母の家を片付ける その16 工業ミシンの移動、そして斎藤ミシンの謎と悲哀
なにげにまだ続いていた母の家を片付けるシリーズ。すでに16回目だよ。
今日は、以前こちら「その10 便利屋さんがどうしても移動できなかった「アレ」と、老いた親と向き合うという難題」でぼやいた「工業用ミシンの移動」。
私、業務用ミシンと繰り返していましたが、あれ、違いました。工業用ミシンでした。工業用。なんでそんなもんがうちにあるのかもようわからんが、とにかく特殊な重い重いミシンです。
便利屋さんでは動かせなかったので、ミシン屋さんにお願いしてください、ということろで前回は終了、その続きです。
帽子づくりは母と世界をつなぐ大事な蝶番
今回の親の家の片付けは、何度も繰り返していますが「2階の寝室が階段を使って危険なので、1階の客間だった和室を母の寝室にする」ためのプロジェクト。
言い出したのは孫である私の息子なので、母の発案ではありません。
「まだ階段だって大丈夫」「2階との行き来は問題ない」というのが母の主張で、このために収納をどこに置くか等でかなり揉めたりもしました。
でも、その中でたった一つ、母が希望したことがありました。
「2階のミシンを1階の居間におろしてほしい」
美智子様のお帽子を作っていた日本のお帽子ワールドに君臨していた平田暁夫先生のところで、お帽子の仕立てを教わったというのが母の矜持です。年をとっても自分で仕立てたお帽子をかぶってお買い物に出かけるので、まあ、ちょいちょいいろんなところで声をかけられる。
結果、そのお帽子私にも作ってちょうだい、という輪が広がり。。。。。
と、一人暮らしの母にとっては、自分の仕事にしていた世界と、いまの暮らしをつなぐ大切な蝶番のようになっているお帽子作り。
仕事部屋がごちゃごちゃで、まったく機能しなくなっているのをどうにかしたいとはずっと思っていたようです。いやほんと、物置状態だった、こんな感じに。もはやどこにミシンがあるかもわからんでがしょ? (みつけてみてよ)
そこで、ミシンを1階におろすプロジェクトが急遽追加。
1階の居間をちょっとした仕事部屋にして、お友達でも呼んで一緒にものづくりをしたらどうかというのは、父が亡くなって一人暮らしになったときにだいぶ提案したのですが、当時はまったく気力がわかず。
やっとその気になった84歳なので、これは叶えてあげたい!
孝行娘が動く!
過去の記憶と経験に固執する84歳
という経緯での、便利屋さんにお願いしてのミシン移動。
結果として無理だったので、便利屋さんが教えてくれた地元のミシン屋さんに連絡を取ってあげる、と伝えていました。が、
でもおかしい、斎藤さんは運んでくれたのに
斎藤ミシンっていうのがあったけど、移転しちゃっていまどこにあるかわからない。そこに頼むのがいちばんいい。
と、渋い顔の母。
孝行娘はさ、探すわけです。斎藤ミシンを。
たぶん、午前中ずっと検索していたと思うよ。どこに行った、斎藤ミシン。
でも、どうやってもみつからない。地元の地名に「ミシン 移転」等、さまざまな検索ワードをぶっこんでもまったく見当たらない。まあ、廃業しちゃったんだろうなあ、というわけで
教えてもらったミシン屋さんにお願いするよ、いいね? もしかしたらそこに斎藤さんいるかもしれないし、そのミシン屋さんが移転した先かもしれないし
と伝えると
あら、そう。お願いします
という。
ここで年を越してしまいました。なんつか、私、ブルドーザーみたいに相手の意見や顔色伺わずガンガン突き進んでいける性格なら、もうちょっと手っ取り早いのかも(元夫みたいに>苦笑 その分まわりはヘタるけど)。
というわけで、新年あけてしばし経ってから、ミシン屋さんに電話してみたよ。
やはり分解して移動していた! 工賃2万円
そちらは、前に〇〇通りにあったミシン屋さんですか?
いえ、違いますねええ
そうか。やっぱり斎藤ミシンは廃業してるんだろうなー。
というわけで、事情を話すとサクッと解決。
それはやはり、分解して搬入して組み立てたと思いますよ。移動させるなら、また分解しておろしてから、移動先で組み立てて運転確認までします。工賃2万円ほどです。
とっても重いけど、誰か手伝いが必要ですか? と聞くと、出張は2名で行くので移動も問題なし、と。ああ、それは安心。母の記憶が曖昧なためにだいぶごねられたけど、やっぱりさあ、分解移動していたわけなんだろうよ。2万円でやってくれるならありがたいもんだよ。
じゃあ、一度母に確認取ってから連絡します。お願いしたらどのくらいで来ていただけますか?
