ローマ人の領土感と防衛意識
万里の長城と言えば中国ですが、実はイギリスにも長城らしきものがあります。それは大まかに言うと、スコットランドとイングランドの境目あたりにあります。
これはかつてローマ帝国が作ったもので、万里の長城より小型です。
(イラストは万里の長城です。)
今からおよそ2000年前に、ローマ人は今のイングランドに侵入。
そして、先住民族のケルト人を今のスコットランドの地に追い込み、そこに城壁を築いて封鎖したんです。
城壁は紀元122年頃、ハドリアヌス帝の時代に築かれたようです。
もちろんケルト人が南下してくるのを防ぐためですが、自分たちが侵略しておきながら、逆にそこに防壁を築いたというわけです。
まさに攻撃は最大の防御!
当初は西海岸付近から東海岸付近まで続いていたようです。
当初の長さは120キロもあったそうです。
今では寸断されていますが、それでもグラスゴーの南のカーライルという町の郊外に残っています。
私も行ったことがありますが、城壁に登ってみると、丘の起伏に沿って高くなったり低くなったりしながら東の方向にずっと続いています。
東の果ては、遠くにかすんで見えませんでした。
立派な古代遺跡なのに土産物屋もなかったし、あたりは荒涼としており、周囲には何もありません。ただ風がヒューヒューと吹いているだけでした。
周囲に何もなかったので、かえって想像力をかきたてられました。
「ここをローマの兵隊が守っていたのか!」と想像して感動さえ覚えました。
城壁の高さは3-5M程度だったと思います。
梯子をかければ登れそうなレベルですが、騎馬隊はここを越えられません。
もし、城壁が壊されたら、ローマ兵の軍団が防戦のために急行したでしょうから有効だったのだと思います。
この城壁はハドリアヌス帝の築いた城壁なので、英語でハドリアンズウォールと呼ばれています。
スコットランドの地とイングランドの地は、こうして分割されたんですが、これを行なったのがローマ人だったという点に驚きませんか?
だって、ローマがこれを行なった目的は自国領土の防衛のためですよ。
ローマって、何キロ離れているんだよ?と言いたくなりませんか?
ローマを守るためにスコットランドまで行って城壁を築くなんて、距離的に離れすぎているじゃありませんか?
当時は、飛行機も戦車も車もない時代です。
最も早い乗り物だって馬ですからね。
祖国を防衛するには、そこまでエネルギーを使わなければならないのか!
と感じるんです。
今の日本はどうですか?
北方領土はとられっぱなし。竹島もとられっぱなし。尖閣諸島だってロクに守れません。
ローマ人はやり過ぎだけど、日本人は情けなさ過ぎると思う。