前の恋の話

長い昼寝のあと、東京に行く。
空いた電車に揺られながら、前の彼のことを思う。

すきだった。とても。
この人と結婚して、ずっと一緒にいるんだって信じて疑わなかった。

彼は私のわがままに疲れたという。
でも、私にとってそれはわがままではない。
それだけの価値観の違いで終わってしまった。

三年半の間、いろんなことがあった。
私は恋のほとんどのはじめてが彼だった。
こんなこと、普通起こらないってことも起こり、それはまだ今に尾を引いている。
彼はそれらを全部捨てた。
私とともに、責任を捨てた。

変わってくれるなら、続けていきたい

なんて言われた。
あなたの不思議な価値観には付き合えない。
それに合わせて生きろなんて、無理。

私の答えは、それだった。

結局、都合のいい女が欲しかっただけ。
意思のある人間なんていらなかった。彼に。

でも、二人でいる空間は本当に心地よくて、
いまだに結婚って考えたとき、彼が浮かぶ。
あの空間にいる彼と、
最後の無責任な行動と言葉を繰り返した彼が私にとってマッチしない。
別人のようだ。

あれから、一年半経って、私は落ち着くようになった。
すごく落ち着いている。

彼と同じ空間にいたときのような空気がほしい。
でもその相手は彼じゃない。
でもあの空間は本当に心地よかった。
そんな私のわがままが叶う日が来るんだろうか。
そんなことをふと思う。

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