高田馬場、復活の酒#6
---11月2日
翌日3日は
待望のアルバム発売イベントを
控えているというのに
猛烈な酒気を帯び
後部座席で目を覚ました
午前10時30分
助手席でベースのあんちゃんが
座りながら口を開けて眠っている
ついこの間まで夏が残っていた街も
ハッとすると冬の匂いになる
年中載せているブランケットに助けられた
肌寒さを感じた車内から這い出て
なんとか家に辿り着き
風呂も入らずまた眠ったが
再び起きた16時でさえ
昨日の記憶の整理がつかないほどの
絶望的な二日酔いに苛まれていた
---11月1日
兵庫・尼崎のロックバンド
「Brave Back」が
約1年の活動休止を経て
今年9月に復活を果たした
今回は
復活のアルバムを携えてのリリースツアー
高田馬場club phase編への出演のため
早くから集まり高田馬場に降り立った
高田馬場club phaseには
擦っても落ちないさまざまな思い出がある
店長の新井さんに猛烈に飲まされ
何度もphaseの便器でゲロを吐いた
2021年、フルアルバムのリリース初日もこの場所
コロナ禍中にイベントもした
最近出演回数は減ってしまったが
大阪のライブハウスで
新井さんと大暴れしたことも
この先一生笑い合える大事な思い出だ
そして、今回の主役BraveBackもまた
俺たちのバンド人生において
絶対に欠かすことのできないバンド
BraveBackとライブハウスで合流し
昼食を食べていないボーカルトモヤと
上手いと噂のつけ麺を食べた
いつも適当に食べてしまうから
その場所の美味いものを食べられるのは嬉しい
並盛から超大盛まで
値段が変わらないタイプのつけ麺屋であったが
最近運動不足を感じているため中盛にした
トモヤも中盛にしていた
辛党の俺はだいたいどんな飯屋に来ても
赤い商品を選んでしまう
赤ければ上手い、というわけでは決してないわけで
何度も失敗して来たが
今回はかなり当たりの赤いやつだった
トモヤも俺と同じ、赤を選ぶ男
昔トモヤの作った麻婆豆腐を食べて
死にかけたことがある
つけ麺にはなにしろ満足したが
大盛りにしておけばよかったと
少し後悔した、いや、それでいい
トモヤは友達と会うらしく、駅で別れてポツポツ歩いた
店に財布を忘れて走って取りに戻った
BraveBack自体の活動は休止していたが
個人的にメンバー同士で会う機会が何度もあったためか、久しぶりの気持ちはないし
おかえり、という実感もあまりない
定期的に関西や東京で会って、遊ぶ
ガキみたいに遊ぶ
今日も同じだ
飯を食べて、タバコを吸って、酒を飲んで、馬鹿話をする
ただ、今日は久しぶりに音楽がある
その実感を沸々と感じながら
パチンコ屋でトイレをしていた
都内でのライブは、1日が短い
県外に行くことよりも、行動の範囲が狭くなるし
より生活に密着している感じがある
その分発見や気づき、事件だったりが少なくなる気がしなくもない
仕事が前に入っていなければ、なるべく早く集まる方が調子がいい
一日はより濃くて長い方が楽しいではないか
なんにもない日なんてない、
自分で作ろうとするなら
さあ、ライブが始まる
俺たちのライブはどうだったか
そんなものどうもこうもない
心から音楽を鳴らせば
いつもより正直になれる
見てくれた人とエネルギーで繋がり合えば
それ以上にいいライブはない
それが感動だ
この日も確かに感じたエネルギーがあった
皆いい顔をしていた
BraveBackのライブを
大きなステージで見たのは
5月の自主サーキットフェス"開花宣言"ぶりだった
このツアー中、ずっとそんな顔だったんだろうと思う、4人とも滾っていて
ワクワクしていて、嬉しそうだった
彼らのニューアルバム"黎明"の1曲目
「微睡」を最後に演奏していた
少し泣いた、いや、だいぶ泣いた
ひとりぼっちで生きてきたわけじゃない
そう思うと泣けてきた
心配してたわけではないが
意外と寂しかったみたいだ
久しぶりに泣くと
すっと体が軽くなるように
とても心地よかった
打ち上げはもう、ね
楽しかったことと
俺がうるさすぎたことだけ
はっきりと覚えている
フェイズのドリンクカウンターは
広いしコンクリだから声が響いて
大声で話すとさらに酔いが回る
余計に楽しくなって
たくさん喋った気がする
たくさんの人と喋った気がする
phaseのご飯はこの日も美味しかった
最近酒を飲むとサラダしか食べられなくなる
これが年ってやつなのか
BraveBackがいつ帰ったのかもわからない
気がついたら車に押し込まれていて
今日この一日を使い切ったような
そんな気持ちで眠りについた
これから何度だってある夜にしたい
これが当たり前だったらいい
でも当たり前じゃないって
ちゃんとわかっているから
最高のその先を見たくなる
月に手を伸ばせ
たとえ届かなくても!