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星鎧騎装エルダーヘクス3

これはビーストバインドトリニティのリプレイ小説です。GM夏風が、あらかじめ提出されたキャラクターシートを元に作ったシナリオのため、再演は無いのでネタバレを気にせずに読んでいただけます。

―――――――――――――――――――

陽雨
「さーて、ここがメモに書かれてる場所かい? 少年」

クーロ
「ふむ、一体ここに何があるのか……」

友志「ああ、間違いないんだぜ! よーし、じゃあ早速……!」

なんの変哲もないオフィスビルの前で半魔たちはバッタリと出会った。

陽雨と友志にとっては、調べたばかりの『True』のヒロインが目の前にいる。
ヘイトにしてみれば見るからに怪しいふたりの女と、一緒にいるのが不自然な少年。

互いに魔物の匂いがしている。
特に陽雨たちから漂う外宇宙の邪神の気配は、それらをモチーフにしている『True』のエネミーを思い起こさせる。

ヘイト
「テータ姫、こちらに」

ヘイトは3人に気付き、テータを後ろに隠す。

友志
「……ん? よお、お前たちもこのビルに用があるのか?」

友志は警戒されてることをまったく気にせず話しかけた。

ヘイト
「何故お前らに話さなければいけない」

テータ
「追手ですか……?」

ヘイトの服の裾を掴むテータ。

陽雨
「ん? 何かあったのか少年」

友志
「ん? ああ、そうだな。これはオレが悪かった。オレは縁道 友志! インカーダーだ!」

友志は名乗らなかったのがいけないと思っている。

ヘイト
「……そういうことじゃないんだが」

クーロ
「まあ名乗らないのは不審な者と思われても仕方なかろう、我はクーロじゃ」

陽雨
「だーな、それは言えてるわってことで、アタシは御山羊陽雨って言う探偵さ。……で、そちらの勇敢な騎士さんとお姫様は何者だい?」

ヘイト
「……警戒しすぎか。俺はヘイト・トゥルー。わけあって星騎士らしい」

テータ
「テータ・バルザイです……」

友志
「なんだって、お前も星騎士なんだな! これはインカードの導きだぜ! な! 陽雨サン、クーロさん!」

陽雨
「お、おう……まあ少年が導きって言うのなら間違いは無いな。っと、せっかくだし、ちょいと聞きたいんだがイイかい?」

ヘイト
(星騎士について知っているんだな。カマかけた甲斐があったぜ)

陽雨
「アタシたちは不破っていう星騎士を名乗るサラリーマンと、穂村って名乗ってる邪神を探してるんだが……なんか知らないかい?」

ヘイト
「そんなめちゃくちゃな情報の聞き方ある?」

友志
「不破のおっさんは社畜でもあるんだぜ!」

ヘイト
「悲しくなるわ」

クーロ
「まあ人の世で生きてるのならば、日々の糧を手に入れるために勤労に励むのは仕方のない事であろう」

友志
「オレたちはインカーダーなんだが、同じくインカーダーの不破のおっさんと……もう一人はホムラさんっていうんだな! ホムラさんを探しにここまで来たんだぜ! あんたたちもインカーダーで星騎士なんだろ!?」

