標準アプリというロマン
職業柄パソコンを長時間さわるデジタル文具マフィアの面々。今日も夜な夜な Discord のサーバーに集まって、パソコンやスマホのツールについてたらたらと話をしています。
登場人物
イズミ 職業ディレクター。好きなボールペンはゼブラのサラサ。
ゲン 職業デザイナー、ボドゲクリエイター。三度の飯よりメモが好き。
ピエール 職業コピーライター。めんどくさがり屋。
ノビー 職業エンジニア、ディレクター。効率厨。アイドルオタク。
標準アプリを使いたい
イズミ : 今回のテーマは「標準アプリ」です。できれば標準アプリだけで、できれば自己流のカスタマイズなどはせずに、プレーンな状態で使っていきたいという気持ち。用意された配膳で、お行儀よく、作法を守っていく気持ち良さへの憧れ。誰しもが持っていると思います。
ゲン : できることならサードパーティアプリを入れずにすべて OS 標準搭載されているものでまかないたいですよね。様々な理由があると思いますが、一貫性・移行コスト・互換性という点でやはり標準アプリは魅力的です。
イズミ : 最近げんちゃんの影響で仕事以外で使う Mac では Safari、Windows では Edge というのを始めました。
Safari を使っていて標準っていいなと思うのは、共有の挙動が iOS と共通で心地がよかったり、Mac のキーチェーンアクセスとインテグレートされているのでパスワード管理がすっきり明快で安心感があったりするあたりですね。
あとは、タブのコンパクトレイアウトが優秀で、シングルページアプリケーション系のウェブサービスをすっきりウィンドウで使える感じも心地よいです。これは標準というか Safari のデザインが優れているということですが。
ノビー : 標準アプリのロマンって話はあるなあと思いつつ、長らく PC は Mac、スマホは Android なので、あんまり探求できてないな。
イズミ : 標準アプリでいくと決めるのは、言い換えるとプラットフォームのエコシステムに身を委ねるということだから、PC とスマホとタブレットというカテゴリー違いの機器を Apple などで揃えたときに、最大の効果を発揮しますよね。そのあたりゲンちゃんのこだわりを聞いてみたい。
ゲン : 生活を Apple エコシステムで構築すると「とりあえず標準アプリに入れておけば同期される」という無意識の安心感があります。iPhone でサッとメモしたいときにメインで使ってるわけではないのになぜか標準メモを使ってしまうんですよね。
ショートカットキーの考え方がデバイスごとに統一されるのも大事です。例えば MacOS と iPadOS でメールクライアントアプリを変えてしまうと「アーカイブ」のショートカットが ⌘^A なのか ⌘E なのかで一瞬脳のリソースを食ってしまう。
イズミ : Apple は言っても老舗ですし「とりあえずこれはいるでしょ」というものを用意してくれてますよね。本当にサードパーティのアプリをひとつも入れなくても、ある程度の仕事はできるかもですね。もちろんウェブアプリは使う前提ではあるけども。
みんなの標準アプリ事情
イズミ : ぼくがよく使っている Apple の標準アプリは
Mac、iPhone 共通
Safari
メモ
時計
Mac のみ
プレビュー
QuickTime(画面収録)
辞書
ActivityMonitor
Automator
Terminal
DigitalColorMeter
iPhone のみ
写真
計算機
天気
ショートカット
ボイスメモ
Podcast
この辺りです。みなさんはどう?
