手が現れ酒瓶を受け取って消える。
それと同時に轟音と共に上空から3体の怪物が飛来した。
鳥のような昆虫のような生き物。
邪神ハスターの管理下にあるバイアクヘーという魔物たちだ。
彼らは地上に降り立つと、半魔たちに背中に乗るよう促した。
火蜥蜴刑事
「決戦は宇宙がいいだろう。ここで戦われたら被害が大き過ぎる」
ヘイト・トゥルー
「なんかよくわからないが乗ればいいんだな?」
友志
「宇宙!? 行けるのか!?」
陽雨
「おっまぁ!? 刑事さんアンタその呪文を知ってるって事は……!」
クーロ
「我らの同類であったのか!?」
火蜥蜴刑事
「なに、お前らみたいのとの付き合いのせいさ。さあ、行ってこい、この地球を救ってくれ」
クーロ
「……まったく、手が込んでるのぉ!」
陽雨
「まったくだ! 後で色々と語り合おうぜ!」
友志
「よくわかんねえけどありがとな! 髭のおっさん!」
ヘイト
「ありがとう」
こうして、半魔たちはバイアクヘーに乗って大気圏から飛び出した。
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青い地球が眼下に広がる。
だが、日本の関東地方を中心に、急速に灰色の人工物へと大地が置き換えられていく。
このまま指をくわえて見ていれば、地球は宇宙要塞ヤディスに書き換えられてしまうだろう。
エルダーヘクスはというと、半魔たちの後を追って上昇してきた。
不破
「どうした縁道くん! なぜ邪魔しようとするんだ、これはチャンスだぞ! つまらない日常を俺たちの理想で塗り替えよう!」
不破は自分のエゴに飲まれているようだ。
友志
「どうしたはこっちのセリフだぜ不破のおっさん! オレたちの日常はつまらなくなんてない! オレたちには友情と、インカードと星騎士という絆がある! 諦めなければそれはいつまでだって続く、誰かに伝わる! オレたちはそう誓い合ったじゃないか!」
テータ
「ヘイトさま! 止めないでください! 私は生まれて間もないちっぽけな存在です。自我も来歴も薄い、放っておけば消えてしまうような! でも! この世界が『True』なら! 私はテータ・バルザイとして役割を持って生きていけます!」
テータもまた、エゴに飲まれているようだ。
ヘイト
「いいや、止めるね。そこにテータ姫の自由はないから。それはいつまでも閉じ込められているのと一緒です。檻が広くなっただけ。今だけ俺は、貴方を幻想から救う本当の星騎士として戦います」
エルダーヘクスの動力源と化している灰人の声は聞こえない。
しかし、陽雨には彼も自らのエゴに飲まれていることが見て取れる。
陽雨
「……ったく、穂村のバカ野郎……お前はそれで本当に良いのか? 無貌のクソ野郎の謀にハメられたままでよ、……こんなよ、こんな形で! お前の渇望が満たされて! それで本当に良いのか! お前はよ! アタシの声が聞こえてるのなら……返事の一つぐらいして見やがれ! 生ける炎よぉ!」
3人の声は確かに届いた。
不破
「そうは言うがな、俺に巡ってきた千載一遇のチャンス、何もせず手放す気にはなれねえよ」
テータ
「星騎士さまが戦う以上、私が降りるわけにはまいりません」
エルダーヘクスのバーニアが意思を持って明滅する。
彼らは冷静さを多少取り戻したようだが、オーバーライドを続ける意志までは変えられなかった。
友志
「ああ! おっさんが星騎士を熱く思ってることは知ってるさ。だから! 全力でかかって来いよ! オレも……オレたちも全力で迎え撃ってやる! おっさんも、テータも、ホムラさんも、マザーとやらも! 戦って……そして分かり合う! それが友情だ! レッツダイブ!」
不破
「ああ! レッツダイブ!」
ヘイト
「テータ姫。ありがとうございます、俺のわがままを聞いてくれて。だからこそ、本当の全力でやり合いましょう。我が盾は皆を守るために!!」
テータ
「本当は理由なんて、なんでもいいのかもしれません。私は、戦うことで、私が私であると、この世界に私というものを刻み込みたい! ヘイトさま! いざ!!」
ヘイト
「どっからでもかかってきてください、それが貴方の渇望ならば!! 貴方のための物語(人生)のために!」
半魔たちとエルダーヘクスは戦闘態勢に入る。
テータ
「星騎士さま、私がナビゲートいたします!」
不破
「期待には応えてやるとも!」
友志
「行っくぜえぇぇぇぇぇ!!!!」
友志は叫びながらインカードソードを振り上げる。
光を纏ったそれは体の大きさなどゆうに超え、エルダーへクスに襲い掛かる。
不破
「やるな! 縁道くん! だが、その程度で墜ちるエルダーヘクスではない!」
テータ
「私は敵戦力の解析に集中します」
陽雨
「さあて、巨大ロボと戦えるなんて、なかなかねえ事なんだ♫」
クーロ
「これまで数多の存在と戦ってきたが、このような存在との戦いは無かったのぅ♫」
陽雨
「さぁ、やろうかエルダーヘクス! アタシたちを!」