友志は期待に満ちた瞳を向けた。

ヘイト
「待って、待って、知らない情報量多い。……不破?」

テータ
「星騎士様が他にも!?」

テータは、ぱっと表情を明るくする。

ヘイト
「それって『True』のトップランカーの名前と一緒だな……」

友志
「ああ! 不破のおっさんはトップランカー? だったんだぜ!」

ヘイト
「やっぱそいつなんだ。あいつ鯖シャットダウンされるまでログインしててさあ……、お前ら、夜の側だよな? 特に女共」

陽雨 : 「あ、わかる? なーんでわかったんだろうなー」

陽雨の指先が触手化する。

クーロ
「うむ、見事な推理じゃのぅ」

クーロの背中から触手がうねうねと見えては隠れる。

テータ
「あら、どこの星系の方かしら……」

ヘイト
「そうですね、おそらくここ出身ではないかと」
「俺は『True』の管理をしていたものだ。チーター対策とか色々やってたんだぜ。今はこの有様だがな」

陽雨
「まあそうだな、少なくとも地球ドミニオンではないって事は確かだが……」

友志
「ああ、オレは銀河連邦からこっちに転校してきたんだ! なんかあっちの方だ!」

友志は空に向けて指を差す。

陽雨
「まあ今はそれは良いだろう、ここで立ち止まってもアレだし一緒に中に入るかい?」

クーロ
「うむ、足を動かさなければ望む物は手に入らぬ」

ヘイト
「いいのか。……正直、協力してくれるとありがたい」

クーロ
「悩むのであれば前に進むべきだ、そうであろう?」

ヘイト
「いやなら……まあ構わない」

友志
「ん? 協力しないなんて誰も言ってないぞ! 一緒に行こうぜ! ヘイト・トゥルー! テータ!」

ヘイトは少し驚いた顔をしてから微笑んだ。

ヘイト
「……ああ」

半魔たちはオフィスビルに入り、『True』の運営会社があった階へと向かう。
エレベーターはすんなり目的地に到着。

このフロアは閑散としていて、電灯が点いておらず、うっすら埃が積もっている。
廊下の埃に残る足跡はテータ姫が脱出した時のものだろう。

テータ
「ここで間違いありません。私はこの奥の部屋から出てきました」

ヘイト
「さすがの記憶力です、姫」

テータに頷いてから、ヘイトは3人に耳打ちする。

ヘイト
「テータ姫は最近、命を得たみたいなんだ。それがここだと。なんで急にこうなったかは……わからない」

陽雨
「なるほどねえ……それであんなに世間知らずと」

クーロ
「ふむ、となれば我らで色々と教えてやろうかの?」

陽雨
「ちょいと偏った知識になるかもだけどな!」

ヘイトはそれとなく邪神たちからテータに距離をとらせた。

友志
「なるほど、知らないことが多いならこれから知っていけばいいんだぜ! ふたりとも、インカードをやろうぜ! 言葉がなくとも分かり合える! それがインカードだ!」

陽雨
「お、確かにそいつは悪くないな」

クーロ
「うむ、ではやってみようかの」

クーロはウキウキしながら魔法で次元を歪め、事務所に置いて来ていたインカードセットを持ってくる。

ヘイト
「そのさっきから連呼してるインカードっての? なに? 怖いんだけど」

友志
「説明しよう!」以下略

ヘイト
「へー。どうしますテータ姫。彼らはやりたいようですが」

テータ
「異星の技術のようですね。私は戦いも技術も素人です、ここは敵地ですが星騎士様の判断にお任せします」

ヘイト
「……じゃあこうしよう。このことが片付いたら、ルール教えてくれよ。願掛けにもなるしさ」

友志
「ああ、もちろんだ! それに不破のおっさんとホムラさん? も一緒に遊べた方が楽しいしな! で、ふたりはどこにいるんだ?」

ヘイト
「テータ姫、貴方が出た時、人はいましたか。確認した通りチクタクと言う音だけ?」

テータ
「誰もいませんでした」

オフィスだったであろう部屋はガランとしており、運営会社の引っ越しの際にすべて運ばれたことがわかる。
しかし、奥の部屋からブーンという機械の駆動音が聞こえてきた。

友志
「お、向こうから音がするぜ!」

友志は耳ざとく聞きつけて、ずかずかと扉に歩み寄る。

友志
「たのもーう!」

バーンと扉を開けた。

陽雨
「おいおい、ひとりで突っ走るなよ少年」

クーロ
「うむ、行くなら全員一緒にじゃぞ? 抜けがけはずるいからの」

ヘイト
「自由すぎるな……何もなくてよかった。いや、何かは、あるだろうが」

奥の部屋に入ると、そこは空調の効いたサーバールーム。
この部屋だけは掃除がされているようで埃が無い。
数多のコンピューターの排熱ファンが音をたて、暖められた空気を冷やすべく空調が唸りをあげている。
無人のオフィスであるにも関わらず、大規模サーバー群が稼働しているのだ。

