「反乱者たち」シーズン1の見所紹介
2014年の秋から2018年の春まで放送されたディズニー初となるスター・ウォーズ シリーズのアニメ作品『反乱者たち』をシーズンごとに、私なりの見所や楽しみ方と合わせて紹介したいと思います。
本作は「クローン・ウォーズ」に続き、2012年に引退した原作者ジョージ・ルーカスの弟子的存在であるデイブ・フィローニが原案・製作総指揮・総監督を務めました。映画第1作「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」の5年前から反乱同盟結成に至るまでが描かれます。
2023年夏に配信予定の「アソーカ」にも本作のキャラクターが実写で登場するほか、特に本作のシーズン1は9月に配信開始となるドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」と同時期の物語であり、クロスオーバーが期待されています。未見の方はぜひこの機会に全15話のシーズン1だけでも鑑賞しておくと、ドラマをより深く楽しむことができるかもしれません。
とはいえ製作総指揮のトニー・ギルロイは「キャシアン・アンドー」が予備知識が必要なく、新しい観客に向けて作った旨も公言しています。
なるべく「結末は見てのお楽しみ」という形で物語のさわりを紹介していますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんのでその点ご注意ください。
「反乱者たち」の時代
「反乱者たち」は銀河帝国誕生から14年後が舞台です。銀河帝国は勢力を増大し、その統治を銀河の隅々まで拡大しようとしています。帝国からの分離を掲げる惑星国家は敵として帝国軍の攻撃を受け、反体制政治活動は非合法的かつ地下抵抗運動化しています。「エピソード1 ファントム・メナス」以降における銀河共和国に対する分離主義運動初期の混乱に近い(それでいて逆転した)状況になっています。
主人公エズラとその仲間達
クローン戦争時代からの革命家チャム・シンドゥーラを父とし、戦争終結後に帝国の占領下となったライロス出身のヘラ(とチョッパー)。オーダー66を生き残った元ジェダイ・パダワンのケイナン。2人の経緯は現在進行中のシリーズ「バッド・バッチ」で語られています。サビーヌもまた故郷マンダロアを帝国に奪われ、ゼブは種族を根絶やしにされているといった形で全員が帝国に対し並々ならぬ因縁があります。
そしてエズラも幼い頃に帝国軍に両親を連れ去られ孤児として生きてきました。生きるために身に付けた盗賊的なスキルは反乱活動のなかで役立つことに。
経歴の異なる彼らが家族のようなチームとなり帝国に立ち向かいます。
彼らの母船「ゴースト」と「ファントム」、そしてコードネームの「スペクター」はすべて「幽霊」の意味を持ち、公の監視から隠れて戦う彼らの帝国全盛期におけるアイデンティティーを表しています。
舞台となる惑星ロザルの状況
舞台となるロザルは帝国の一方的な侵略を受けているわけではなく、経済破綻を機に招致したという背景があります。そのため、政府の高官や一部の地元民は帝国を歓迎しているのですが、影では様々な代償となる問題が生じています。
今年配信された「オビ=ワン・ケノービ」にも登場した尋問官は映像作品では本作が初登場となります。
1話から4話までの見所
シーズン1はゴーストチームの拠点となる惑星ロザルを主な舞台として物語が展開します。《1〜2話》では登場人物の紹介と物語の導入が描かれます。エズラは初登場の段階からフォース感応者の素質を見せているところに注目です。
1977年の映画第1作冒頭のC3POの台詞として登場したケッセルが映像作品に登場するのはこのストーリーアークが初でした。後に「ハン・ソロ」や「クローン・ウォーズ シーズン7」でビジュアルイメージが深掘りされていきます。
《3話》では2012年に東京ディズニーランドでもクローズとなった旧スターツアーズのパイロット キャプテン・レックス(声優もポール・ルーベンスが担当)に加えて、お馴染みの2体のドロイドと当時のオーナーが登場。シリーズ全体を通してこうしたファンサービスが多く観られるのも本作(デイブ・フィローニ関与作)の特徴と言えます。
