音大への道 その4 番外編
〜前沢文敬先生〜
今まで、僕の知っている大人は、両親、友達の親、学校の先生位でしたが、前沢先生は少し様子が違いました。
一度先生の車に乗せて頂いた時、
「伊澤くん、この車幾らだと思う?」
「分かりません。」
「1万円」
「本当ですか!」
「乗れりゃあ何でもいんだよ車なんて」
「はぁ。」(ちょっと不安に…)
僕の他に数人の女子門下生がいて、
「お前ら、売れるのなんて簡単なんだぞ。」
「水着来てサックスカルテットやりゃいいんだよ。」
「でもガチのクラシックやんなきゃ駄目だぞ。」
「すぐ11PM出れるから」
今では、顔出NG で、水着や、胸を強調したきわどい衣装で、You Tubeに演奏動画を上げている女子は沢山いて、人気を博していますが、30年前の話です。凄い先見の目ですよね。
他にも沢山の衝撃発言ありましたが、ここに記すのは辞めておきます(汗)
初めて目の当たりにするガチミュージシャンが前沢先生でした。
普段はウイットに富んだ、フランクな方でしたが、クラシックサックスの世界では、カリスマとか異端児とか呼ばれていました。演奏も素晴らしかったですが、レッスンも厳しいながら、実に理論的で解りやすいものでした。そして多くの有名プレイヤーを輩出していました。
前沢先生から教えて頂いた奏法、理論は、今の僕の演奏の基礎となり、確実に僕の中に活きています。
2003年にクモ膜下出血により、多くの門下生に惜しまれながら、この世を去りました。
前沢文敬先生へ
今僕は当時の先生の年齢を超えました。でもまだまだです。さらなる高みを目指して頑張ってます。どうか見守っていて下さい。
伊澤隆嗣
クラシックサックスの世界の異端児、カリスマ