「クローン・ウォーズ」シーズン6の見所紹介
「スター・ウォーズ」ファンの間でも難所となっている「クローン・ウォーズ」をシーズンごとに、私なりの見所や楽しみ方と合わせて紹介しています。
昨今、ドラマシリーズでもクロスオーバーの機会が増え、より深くドラマ作品を楽しみたいという方には特にお薦めしたい傑作アニメシリーズです。
なるべく「結末は見てのお楽しみ」という形で物語のさわりを紹介していますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんのでその点ご注意ください。
スター・ウォーズのアニメシリーズ「クローン・ウォーズ」は諸事情によりシーズン5で打ち切り終了となり2013年3月(日本は2014年1月)にフィナーレを迎えます。
しかしシリーズは当初のシーズン8までの構想に基づいて制作が進められおり、打ち切り終了決定時点である程度出来上がっていた未公開エピソードがありました。
※打ち切りではなく実際に当時ルーカスが続3部作のプロットを制作していた事実を確認できたので訂正しました(2024/08/20)
それらのうちの13エピソードが「ザ・ロスト・ミッション」という括りで2014年3月(米国/日本は2015年12月)にまとめて放送されたのが、現在配信などでシーズン6とされているものです。
ブルーレイのパッケージには大々と「FINAL SEASON」と書かれています。
こうした事情のせいか、明かされないままになってしまった謎や伏線もあって様々な解釈で考察が楽しめるのもシーズン6の特徴だと思います。
省略無しで全ストーリーアークを紹介しています。
1話から7話の見所
《1話》からのストーリーアークでは作戦行動中、一人のクローンに「オーダー66」が誤って発動したことから「オーダー66」のカラクリの一端と、カミーノ人がシスの陰謀には当初から絡んでいた事が明確化します。
このエピソードで不可解な点として挙げられるのが「タップが事件の数日前に行方不明になっていた」ということと、非常に大量のクローンが生産されたにも関わらず「誤作動を起こしたのは一人だけ」という事実です。
これらの描写と《10話》におけるドゥークーの動向について面白い考察記事がありますので紹介したいと思います。
あくまで考察の一つであり真偽は不明ですが、シス卿の行動原理としてドゥークーがパルパティーンを欺いて計画を壊し、不利な状況に追い込もうとしていた節は確実にあったのではないかと思います。そしてドゥークーが弟子のヴェントレスに対してそうだったように、ドゥークーを脅威と認めたパルパティーンが「シスの復讐」冒頭でアナキンに殺させるという流れはとても自然に見えます。
《5話》〜《7話》ではシーズン2《4話》でアナキンの嫉妬心を煽ったクローヴィスが再登場。元老院を追われ、改心して裁定者として破綻しかけた銀行グループの立て直しを計りますが・・・。パドメをめぐるアナキンとクローヴィス、銀行をめぐる共和国と分離主義者という二つの三角関係が描かれます。
終盤、分離主義者がスキピオへ侵略を開始。銀行を奪われる危機に直面した元老院議会は攻撃支持に傾きます。シーズン1《15話》でオルトー・プルトニアでの戦闘行為に反対していたパントラのチューチー議員も攻撃支持を表明する様子がショッキングです。長びく戦争と金融不安が人々の価値感や判断を歪ませます。
8話から10話の見所
悲劇的な結末に向けシリアスな展開が続きますが《8〜9話》ではジャー・ジャーを主役にしたユニークなストーリーアークが挟まれます。ルーカス原案の「インディ・ジョーンズ」シリーズからのオマージュが多いのもこのアークの特徴です。
個人的にはジャー・ジャーはメイスの台詞でも分かるように「フォースの導き」を象徴する重要なキャラクターだと思っています。無計画・無思考的な彼のアクションが転じて問題解決に大きな影響を与えます。「エピソード1 ファントム・メナス」におけるジャー・ジャーの存在もパルパティーンにとっては全く想定外の障害だったはずです。一方で「エピソード3 シスの復讐」でパルパティーンに非常大権を与える動議を提案したのもジャー・ジャーでした。
本アークでは「スター・ウォーズ」の宇宙を支配するフォースをジェダイやシスとは違う形で受容し信奉するバードッタ独自の神秘思想が描かれます。
同じアプローチは「スター・ウォーズ ビジョンズ」の「村の花嫁」でも見る事ができましたが、「失踪」はバディコメディのスタイルで痛快なアクション劇が楽しめます。黒幕として意外なキャラクターが姿を現します。
《10話》では「エピソード2 クローンの攻撃」における最大の謎、クローン軍の発注者サイフォ=ディアスの謎に迫ります。「クローン・トルーパーの秘密編」と共にシーズン6の最注目ストーリーアークです。
11話から13話の見所
《11話》からの3話では、ヨーダを主役にフォースの秘密と試練、ダース・シディアスとの最初の対面が描かれます。
日本の文法では再現できていないヨーダの独特の口調(倒置法的な話し方をする)やSW用語の翻訳が間違っていたり、やや変になっている部分もあってクワイ=ガン・ジンの説明部分も含め全体的に少し難解になっています。上図で紹介している台詞は私の意訳です。
フォースは生命と宇宙の間を循環する双方向的なエネルギーで、ミディ=クロリアンはフォースを知覚し影響を与えるための触媒として機能します。
当初ミディ=クロリアンは「ドラゴンボール」の「戦闘力」のような強さの数値化を目的とした安易な新設定と誤解されてバッシングの標的にもされましたが、実際にはこうした練られた設定だった事が初めて語られます。
単純な神秘思想ではなく科学的なスタンスが織り交ぜられているところはむしろ「現代の神話」と謳われる「スター・ウォーズ」らしい特徴と言えます。
瀬名秀明氏のSF小説「パラサイト・イブ」が1995年であった事もあり(「エピソード1 ファントム・メナス」(1999年公開)でのミディ=クロリアン設定採用は)同作からの影響を指摘される方も見かけますが、個人的には関連無しと考えます。なお同作のネタ元である「ミトコンドリア・イブ説」は1987年発表です。
常に最新の科学への関心を持ち、また様々な作品で力関係の逆転や共生をテーマにした黒澤明監督の影響を受けたルーカスが、超人的なジェダイやシスがそれでも体内に共生する微生物の力を借りなければ力を発揮できないという仕組みを持ち込んだのは実に彼らしい発想だと思います。
シーズン6の放送後、「クローン・ウォーズ レガシー(遺産)」として未公開に終わったエピソードがスター・ウォーズ公式サイトで紹介されたり、コミックや小説で展開されました。
新たなアニメシリーズとして「反乱者たち」の放送も始まり、2008年から続いた「クローン・ウォーズ」は静かに終わりを迎えたように思われました。
2018年の7月、サンディエゴ・コミコンでシーズン7が発表されます。
これには多くのファンが歓喜しました。私もその発表に感激した一人でした。
次回はラスト12話、「クローン・ウォーズ」ファイナルシーズンの見所紹介です。