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僕が漁師だったときの話(更新を終了しました)

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真鯛の養殖・定置網漁、海の上の仕事風景(※漁師を辞めたため、更新は終了しました)。
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#阿曽浦

春、桜、ヒロメ。

春の海の日常。 桜が所々に咲いている。 野生の桜は日本に十種類。 山桜はそのひとつに過ぎない。 桜は桜でもいろいろあって、 できればちゃんとフルネームで呼びたいのだけれど。 海から集落を眺めている。 ここの地域の沿岸沿いは落葉樹ははえてない。 だから年中景色は大して変わるものじゃない。 けれども毎日少しず緑の色が変化する。 春は鮮やかな緑だ。 山の話のついで。 沿岸部では塩に強い塩生植物しか生き残れない。 風が強くあたる斜面の木々は茶色く塩枯れしている。 マ

漁村の冬終わり、春。

漁村の冬を書き残そう。 来年までみることのできない冬の景色について。 冬鳥たちがいることで漁村は冬めく。 弁天島と海鵜(うみう)の大群。 この景色も、冬。 去年の台風で傷んだ屋根が痛々しく、 そして海の怖さが伝わってくる。 海鵜は違う季節に見かけることもあるけど、 こういう大群は寒い時期だけ。 海鵜と混ざって飛ぶのは、カモメ。 カモメこそ冬鳥。 ここ阿曽浦では9月頃に現れて、3月頃また旅立つ。 カモメがいなくなると、漁村は寂しくなる。 また来年の夏が終わる頃、再

自然は強くて怖いから、偉大だ。

出荷作業の写真はほとんどない。 撮る余裕がないからだ。 養殖の仕事は、忙しいタイミングというのがある。 生き物・自然相手だから、こちらがそのリズムに合わせないといけない。 出荷作業というのは、まさに「忙しい」の象徴。 基本的に僕が写真を撮っているのは、 船での移動時間だったりする。 今回は、出荷作業の合間の休憩時間にパシャリ。 1日のサイクルのなかで忙しいタイミングがある。 それと同じように、 一年のサイクルのなかでは忙しい時期がある。 漁村に来て1年が経つけれ

人間と機械と自然と、雲漏れ日の美しさと。

新年というには月日が流れすぎた。 それを知りつつもあえて今年の豊富を言うなら、 健康第一。 一晩中吐き続ける病気の病み上がりです。 健全な精神は健全な肉体に宿る。 熱が39度を超えたあたりで境地に達して、 「ああこの人生、夢・志に生きた良い思い出だった」 なんてブツブツ言いながら、 もうじぶんには元気がないから ただ平穏に布団にくるまって生涯過ごしたいと思った。 海上安全。 健康祈願。 個人的な振り返りはこれくらいでして。 これは船用の給油タンク。 家と見

漁村で、なくなったものを数える。

新年になってからまた、何日か経った。 あっという間に時間は過ぎる。 かわいそうなくらいに早いものだ。 冬は水に濡れると、冷たい。 手が凍えると作業に支障が出るから、 濡れないために長い手袋を使っている。 完全に身体のサイクルが朝方になった。 21時以降、眠くて仕方がない。 特段やることがないなら、眠気に逆らわずに夢のなかへ。 この前友達が遊びに来てくれたのに、 晩酌に付き合えなかった。 その代わり、朝は早く目が覚める。 もちろん、二度寝の誘惑は尽きない。 僕は

自然のど真ん中で生きている。

いつでもニーズに応えてコンスタントに出荷する。 それが養殖漁業の売りだから、 年末年始もずっと仕事がある。 僕の会社は1日から4日まで休みということになっている。 ただし仕事はあるから、 そのあいだに出勤するとお年玉がもらえる。 仕事始めは、1月2日。 渡鹿野島へ配達。 船でしか行けない場所。 かつての阿曽浦を思わせる。 そういう土地にはやはり、 独特の文化が根づく。 あこや貝。 貝柱だけでなく、貝殻にも価値がある。 貝柱はバターや醤油で和えて食べるか、

年末も淡々と、仕事。漁師の風景。

師走という言葉通り、 年末はなにかと忙しい。 残りはあと3日。 真鯛や伊勢海老。 年末年始の祝い事にもってこい。 魚屋は忙しくなる。 大晦日まで休める日がない。 海の上の仕事も増える。 明日は1日で3000匹の魚を出荷する。 そのための準備で、 魚を取り出しする。 選別で魚をすくうための道具。 真鯛。 シマアジ。 ほかにもマハタ・クロソイ・カンパチなんてのもある。 問屋みたいな役割も担っている。 選別した魚は生簀に入れて、 船にくくって移動させる。 移動

漁村のたこ焼きパーティは、なんとも贅沢だ。

最近、 やたらと鵜が多い。 海に潜って魚を捕らえる姿は凛々しいけど、 真鯛養殖の生け簀のなかに入り込み悪さをするから、 漁師の点滴でもある。 さて、今日はツボ網の設置。 漁船から風景を眺め、進む。 小さな漁船(通称チビ船)に網を積む。 そして漁場へと向かう。 到着したら、  順番に網をおろしていく。 漁法を学ぶと、人間として一段と賢くなる。 魚の習性を利用して、 網のなかに魚が泳いでくるように仕掛ける。 人間の知恵を受け継いで自分で仕掛けた網。 その

海のなかに、植物の種を植えました。

漁業の現場は閉鎖的だ。 あまり世に知られることもない。 とくに都会で暮らしている人なんて、 糸切れほどの縁もないかもしれない。 だから、伝える。 それが僕にできる役割。 日が昇るのが遅い。 なんといってもきょうは冬至。 太陽の光はなかなか姿を現してくれない。 6時半を回れば、 ようやくあたりの風景がみえてくる。 海の上で働く漁師の姿と、 エンジン音をふかせて走る漁船。 僕もその風景の一部になる。 漁船の上。海の上。 自然のなかで働いている。 学生の頃から憧れ