いずみん18歳、ひと夏の思い出

おはようございます、いずみんです。今日は僕がサークルの合宿に行ったときの話をします。

大学1回生の夏のこと、サークルの合宿に岐阜に来ていました。そこで2泊3日、ラフティングやBBQ、ごみ拾いなど行っていました(環境系のサークルなので)。
しかしそんなものはどうでもよく、僕の脳は2日目の晩に行われる肝試しにそのすべてを割いていました。私たちのサークルで行われる肝試しは女子が男子を1人選び、一緒に夜道を回るというものです。
僕は男子校で6年間男まみれの生活を送っていました。こんなイベントに浮足立たないわけがあろうか、いや無い。

というわけで1日目のBBQの時から露骨な得点稼ぎをしていました。必死な男はモテないよ、と言ってやりたいくらいです。まぁ僕にとってはそれがいいと本気で思っていたんでしょう。


そしてその時はやってきました。2日目の晩。男子と女子は部屋を分けられ、それぞれ別々の部屋で待機します。女部屋の方では誰がいいかをどうやら話し合っているらしいです。


そして男部屋はというと、異様な熱気に包まれていました。それもそのはず、男子は30人ほどいましたが、女子は20人もいないのです。そうです。12人余るのです。
3回生の先輩が音頭をとり、ラジオ体操をします。何故かって?女の子をリードするのに準備運動は必要だろ?
それが終わると、アピール大会が始まります。俺は筋トレをしてきたぞ、俺はあの子に勉強教えたことがあるぞ、といった内容です。その時の僕は芋MAX男子だったのでそんなエピソードもなく、女の子にビンタしてもらったことしかアピールできませんでした。
ここで頭のいい方なら気づいたかもしれません。男女部屋別じゃなかったのか、と。そうです、その通りです。このアピールは女子に届いていません。じゃあ何故必要かって?本当になんでだろう。


そして先輩が入ってきました。この先輩はトントン係と言われていて、呼び出し担当のようなものです。みんなが円になって体育座りをして目を瞑り、部屋の電気を消し、皆の後ろを先輩が通り、女子に指名された人の肩をたたき、こっそり出ていく。
この先輩に呼ばれることだけを祈る時間が始まります。みんなが声を出しながら生存確認をします。〇〇いるか、××声出てないぞ、といった雰囲気です。
ふと電気が付きました。すると目の前に座っていた2回生の先輩が消えていました。


荒れに荒れる男子部屋。あらゆる男子の絶叫が聞こえてきました。ただ、今思えばこの時間が一番幸せだったのかもしれません。
消えた先輩と仲の良かった人が、悔しそうにしながら先輩の不祥事を暴露します。なんで(自主規制)してたヤツが選ばれて俺が選ばれへんねん!、と。
でもまだ1人目。まだ20人近くは選ばれます。実は先輩から、「1回生はだいたい選ばれるよ、毎年1人残ったりする人もいるけど」と聞いていたので僕の心は余裕でした。
そうしてまたトントン係の先輩が入ってきます。次に選ばれたのも2回生の先輩でした。


ここで天才大学生たちは分析を始めます。2回連続で2回生が選ばれたということは次も2回生ではないか?ちょっと待て、2人とも化学系だから次は化学系の俺の番だ!といった傾向と対策が練られていました。
そして3番目に選ばれたのは全く関係ない1回生。僕も調子に乗って1回生の巻き返しじゃい!と叫んでたような気もします。
ここから5.6人目くらいまで傾向と対策を練りながら、みんなで理想のデートのシチュエーションを話してました。一滴もお酒飲んでいないのに、飲み会かと思うくらいにははしゃいでました。


そして穴が目立つようになってきたころ、先輩が言います。「ちょっと円を小さくしようか」見渡してみると最初は大勢いたはずの部屋もかなり減り、内心焦っていました。
そこから皆急に元気が無くなり、はしゃぐことも減ってきました。盛り上げ係の先輩が呼ばれ、いじられキャラの同期が消え、天然の先輩が消え、笑いが起きることも減ってきています。
トントン係の先輩も入るたびに気まずそうにしているのがわかります。が、僕は呼ばれません。


何度目かが終わり、トントン係の先輩が言いました。「あと5人だぞ」、と。
ここまでくれば呼ばれていない組の団結力は無限大です。誰が呼ばれてもみんなでそいつの幸せを祈って送り出してやろうと契りを結びました。
そして1人、また1人と呼ばれて行き、最後の1人になっても僕の肩が叩かれることはありませんでした。



僕の夏は終わったのです。



鬱蒼とした気分で待っていると、女の先輩が入って来てこう言いました。


「お風呂場に行け。復活チャンスをやる。」


最後の死力を尽して、僕は走った。僕の頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。
見事1着で到着したが、肝心の選考はここからだった。内容は、12人のうち水中で長いこと呼吸を止めていられた上位6人におかわりのチャンスをやる、といったものだった。
僕は絶望した。ここまで全速力で駆け抜けてきた自分に、もはや肺活量は残されていなかった。

結局僕は11位となり、勝ち残ることはできなかった。
1つ上の男の先輩と一緒に回り、お互いの悪かった部分を言いながら帰ってきた。
その後の飲み会は正直全く覚えていない。ただ、大声で騒ぎ、一緒に回った先輩に慰めていただいたことは覚えているが、多分女子たちとは話せなかったと思う。
それぐらい自暴自棄になっていました。

翌朝、おそらく真っ先に寝た僕は誰よりも早く起きて旅館の外をブラブラしていました。
川のそばの旅館だったので、川のせせらぎを聞きながら酔いをさましていたところを男の先輩が通りかかりました。
そこで僕は慰めてもらいながらも、この悔しさバネに来年頑張ろう、そう誓いました。


淡い淡い、18歳の思い出でした。完。

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