電脳魔術師であるヘイトなら、このサーバーがどんなプログラムを動かしているか調べられるだろう。

友志
「ここは……! なんなんだぜ?」

陽雨
「ふむふむ、大きなサーバールームだねぇ……」

ヘイト
「ああ、なんか俺の領分な気がしてきた」

陽雨
「ここまで大きいと、うっかり冷房を切ったら大変な事になりそうだねえ♫」

そう言いつつ、陽雨は冷房のコンパネを触手でつんつんしてる。

ヘイト
「やめろ、いい大人だろ」

友志
「ヘイト・トゥルー、何かわかるのか? 流石だな!」

ヘイトが調べると、このサーバー群は懐かしい故郷『True』だった。
『True』が稼働している。

ヘイト
「ここは……『True』だ。なんで? どうして? アルゴリズムからコードの癖まで当時のままだ」

友志
「どういうことなんだぜ? ここが不破のおっさんが言ってた『True』なのか?」

ヘイトはすぐにでもダイブしたかったかもしれない。
だが、魔法的とでも言うべきプロテクトが掛けられている。

これは、閉鎖型ドミニオンだ。

ヘイト
「だめだ。世界を転々とするタイプのストレンジャーなら中に入れるかもしれないが、俺はその類いじゃない」

友志
「ここに入りたいのか?」

陽雨
「だーな、アタシら邪神でもこの防壁を抜くのは……って少年、何か入る手段があるって言うのかい?」

友志
「ああ、オレは転校生だからな! こう、ガーンといってバーンとやれば入れるぞ!」

ヘイト
「……頼んでいいか? 縁道」

友志
「ああ、任せろ! うおおおおおおおおおおーーーーー!!!!」

友志の能力によって、半魔たちは閉鎖型ドミニオン『True』へと侵入したのだった。

――――――――――――――――――

岩砂漠の真ん中に、半魔たちは立っていた。

ヘイトには覚えがある。
ここはステージ4の惑星ウルタールだ。
不毛の荒野が広がり、敵対的な原住種族ラットキン、つまりネズミ人間たちが支配している。

とにかく数の多いラットキンと戦いながら次の惑星に進むためのポータルを探すステージだ。
ポータルは旧支配種族キャットフォークの遺跡に眠っている。

ヘイト
「ここは……ステージ4のウルタールだな。話的には中盤だ、敵をいなしながらポータルを目指せばいいから。そんなに難しくない」

友志
「なるほどな、わかったぜ!」

ヘイト
「本当か~?」

陽雨
「なるほどねえ……とはいえ、だ」

クーロ
「うむ、それはあくまでゲームの時であろう? このように我らが一塊になって入ってくる事は想定しとらんはず。よって、バグという形で群れがやって来るかもしれないであろう?」

ヘイト
「確かに、管理者は俺じゃないもんな。じゃあ、あれだ、イレギュラーやテコ入れは起きてる可能性はある、とだけ言っとく」

陽雨
「OKOK、なら油断せず行こうか。こんな所でおっちンじまったら愉しい事ができなくなっちまうしな」

友志
「ああ、邪魔する奴がいてもオレたちの友情の力があればどうにかなるんだぜ! 行こうぜ! みんな!」

ヘイト
「これだから陽キャは……でもまあ、ひとりくらいそんなのがいてもいいかもな」

陽雨
「ああ、行こうか、少年に騎士様にお姫様よ」

クーロ
「すべてが終わった後のサバト(パーティー)のためにもの♫」

ヘイト
「サバト……? テータ姫、こちらへ」

テータ
「あ、はい……何か、遠くから音が……」

エンジン音が聞こえてくる。
いくつものマシンが駆動する音だ。
そう認識するや否や、岩山を越えて走り来たる数々の影。
よく見れば、それは「R」ことバイクに乗ったラットキンライダーたちの兵団だった。

ヘイト
「どうやらテコ入れは入ってないようだな……」

友志
「おお! なんかいっぱい来たぜ!」

陽雨
「……ネズミの群れかぁ」

クーロ
「そっちは魔界のアバドン殿の領分じゃのう」

ヘイト・トゥルー
「自由に半魔になれりゃあこっちのもんよ。後ろは任せな」

友志
「よーし、行っくぜぇええ!」

友志の攻撃動作を見て、ラットキンたちは群れを分けて回避しようとする。

陽雨
「おおっと、避けさせないよ!」

両腕から数多の触手を伸ばし、進行方向を制限した。

友志
「ありがとな、陽雨サン! いっけーー!!」

蹴散らされるラットキンたち。だが、わらわらと次から次に現れる。

陽雨
「さあて、やろうかクーロ♫」

クーロ
「うむ、愉しもうぞ主よ!」

陽雨は両腕の触手をラットキンたちに伸ばし、一匹一匹掴んでは絡ませ捕える。
クーロもまた背中の触手を伸ばして絡め、敵をひと固めにし……そのままふたりで締め潰していく。