ゲン : 自分が MacOS や iOS でゴリゴリに使ってる Apple 標準アプリでいうとこれですね。
メインユース
Safari
メール
カレンダー
写真
ショートカット
ボイスメモ
SF Symbols
Logic
サブ
リマインダー
メモ
マップ
Font Book
ブック
Final Cut
使ってたけどクビ
ミュージック(Apple Music 部分)
イズミ : ゲンちゃんのメインユースに、SF Symbols という知らないアプリがあった。これは Apple が提供している標準アイコンの編集ツールみたいな感じなのか。こんなのあるんだ。
インストール用の dmg がなんかおしゃれさん。
ゲン : SF Symbols は、Apple 製フォント San Fransisco に含まれるアイコンギャラリーですね。ワイヤーフレーム作る時とかに便利すぎるのでおすすめです。実際商用で使えるのは App Store に申請するアプリのみだったはずなので注意が必要ですが。
ノビー : SF Symbols すっごい。使おう。
結局使ってしまう標準メモ
ノビー : みんな使いこなしてる。ぼくはプレビュー・QuickTime・辞書あたりしか使ってないな。
Apple 標準のメモって皆さんどんな感じで使ってます?Apple 標準アプリの中でもあれは、テキスト形式と Apple Pencil での手書きを混在させたり、思想が強い感じがあるので気になる。
イズミ : 僕の場合は、Apple メモは、大きく分けて 2 つの使いかたをしています。
どこでもいつでも投げ込む INBOX として
たまに参照する鍵付きの情報として
「INBOX」としては、やはり手元に iPhone しかない時はメモが一番開きやすい。あとは iOS 標準の各種共有機能から放り込みやすいということもあり、とにかく放り込む先にしてます。このメモたちは定期的に Obsidian なり所定の位置に移動させ整理して消していきます。この手のメモはすぐに埃が溜まりがちなので、月二回くらいは掃除を心がけている。
「鍵付き情報」は例えば、住居や家族まわりの個人情報とか、仕事で参照したい情報とかそういうものにロックをかけておいて、たまにさっと確認するのに重宝しています。
手書きについては、過去何度かトライしたけど、書き味がプレーンすぎてしっくりこないので、ぼくは使ってません。
ゲン : Apple メモは囲い込みの意思が強いので、Apple と心中するつもりじゃないとなかなか使えないですよね。デジタルメモの回でも話しましたが、メイン→サブになりました。
しかし上記の通り無意識の安心感があってサクッと書く分にはかなり良いので、議事録取るときとかに使ってます。手書きも同じで、清書というよりあとから思い返す用に走り書きするときに使っていますね。
あと何度か言っているのが iPad での Kindle×クイックメモはめちゃいいのでおすすめです。気になった箇所をスクショ→クイックメモに貼り付けがデフォルトの導線として用意されているので本メモが簡単に作れます。
ノビー : クイックメモみたいなのはアプリとアプリの間を埋めてくれる、OS 標準ならではの利点ですよね。こういうのが整ってる・考えられてることが OS 自体の価値を上げてる感じありますわ。
標準アプリの価値とは
ゲン : プレビューや QuickTime Player はもちろん使ってます。というか競合となるようなアプリがいない。あと、Finder を拡張することも何度か試しましたが、こここそ標準で使いたい気持ちがあるので利便性を捨ててそのまま使ってますね。
イズミ : Finder もそういえば標準アプリだった。ぼくも昔は Finder を代替するアプリを使っていたけど、タブ機能とかリネーム機能などが OS アップデートにより搭載されたので、もう Finder のままでいいやということで標準にもどった口です。Finder のリネーム機能はミニマムな感じなんだけど、仕事で使う上ではこれで十分だったりするんだよな。意外と知らない人が多いので、これは紹介しておきたい機能。
ゲン : リネーム、昔は Shupapan 使ってました。最高のリネームアプリだった。開発終了しちゃったので Finder でできるようになったのめちゃくちゃありがたかった。
ノビー : Finder のリネーム機能、リネームはいつもコマンドでやってたのでしばらく気づかなかった思い出。
標準アプリのベストプラクティス
ゲン : OS 側で固定されてカスタマイズ不可だけど便利なショートカットがあると標準アプリ使いたい気持ちになります。クイックメモ→メモ だったり、iOS のロックスクリーンの カメラ→写真 みたいな。
イズミ : 標準には是非もっと、ベストな使い方、お手本となる使い方を方向指示してもらいたいよね。WWDCとかのキーノートだけじゃなくて、CM のようなウソっこのベストプラクティスでもなくて、中の人のおすすめの使い方とかを晒して欲しさある。
標準のメリットというか、これはちょっと Mac の場合という話になるけども、Apple の標準アプリや 2nd Party ぽいアプリの場合 AppleScript によってかなりの操作が自動化できるというのがありますよね。
Apple は AppleScript→Automator→ショートカットと歴代、ユーザーによる自動化 DIY に並々ならぬ情熱があるから、その辺りの情熱も手伝って、標準アプリを充実させているのかもしれないですね。
ゲン : AppleScript や Automator は必要最低限しか使っていなかったのですが、ショートカットを多用するようになってからショートカットに対応してるアプリというだけで超ポイント高いです。一軍にしたくなる。OS のメジャーアップデートでもまず標準アプリのショートカット項目が増えてないかをチェックしてます。
イズミ : OS のアップデートで、まずそこをチェックするのはすごいな。逆に AppleScript はメジャーアップデートで動かなくなるやつあるとか聞くけど、ショートカットは絶賛進化中だから、もっと使っていきたい気持ちはありますね。
インストールどうしてますか?
