読書「ねじまき片想い」
柚木麻子著
恋愛小説と思って読み始めたら、思いのほかミステリー要素が多く、主人公富田宝子の身軽で自由なキャラクターに魅せられました。
玩具メーカーの敏腕プランナー宝子を主人公とする物語は、某女の子向けアニメとその業界裏を垣間見れた気になりました。小説中に出てくる「魔法使いの心友」が実際にあるアニメであることは巻末の解説で知ったので、思い浮かべたアニメはもっと他のアニメでしたが…。
宝子と宝子が恋する西島さんとの関係は、トラブル解決を重ねて想いが通じハッピーエンドを想像していたのに、意外や意外、終わりに向かって穏やかになっていく。このままフェードアウトして静かに終わるのかそれとも気持ちが再燃するのかと期待しながら読みました。
タイトルにある「ねじまき」が示唆していたのは、ゼンマイ仕かけのおもちゃ、メリーゴーランド、回り続ける宝子、人と人の関係としての歯車などなど。そして「自分の心にねじを巻いてくれるのは、自分だけ」ということ。この言葉で宝子は自分も他人も奮い立たせていきます。私も元気をもらい、心があたたかくなりました。