オイルが引火し、爆炎と共にラットキンの一団は消え去った。

陽雨
「よぉし一丁終わり!」

ヘイト
「さすがだ」

クーロ
「次はどの群れを潰そうかのぉ♫」

ラットキンたちは次から次にロケットランチャーを放ってくる。

陽雨
「ッチ、ド派手にやりやがって……!」

ヘイトはその弾道を読み、触手を伸ばしきっていたために被弾を免れない陽雨たちを防御プログラムで庇う。

ヘイト
「やっぱこのステージはこうだよなぁ」

友志
「やるな、ヘイト・トゥルー!」

友志はヘイトの活躍にガッツポーズをとった。

クーロ
「こんな面妖な場面なのかここは!?」

ラットキンたちの一団が急接近して火炎放射器を一斉に噴射してくる。

ヘイト
「まだ……ここにいたいな……」

火炎に包まれながらも、セキュリティプログラムに守られ呟いた。
そうして、ラットキンのデータを、消去していく。
敵の一団はそこにいたのがウソのように忽然と消えていった。

ほとんど数を減らしたラットキンたちだったが、死を恐れず突撃してくる。

陽雨
「さあて、これで終わりだよ!」

邪なる加護を纏わせた触手を、陽雨が残った一団に叩きつければ、蛮勇のラットキンたちは雄々しく散っていった。

友志
「やったな! 友情の勝利だぜ!」

クーロ
「もう終わりかの? つまらぬのぉ……」

陽雨
「まあまあ、楽に勝てるならそれで良いだろう?」

ヘイト
「ああ、まあな……」

バイクを駆るネズミ人間たちを倒すと、遠くの砂嵐が晴れ、朽ちた建造物が見える。
あれがポータルのあるキャットフォークの遺跡だとヘイトは知っている。

陽雨
「お、あの建物は何だ……?」

クーロ
「さては金銀財宝がざっくざくかの?」

ヘイト
「そんなもんはない。さっき言ったポータルがあるだけだ」

友志
「なるほど、つまり絆を結ぶ場所ってことだな!」

クーロ
「……なんじゃぁ、つまらんのぉ」

陽雨
「ここはステージクリアってことでショップとか、ご褒美があるところじゃないのかぁ?」

ヘイト
「何年前のゲームだと思ってるんだ。そしてローグライクは遊びじゃねぇ」

友志
「不破のおっさんは人生だって言ってたぜ!」

ヘイト
「ふふ……わかる奴と知り合いになったようだな」

陽雨
「人生ねえ……人の考えをアタシらはまだまだ理解しきれねえからなあ」

クーロ
「うむ、日々を愉しく愉快に生きて行くのが我らの考えじゃからのぉ」

友志
「不破のおっさんは良い奴だぜ! お前らにも早く会わせてやりてぇな! 心の友同士、仲良くなれるぜ!」

そんな会話をしながら遺跡に辿り着くと、建物内に明かりが灯り、広間の床中央のいびつな五芒星が光り輝く。
これが次の惑星に進むためのポータルで間違いない。

友志
「これをなんやかんやすればいいんだな!?」

ヘイト
「そうだ、こんなマークだった、懐かしいな」

陽雨
「ふむぅ……で、どこにスイッチがあるんだい?」

クーロ
「それか何か鍵となる品を持ってくるのかの?」

ヘイト
「乗るだけでいい。見たことあるだろ、ワープ」

友志
「乗ればいいんだな! わかったぜ!」

友志は元気よく足を踏み出した。

クーロ
「おお、そういう仕組みかの」

陽雨
「ならとっとと飛ぶとしますか」

半魔たちが五芒星に乗ると、眩い光と共に浮遊感に襲われた。

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