「反乱者たち」は当初子供をターゲットとしていて「クローン・ウォーズ」の終盤に向けた暗い展開とは相対して序盤はコミカルな雰囲気があります。《4話》もエズラとゼブによるドタバタアクションになっています。吹替声優としてお笑い芸人のバナナマンの二人が参加していますが、これは当時彼らが番宣プロモーションに携わっていた事に関連します。シーズン1とシーズン2の合間には「バナナ・ウォーズ」という特番も放送されました。
5話から7話までの見所
《5話》ではなんとジェダイマスターのルミナーラ生存の情報から物語が展開。救出すべくゴーストチームが刑務所に潜入します。
師匠と弟子という関係ながらケイナンとエズラは共に未熟者であり、二人が切磋琢磨しながら成長していく姿も本作の見所になっています。
《6話》に登場する帝国青少年アカデミーは、帝国が創設した教育機関の一部です。台詞からはエズラが潜入してから何週間も経過していることがわかります。「エピソード4 新たなる希望」でルークが行きたがっていた(親友のビグズも卒業した)「アカデミー」もこうした兵士養成機関を指しています。
ヘラとサビーヌのコンビが活躍する《7話》では、「クローン・ウォーズ」シーズン5「生きていた兵士」で登場した「ライドニウム」がキーアイテムとして登場。
映画「恐怖の報酬」をオマージュした「マンダロリアン」シーズン2「信奉者」でディン・ジャリンとメイフェルドが輸送したのもこの燃料でした。
舞台となるPM-1203がある小惑星帯はかつて存在したアナクセスという惑星の残骸で、破壊される以前のアナクセスは6年後の2020年に配信となった「クローン・ウォーズ」シーズン7の不良分隊編に登場します。同アークではソウ・ゲレラがフルクラムのコードネームを使っているのも注目ポイントでした。
8話から11話までの見所
《8話》から《9話》は連続するエピソードです。
シーボが頭に付けられているのは「エピソード5 帝国の逆襲」でランドの補佐官を務めるロボトが付けていた装置と同じものです。以降、エズラの両親に関わるお話が徐々に出てきます。エズラは帝国が建国された日=「エピソード3 シスの復讐」で皇帝が建国宣言をした日に(つまりルーク・レイアらとほぼ同時期に)生まれた事が明らかに。
《10話》ではエズラが「クローン・ウォーズ」シーズン5のジェダイ・イニシエイト編やゲーム「ジェダイ:フォールン・オーダー」でも描かれたギャザリングに挑戦します。これによりエズラは自身初のライトセーバーを持つことになりますが、彼らしい特別なギミックがあるものとなりました。
エズラは何週間も掛けて製作しており、彼らが出会ってからかなりの月日を共にしている事が読み取れます。
そして《11話》にはランド・カルリジアンが登場。公開順が前後しますが、映画作品「ハン・ソロ」でファルコン号をソロに譲ってから5年が経過しています。
スター・ウォーズ作品に度々登場するポーカーのようなカードゲーム「サバック」は「エピソード5 帝国の逆襲」の台本と小説に登場。この時点ではまだですが、いずれランドはサバック勝負でクラウドシティと執政官の地位を手に入れます。
後付けでサバックは現実にゲームルールが確立していて、実際に商品としても発売されています。3枚のカードの合計値が±23の間の最大値または近似値を揃える事で強い手役となります。劇中、ゼブは23となる手役を揃えていましたがランドはそれより強い「0、2、3」の特別な手役「Iddiot's Array(愚者の行列)」を揃えて逆転勝利します。この手役の名が本エピソードの原題になっています。
ランドが狙うパファー・ピッグの奇異な特性については、個人的にダン・オバノンがジョン・カーペンターと作った短編SF「ダーク・スター」のエイリアンからのインスパイアなのではないかと思っています。
アズモリガンがジャバ・ザ・ハットの原案からの引用であったり、意外とマニアに向けた情報密度の高いエピソードになっています。
12話から15話までの見所
シーズン・フィナーレとなる4つのエピソードです。