イズミ : これは、標準アプリの範疇からややはずれる話なのだけど、アプリのインストール方法にこだわりありますかね。ぼくは、次の優先順位でインストールするようにしています。
Homebrew にあるか探す
AppStore にあるか探す
手動インストール
まず、前提としてパッケージ管理したほうがアップデートが楽ちんなのと、アンインストールが綺麗にできそうな気がするというのは皆共通の感覚だと思いますが、AppStore よりも Homebrew を優先している理由としては、Homebrew-cask に実はかなりのアプリが登録されているというのがあります。例えば、Raycast はもちろん、前回げんちゃんにおすすめされた Itsycal もあるし、Mos なんかのニッチなアプリもあったりします。なのでできるだけ Homebrew でインストールするように用意しておくと、新しい Mac に乗り換えるときにインストールがすごく楽に行えます。欠点としては、微妙に最新のバージョンがくるタイミングが遅い気がします。
ちょっと前まではできるだけ標準の方がいいかなと思って AppStore を第一優先としていたのですが、とくに無料のアプリなんかは最近ぽつぽつと AppStore から撤退するものが出てきていたりしているので優先順位を入れ替えたという経緯があります。ただし有料のアプリは AppStore にあると支払いの障壁が低いので、できるだけ AppStore を利用したいというのはある。
ゲン : Homebrew からインストールする方法、仕組みがよくわかってなくて基本的に AppStore からインストール、なければ手動インストールにしてます。Homebrew しかないときは仕方なく使ってますが、過去に自分が何をインストールしたかをトラックする方法があるのか分からなくて、他の Mac で同じ環境にしづらいというのがある
イズミ : Homebrew は元々開発ツールとかターミナルで実行するアプリやライブラリを、よしなに依存関係調べて、場合によってはソースから手元でビルドして最適にインストールしてくれるものだと思うのだけど、cask のほうは GUI アプリ用なので単にビルド済みのアプリを OS や Chip に合わせていい感じに管理してくれてると思っている。実態はちょっと違うのかもだけど。
Homebrewで何をインストールしたかを確認する方法は、ターミナルで
brew ls
とすると、一覧が見れますよ。
ゲン : あるんですね。本体さえ無事であれば一応再現性はあるのか。
ノビー : おもしろいな。エンジニアみんなそうかは分からないけど、個人的にはどうしても Homebrew は開発用のライブラリ入れる用のツールという印象が強くて、棲み分けの意味で逆にアプリ入れるのにあんまり使いたくない気持ちが。
手動インストールは、git clone して持ってこれるようなものならバージョンの把握もしやすいしむしろ歓迎かも。
イズミ : Homebrew は職業エンジニアだと、node とか python とかのバージョン固定したいということがあって、気軽に
brew upgrade
できないという問題ですよね。そのあたりはそうだろうなと思う。
プラグイン多いアプリ問題
ゲン : AppStore だとアカウントと紐づいているから完全になくならない安心感があるんですけど、DAW プラグインとかもどこでインストールしたっけ?って自分で覚えなければいけない浮く感じが信頼できないんですよね。
突き詰めると「なくなったらめんどくさい」が標準 App や AppStore を使う気持ちの一つかもしれないです。
ノビー : DAW プラグイン管理できない気持ち悪さすごくわかる。あの業界はなかなか共通管理化がすすまないね。
イズミ : DAW も「標準DAW論」ありますね。ぼくは基本的に Plugin Boutique でしか買わないようにしている。ないやつは買わない。どこで買ったか忘れちゃうのが心配だから。
一方いまは、それすらも嫌だなと思っていて新しい環境には、プラグインは何も入れないということをやっています。ちょっと前までは iZotope だけはインストールしていたのですが、よくよく考えると別に商用のマスタリングをするわけでもないし、これもいらないかなと。
もっと原理主義的にいうと、Ableton Live Suite のライセンス持っているのだけど、本当は Ableton Live Lite だけでやりたいという気持ちがある。レイハラカミ憧れというか、シンプルでミニマルな環境を完全に使いこなした方がクリエイティブになれるのではないかという憧れ。これって DAW だけでなく、プラグインが多いアプリ全般の関心ごとかもですね。VS Code や Vim なんかでも論争がありそう。
「標準アプリ」ということで話してきましたが、結論としては、道具はシンプルであるほうが気持ちよく、制限があった方がクリエイティブになれる。かもしれない。ということで。
では、また次回。