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「スター・ウォーズ・ビジョンズ」の制作に参加しました。
LFLのチェックが完了しましたので、参加の経緯や設定について紹介させていただきます。
改めまして、
日本にいながらLFLのスター・ウォーズのタイトルを冠する映像作品に関わることができる日が来るとは夢にも思いませんでした。幼少時に観た再上映版「スター・ウォーズ(1977)」以来の熱烈なファンであり、スター・ウォーズを心のよすがとし、スター・ウォーズに憧れて創作活動を始めた身としては、この様な貴重な機会を与えていただき感謝と喜びの念に堪えません。
改めまして五十嵐監督とジェノスタジオに心より厚く御礼申し上げます。
そしてご視聴いただいた皆様、誠にありがとうございました。
ディズニープラスで配信開始となりました「スター・ウォーズ・ビジョンズ」においてジェノスタジオが制作したエピソード「のらうさロップと緋桜お蝶(Lop and Ochō)」の制作に参加させていただきました。
参加の経緯
千載一遇の機会を頂いて涙が溢れるほど嬉しかったのですが、実は初期プロットを拝読した時点で私は大変悩んだ末にご依頼をお断りさせていただいたという経緯があります。
初期プロットは最終的な形とは異なるスタイルかつ、和のテイストは別としても様々な要素と設定は私が認識しているスター・ウォーズとはかけ離れたものだったため非常に複雑な心境に陥り、スター・ウォーズへの思い入れが強すぎるが故にかえって現場にご迷惑をお掛けする懸念もあって辞退申し上げました。
しかしながら、お断りしたにも関わらず改めて要請をいただき、ある種の覚悟を決めて私は担当させていただくことになります。紆余曲折の末に厚かましくもアドバイザーの役目を申し出ましてプロット等についての意見・改案と、アイデアも出来る限りデス・スター完成以前の銀河帝国全盛期にあって然るべき設定を色々と提案させていただきました。遠慮無しのダメ出しや愚見を申し上げさせていただいたにも関わらず所々でいくつかの意見を取り入れていただいております。
私は制作中この作品は「カノン」となるのか、だとしたらLFLのストーリーグループの監修を受けているのかについて質問したのですが、それについては今思えば話が噛み合っていなかったのではないかと思い返します。本来デザイナーとして参加させていただいている私には管轄外の部分であり実際の事は今も判りません。
別の世界線(=MCUの「What If...?」のようなもの)か、あるいは例えば太古のジェダイが幻視したフォース・ヴィジョン的な企画かと想像していましたが、地球の(日本の)文化的要素・意匠をそのまま持ち込むスタイルに疑問を抱えたまま作業を終え、昨年末のDisney Investor Day 2020の発表を見て携わらせていただいた作品が「ビジョンズ」であろう事を推察し、今年7月のトレーラー公開時に改めて「ビジョンズは『ノン・カノン』」と公式発表され、納得したのでした。
私の行為は作品を保守的なものにしてしまったかもしれませんが、作品のバランスに貢献できたのであれば幸いです。
各種担当要素の設定と考証
ここからは実際に制作を担当させていただいた部分についての解説です。上記の通り、カノンを意識した形で設定を検討しました。
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ストームトルーパー
タオのストームトルーパーのアーマーの膝部分はあえて左右対称にしました。タオの駐留部隊の装備という事にしています。実写版の体型をベースにディテールは「反乱者たち」の設定画などを踏襲してまとめました。
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スピーダーバイクとパトロール・トルーパー
スピーダー・バイクについては74-Zとスカウト・トルーパーというリクエストでしたが可能ならオリジナルのデザインに挑戦したかったので提案させていただきました。「ROTJ」におけるジョー・ジョンストンのスケッチをミックスして後傾型のスピーダー・バイクとしました。片方は1997年のハズブロのEUトイ(POTF)の元になったものです。ディテールは74-Zを参考にして、それにパトロール・トルーパーを乗せました。
物語の中ではタオに帝国軍が来てから何年も経過した後なので「Solo:ASWS」のコレリアやその他の占領下の惑星と同じような状況下で運用されるものです。監督からはワイドパンツをリクエストされましたので下半身はショア・トルーパーやタンク・トルーパーと共通に。これも本作の装備という設定です。
