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「鶴」の句に寄せて

黒鶴よ北より来しか何故に

鶴啼けり黒い雨降る紅腐海

黒い雨もう降らすまじ山を焼く

焼野原鶴降り立てり友が逝く

鶴啼きて声なき声に闇沈む

残響か闇夜に浮かぶ凍鶴よ

鶴帰れ北の彼方へ故郷へ

祈るよに平和願し千羽鶴


くろづるよ きたよりきしか なにゆえに
つるなけり くろいあめふる べにふかい
くろいあめ もうふらすまじ やまをやく
やけのはら つるおりたてり ともがいく
つるなきて こえなきこえに やみしずむ
ざんきょうか やみよにうかぶ いでつるよ
つるかえれ きたのかなたへ ふるさとへ
いのるよに へいわねがいし せんばづる

季語|黒鶴、鶴、山を焼く、焼野原、凍鶴、鶴帰る


ロシア歌謡に「鶴」という曲があります。
ある詩人が、1965年に広島の原水爆禁止世界大会に出席して、千羽鶴の話に感銘を受け、故国(旧ソビエト連邦共和国)に帰ってから戦争で亡くなった人々、特に兵士を悼み、彼らが鶴となって飛んでいて、自分もいつかそれに加わるだろうという内容の詩を作り、のちに曲が付けられたそうです。
死んだ兵士や人々の魂が鶴になって飛んでいく鎮魂歌(レクイエム)です。

「腐海(ふかい)」とは、ウクライナ本土とクリミア半島の間に横たわる、アゾフ海の西岸に広がる干潟です。
塩分濃度の濃い場所で繁殖する藻類の影響でピンク色や赤色に染まるため、別名「深紅の腐海」とも呼ばれています。

ロシアによるクリミア併合
(国際的には認められていない、実際は侵略行為)後は、ウクライナとロシア両国の事実上の国境となっています。