…とここで、不測の事態が。
いまねええ
緊急事態宣言出ちゃいそうでしょ。
それ出ちゃったら、うち、出張はしませんので、宣言明けるまで待ってください。
を。。。。。
あれこれごねられなければ、昨年中にさっさと連絡できていた。そしたら移動も年始めにサクッと済んでいたはず。ぐぐ。腹の中で拳を握る。
いや、別に先送りになってもいいんですが、私としてはいつまでも懸案事項で引きずりたくないので、早めに「終了!」としてしまいたかった。まあ、でも仕方ない。
緊急事態が解除されたら、また連絡をしますと伝えて電話を置く。
ま、とりあえず懸案事項は解決しそうなので、とっとと母に連絡。
ミシンは移動できる
費用は2万円
ただし緊急事態が解除されてから
戻ってきた答えに、娘がっくり。
私が探してからにしてちょうだい、って。。。。。じゃ、はよ探しとけよ
母の答え
あら、そう、ありがとう。でもね、斎藤さん近くに移転したはずだから、斎藤さんを探す。お願いするのは私が斎藤さんを探してからにしてちょうだい
………
えっと
どうやって探すんですか?
娘、半日かけてあれこれ探しまくってまったく見つからなかったけど?
越した先はだいたいわかる。近い。
え?
どこに行ったかわからないんじゃなかったの?
だいたいわかる。探す
もうここでお手あげ。はい、探せば。探してください。みつかるといいね。もうちょっと早く、それ言ってくれればよかったと思うよ。さようなら。
と電話を切る。
なんかもうね、やんなっちゃったの。
なので、もう、ミシンのことは勝手にやればと思う。昔から母はこうだった。大変だ、大変だ、どうしよう、いづみちゃんどうにかしてと言うので、あっちこっち奔走して手配する。みつかったよ、できそうだよと伝えると
「あら? そのことはもうよくなった」という。ほかに誰かがやってくれることになったと。
えっと、お願いされたから苦労して手配したのに。相手にも迷惑かけるよ、なんで? と怒ると「なによ、もういい!」とプンとする。
そういう昔のトラウマみたいなものが湧き出てしまって、気持ち的にもうアカンと思ったので、この件から手を引こうと決める。斎藤さん探してお願いすればいいよ。もういいよ。
そして舞い込んだ驚愕の1本のライン
どうにか保っていた気持ちの糸みたいなものがプツンと切れてしまった、その翌日。
母から1本のラインが入りました。
連絡先がみつかりました。明日でかけてきます。
あら、そうよかったね。
もう、私の心は冷ややか>笑
一日で連絡先がみつかるんですね。それ、なぜ最初に見つけようとしなかったんですかね。もういいけど。
ほっとけ気分でいた、その2日後に入ったラインで、オレは顎が落ちましたよ。だらりと。
斎藤さんじゃありませんでした。
伊藤さんでした。
イトウ。
みつかるわけないじゃんよ。私が探しまくったのはサイトウだよ!
コジマだよ! みたいに叫びたいよ。サイトウだよ!!!!
そして続くメッセージがこりゃまた驚愕
伊藤さん、亡くなってました
もうね、なんかどうにもわけわからん気分になって
「そうして探せるのならもっと早くやってほしかったです」
とだけメッセージ送ったら
ずぼらな私をゆるして〜
という、すげーふざけたスタンプが戻ってきた。
やってらんねえ。ガン無視してたら電話がかかってきました。
斎藤さんじゃなくて伊藤さんだったー。おうちまで行った。伊藤さん死んじゃって、もうミシン屋さんはやってなかった。
当たり前だよ。死んじゃったらやってないよ。
それよりなんで場所がわかったの?
領収書が出てきて住所が書いてあった
その領収書、どうしてもっと早く探そうと思わなかったの? もうどこに行ったかわからないというから、サイトウミシンを探して、移動してくれるミシン屋さんに電話して、それにどれだけの時間を使ったかわかる?
ごめんなさいー
ま、もういいよ。そんでどうすんのよ。
いづみちゃんが探してくれたところでやってもらうことにするわ
えっとさ
やってもらうことにするわ、 ですか?
それとも
お願いします、ですか?
え?
無感情な声で上記を繰り返す>笑
やっと気づいたようで、母
あ、いづみちゃん、どうぞよろしくお願いします。
はい、わかりました。ただし非常事態宣言が明けてからですよ。じゃあね。
というわけで、ぷっつり切れつつも、最後は引き受けることになる一人娘。まあ、とりあえずミシン問題、来月非常事態宣言が明けたら(明けるのか?)解決しそうです。
ただね、ミシンをおろすと主張している母、仕事道具は2階にあるのよ、どうしたらいいのかしら? と言い出し、整理して居間にセットしてあげると伝えると「景観を壊すから絶対いやだ」と曰わっています。
話の辻褄が合わないんですけど。
私は、そこまで気力が持たない気がするので、とりあえずミシンおろすところまでは頑張る予定。ピアノが運び出されたこの場所に、工業用ミシンが鎮座する予定です。
長くなりました。ではまた。
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