クーロ
「愉しませて貰おうかのぅ!」
不破
「アドミン、迎撃頼んだ!」
エルダーヘクスから反撃の炎が噴き出す。
陽雨
「ッチィ! 穂村の野郎……なかなかイイ炎じゃねえか!」
クーロ
「じゃが、我らはその程度では止まらんぞ!」
陽雨とクーロは互いの触手を絡み合わせ、巨大な一本の鞭を編みエルダーヘクスに叩きつけた。
エルダーヘクスの全身が不気味に明滅、連装式マイクロミサイルが雨のように降り注ぐ。
ヘイト
「その攻撃、こちらがもらい受ける」
ヘイトは予測演算をし、ミサイルの軌道を電子のデータで書き換え、自分に集中させた上で、避ける。
不破
「削りにもならないとはな! こりゃあ、倒し甲斐があるぜ!」
ヘイト
「まだ、手の内を全部曝け出したわけじゃないだろう!」
不破
「ああ、行くぜ、星剣ザカリオン! フォーマルハウトディバイド!!」
星すら斬れそうな長大な光刃が一閃。
不破
「やったか!?」
ヘイト
「と、思うだろう? フラグは回収されるからフラグなんだよ」
霧散したと思われたヘイトが再び実体化する。
不破
「そうこなくっちゃな! ヘイト・トゥルー!!」
ヘイト
「今は敵ながらあっぱれだ。不破狩蔵!!」
ヘイトは虚空にアクセスし、プログラムを組み上げる。
ヘイト
「ネットの怖さ、教えてやるよ」
陽雨
「さあて勇者さんよぉ♫ 汝の道を示す為に……」
クーロ
「我が祝福を与えてやろう♫ 邪神の祝福じゃがの♫」
邪神の膨大な魔力がプログラムを実体化させ、エルダーヘクスに襲いかかる。
テータ
「見えました! 今です!」
不破
「そこか! 今一度、星剣ザカリオン! フォーマルハウトディバイド!!」
友志
「させねぇぜ!」
これがインカードではなくとも何度となく戦ってきた不破の太刀筋だ。
友志
「大技の前には溜めが大きい――その癖、星騎士でも健在みたいだな!」
友志は叫び、勢いに乗る前の星剣をインカードソードで受け止める。
不破
「これを止めるか縁道くん!! 流石だ! ふ、わかるぞ、俺の癖を読んだようだな。だが、癖を知っているのはこちらも同じだ!!」
友志
「ああ、そう来なくっちゃな! 来いよ不破のおっさん! オレたちの勝負はこれからだ!」
テータ
「星騎士さま! このまま前へ!」
不破
「あれをやるんだな!」
エルダーヘクスが光刃を構え直す。
不破
「唸れ星剣ザカリオン! 羅睺斬星剣!!」
クーロ
「皆、回避に専念せよ!」
友志
「流石だぜ、不破のおっさん!」
ヘイト
「ああ!こっちでも感知してる!」
不破
「これが、今の俺に出せる最高の一撃だ!!」
星々の煌めきを集めた光刃を薙ぎ払う。
ヘイト
「確かに効いたぜ……過去の星騎士!!」
強大な攻撃を一身に受け止め、ボロボロになったヘイトが吠える。
テータ
「エルダーヘクスの剣を受けてまだ健在……。ですが! 私たちも負けられません!!」
不破
「ああ、そろそろケリつけないと、保たないな……。力を貸してくれ星剣ザカリオン! フォーマルハウトディバイド!!!」
陽雨
「まだ動けるのかよ!」
これまでと比べると明らかに出力の落ちた光刃が薙ぎ払われる。
不破
「そっちこそ、まだ、落ちねえのかよ」
「姫、エルダーヘクスの状態は?」
テータ
「……このままでは」
不破
「まあいい、最後まで足掻いてやるさ」
ヘイト
「そろそろ限界だよ……さすが聖騎士@不破。お前本当に好きなんだな、『True』が。決着つけようぜ。どっち側のエゴが強いか、でも勝ち負けはねぇ。本気で戦うって楽しいだろう!?」
不破
「ああ、アンタにわかってもらえて嬉しいよ。最後まで付き合ってくれよな!」
ヘイト
「ああ!」
陽雨
「ったく、イイ関係を紡いでいるところ悪いが……」
クーロ
「隙あり、じゃな!」
友志
「これが!! オレたちの!! 友情の!! 炎だー!!!」
陽雨
「ああ! アタシたちの!」
クーロ
「友情の一撃じゃぁ!」
ヘイト
「俺たちの! 希望だ!!」
陽雨は騎士たちの戦いに花を添えるように、再度触手を束ねて巨大な巨大な剣と化し、大上段からエルダーヘクスに振り下ろす。
陽雨
「これでぇ!」
クーロ
「終わりじゃぁ!」
それを防ごうとする炎の防壁。
しかし、直撃を受けバーニアが狂ったように明滅する。
エルダーヘクスの関節部で小さな爆発が起きた。
それは次々と連鎖して誘爆し、翼のバーニアが大爆発を起こす。
その衝撃で機体から生ける炎が弾き飛ばされ、地上に落ちていく。
エンジンを失ったマシンからは明かりが消え、地球へと墜落していった。
陽雨
「やったか!?」
ヘイト
「おい!」
クーロ
「いやいや、これは中の連中が生きてる方のフラグじゃよ♫」
陽雨
「そうそう、流石に殺しはしたくねえしなー♫」
友志
「オレたち全員の友情の勝利だぜ!!」
ヘイト
「なるほど……。友志、さっきお前吹き飛んでなかった?」
友志
「何言ってるんだヘイト・トゥルー! 友情の炎は不滅なんだぜ!」