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ランドスピーダー
オチョウのランドスピーダーも「Solo:ASWS」のM-68を参考にしていてモブクェット製のイメージです。後部にはサソリ型生物のマーキングがあります。
KX系セキュリティ・ドロイド
オチョウの警護役のKX系セキュリティ・ドロイドは「ローグ・ワン」での活躍はもちろん「Jedi: Fallen Order」で敵として現れた本来の姿が非常に良かったので提案させていただきました。
監督の元々のアイデアはデス・トルーパーでしたが、クローや大鎌で近接戦闘をさせるのならエンフォーサー・ドロイドのほうが適しています。
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DTシリーズ・セントリー・ドロイド
セントリー・ドロイドは「反乱者たち」からですが、上腕や腹部は「Dark Forces」のフェイズ III ダーク・トルーパーのようにアレンジしています。
デザインの段階では「マンダロリアン」にダーク・トルーパーが登場することは予想外でした。仕上げをしている時にちょうどそれらの登場回が配信され先を越された事も含めて声を出して驚きました。そういうわけで本作ではあくまで「ダーク・トルーパーを思わせるセントリー・ドロイドの亜種」であってモフ・ギデオンの使用したものとは別です。
装備しているエレクトロハンマーについては「Jedi: Fallen Order」からです。
帝国軍の艦艇
艦艇についてはゴザンティ級とレイダー級を選ばせていただきましたが、ゴザンティ級もデザインの仕上げ作業をしているときにちょうど「マンダロリアン」でも登場したので(これも非常に驚きました)ドラマバージョンのディテールも少し参考にしました。
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帝国軍の輸送船
また、タオに奴隷を移送する輸送船をデザインしましたが、ゴザンティ級とともにタオに向かうシーンはお蔵入りとなりました。AT-ACTと同規格のコンテナを複数搭載できる船でした。ゴザンティ級が護衛しつつハイパースペースから出てきてTIE機が分離して発進する、といった絵が見たかったのですが残念です。
輸送船とゴザンティ級は本編では遠景に確認できるカットがありますのでぜひ探してみて下さい。
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カーゴシャトル
ヤサブロウたちが侵入に使うカーゴシャトルはその元ネタを知っているファンへのサプライズかつ、当時の開発者へのリスペクトを込めました。私はルーカスアーツのスター・ウォーズゲームのファンでした。
カーゴシャトルはおそらくヤサブロウたちが鹵獲した帝国軍のものであり、侵入には盗んだコードを使ったことでしょう。
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タオの帝国軍駐屯部隊
タオの帝国軍施設については当初のプロットでは階段で屋上に行けるビルが一棟という感じでしたので、全盛期の帝国らしく都市周辺一帯のメガストラクチャー化を提案しました。ルーカスの描いた銀河帝国には機械文明を象徴する側面がありますから、自然と調和して共生するタオの景観に強引に機械的な構造体(資源採掘施設?)が浸食していく様子をアイデアスケッチにして提供しました。
施設の上空に象徴的に浮揚するスター・デストロイヤーがII級であるのは、スタッフ間の共通資料としてバンダイ製のプラモデルを用いたためです。作品中ではブリッジ・タワーのあらぬ所が光っているので、ブリッジ・タワーの仕様が特殊なI級という解釈もあって良いかもしれません。
これは個人的な意見で公式な設定ではありませんが、カノンに当てはめて考えるなら時代設定としては「反乱者たち」と同時期であり、タオは未知領域か辺境の果てにあって旧共和国とも直接的な交易は無かったような惑星と考えます。
短編ではありましたが(現実世界での)幅広い時代のものを構成要素として取り上げました。個人的に現在の状況に至る「SW:RotS」以降の16年を支えたのはゲームを含むスピンオフ作品だと思っています。携わった数多くのクリエイター達への感謝と敬意を込めて作業に当たらせていただきました。
20年前「スター・ウォーズの仕事がしたい」と言えば笑われて馬鹿にされたものでしたが、続けてきて良かったと思っています。次はデイブ・フィローニの作品に携わる機会を得るため更に精進したいと思います。
「〜ビジョンズ」をきっかけにスター・ウォーズに興味を持った方々にはぜひ映画作品やドラマ、アニメシリーズなど『本流』の作品群も楽しんでいただけたら嬉しいです。