前半2話ではゴースト・チームと他の反乱組織との接触が描かれます。
《13話》では帝国軍の通信施設を使いエズラが他の星系に蜂起のメッセージを発信しますが、このあたり「キャシアン・アンドー」でのクロスオーバーを期待してしまいます。
そしてロザルにターキン大総督が直々に来訪。反乱分子の取り締まりに手こずる現地の将校に怠慢として罰を与え、これをエージェント・カラスとチュア大臣への警告とします。
一方、ケイナンの手がかりを得たエズラたちは救出作戦を展開。
このフィナーレで初放送時点では打ち切り状態だった「クローン・ウォーズ」からあのキャラクターが再登場を果たしました。この記事をまとめるにあたり久々にこのシーズン1を通しで視聴したのですが、2020年の「クローン・ウォーズ」ファイナルシーズンや2021年の「バッド・バッチ」の展開を踏まえて見てみると、復活キャラに対する感激やクライマックスの熱量が更に大きく感じられる事に気付かされました。時系列が補完されることで、キャラクターや物語の魅力が更に増していくのも「スター・ウォーズ」シリーズの大きな見所ですね。
ルーカス引退後、初の映像作品
2012年に原作者ジョージ・ルーカスが引退宣言しルーカスフィルムをディズニーに売却してから、2014年に「反乱者たち」が放送開始するまで「スター・ウォーズ」を取り巻く環境は急激に変化しました。
2012年、4年間に渡り放送されていた「クローン・ウォーズ」がシーズン5をもって打ち切りへ。2013年にはルーカス不在のまま新たな3部作製作が発表。その一方でゲーム部門ルーカス・アーツが解体。2014年には製作途中だったエピソードをまとめた「クローン・ウォーズ ザ・ロスト・ミッション」がリリースされますが、新たな映画シリーズのためにそれまで主に小説やコミックのスピンオフ作品で綴られたスター・ウォーズ世界の歴史を別の世界線とするなど、古参のファンの反発を買うような事態が続きました。
ただ、私個人の体感としては2010年代初頭の「スター・ウォーズ」は人気が低迷していたことは事実ですが、依然としてプリクエル3部作からのルーカスバッシングが続いていましたから、ルーカスを拒絶し続け過激な反発を繰り返した一部のファンたちにもこうした状況を招いた原因の一端があったのだろうと考えています。
歴史の整理についても「クローン・ウォーズ」の段階で細かい設定改変が行われていて、これに対する批判を受けての「映像作品=正史」とする公式表明の側面が強かったのではないかと思っています。
(状況からの臆測ではありますが)80〜90年代に映画製作を優先して他人によるスピンオフ展開を放任していたルーカス自身にも非はあるとは思います。
そんな状況のなか「反乱者たち」もバッシングに晒されながらのスタートでした。シリーズが完結してみれば、「スター・ウォーズ」を愛し、ルーカスの精神を受け継ぐ精鋭スタッフたちによる気骨のある、加えてファンサービス旺盛なシリーズだったわけですが・・・。
制作陣=ゴースト・チーム
アニメ放送と同時に放送された「製作現場に潜入!(REBELS RECON)」というメイキング番組(DVD/ブルーレイに収録、ディズニープラスでは配信されていない)では当時のデイブ・フィローニやパブロ・イダルゴ(LFLストーリーグループ=設定監修)らのリアルなコメントとともに、彼らがいかに「スター・ウォーズ」を理解し、どんな想いで製作しているかを知る事ができます。
ルーカスフィルムによる学生への講演の模様も紹介されているのですが、その中で『「反乱者たち」を作ろうと思ったきっかけは?』という質問に対してフィローニは『ジョージが一線を退いたことは衝撃であり、彼抜きでクローン・ウォーズを作ることは正しくない、それで本作を始めた』と語っています。続けて『小さなグループの仲間たちが大きな目標に挑む姿はうちのチームに似てる』とも。
「製作現場に潜入!」はレンタル版にも収録されています。ディズニープラスで配信中のドラマ作品のメイキング『ギャラリー』よりも良い意味で生々しいコメントが多く、非常に見応えがありますので本編とあわせてお薦めします。
シーズン2の見所紹介に続きます!