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八王子、法律のない街#7
美容院は少々苦手だ
美容師の方は仕事だと分かりきっているからこそ
営業上無理に会話をしているのではという
無用な疑いをしてしまう自分も気恥ずかしいし
何気なく聞かれたことに答えると
だいぶ土足で心に上がりこまれたような
返事が返ってくることもある
高校生の時に
地元で通っていた美容院の担当の方が辞めた
なんでも、新しいお店を開くから
是非直夢くんも切りに来てくれと言うもんだから通い出したのだが
店が変わった途端、態度も徐々に変わったような気がして、なんだか気まずいなーと思っていたら
「別の美容院紹介するよ」
と、ある日言われたのだった
紹介された美容院には一度も連絡していない
初めから愛想がいい人も苦手になった
根っから愛想がいいならいいが
頑張って愛想を良くしていると
だんだんと態度の違いが気になりだし、
その明暗で余計なことを考えてしまう
それだけに
今通っている美容院はだいぶ通いやすい
かれこれ3.4年ほどわざわざ八王子まで出かける
無用な会話をしない人で
それが心地よくて気に入ったが
今ではだいぶ色々話すようになった
韓国アイドルのことを色々教えてくれる
おかげでそこそこ詳しくなった
美容院の悩みが消えたのは
人生的にもかなり助かることの一つだ
11月20日水曜日
リリースツアー2日目、八王子編
ツアー初日から約3週間空いた2日目に
気合いを入れ直す意味も込めて
いつもの美容院に髪を切りに来た
その後、早い時間に予約していて尚且つ
よく冷え込んだ朝だったもんだから
冬服でも見ようかと
全国チェーンの大きい古着屋に
古着を買いに行った
長い夏が続くと、冬が一層好きになる気がする
冬の寂しい感じが
なんだかドラマチックで好きだが
いざ冬らしい寒さになると
それはそれでげんなりする
一通り見て回ったが、目ぼしいものはなかった
朱色のラムレザーのジャケットだけ、少し気になったが、なんとなくやめた
店を出て、襟を立てて街を歩く
こりゃ外にいるわけにもいかないぞと思うほど
面食らう気温だったが
そんなに待ち望んだ冬なのだから
この寒さも楽しんでいこうと
セブンでホットコーヒーを買う
八王子の街中では、路上で喫煙している人が多い
この街は、法律が行き届いていないのか
よくわからないがとても助かる
俺もあやかって路地裏でコーヒーを飲んでタバコを吸った
最近家系ラーメンにハマり出しているから
八王子のバンドマンからこぞって名前があがるラーメンでも食べよう
一度食べた時は駅から遠い印象だったが
そもそも駅から離れた場所にいたから
難なくたどり着けた
知り合いに出くわすかもしれないと思っていたが
案の定WackMonのたいちが先に食べていた
今日の打ち上げ飯を作ってくれるらしい
ありがとう、楽しみだ
家系ラーメンに生のタマネギを乗せるのはいいアイデアだと知った
ラーメンを食べて体もほかほかして
時間もいい頃合いだと気づいて
本日出演する八王子RIPSへ向かう
ちょうどAIRTONICの車が止まっていて
八王子散歩はいい具合にできた
八王子には後輩も先輩も友達もたくさんいる
同じ西東京ライブハウスエリアというのもあって
立川で活動しているAIRTONICとは縁深い土地であるし、なによりベースあんちゃんの地元は八王子高尾だ
あんちゃんは八王子にいる時
少し落ち着いているような、それでいて楽しそうな、全然いつもと変わらないような、そんな感じ
正直あまり意識して考えたことはない
バンドメンバーのホームという、
それだけで特別なのは間違いない
リハーサルを終えて
改めて八王子の街を歩くと
陽が翳りより一層寒さが増していた
買わなかった朱色のラムレザーが頭にちらついたが、買わなかったということは要らなかったということだと言い聞かせた、正解はない、寒い
ライブハウスがオープンして
共演したことあるバンドも、初めて共演するバンドも、新鮮に見ることができた
ロケットボーイズ倉持のギターの音が出なくなって、滝のように汗を流していた
最近仲の良い後輩shokaのライブを見たかったのだが、本番前に俺のギターの弦が突然切れて
急いで交換している間に終わっていた
次に一緒の大阪寺田町が楽しみだ
俺たちのライブも心燃えるものがあった
唄と楽器がガウンガウンとうねる様な爆音で
芯まで音楽に浸かった感覚があった
打ち上げ中に、ドラム一成は誕生日を迎え
サプライズケーキを貰っていた、幸せ者め
一成とは中学1年生から一緒にいるから
今年で16年も一緒にいることになる
2人でずいぶん長い道を歩いてきたようだ
来年はお互い30歳だ
体の健康に気を付ける年頃だろう
どうせそんなことは気にしないだろうけれど
打ち上げでたいちが出してくれた飯を
見た覚えがない
視界の隅にスパゲッティが映っていたことだけ
ほんのり覚えていたが
あんなに楽しみにしていたのに一口も手をつけられないほど遊んだ
案の定ご飯代を徴収できていないと後から連絡があったようだ、これはいけない
どこがで必ず払わなくては
この一日で数えられないほどの八王子のバンドマンやライブハウスマンの友達に会えた
ヨーロービルのロックバンドの脈の太さを羨ましく思う
これからもずっとお世話になるであろう
この街の日記
リリースツアーはまだまだ続く
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