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Talk the Talk.

「どぉっしても、駄目?」
「分からない子ですね貴方も。仮にヨシとして、隣に監督責任のある大人を座らせて何をどう楽しむつもりなんですか?」
「キャッキャ言いたい。あとは解説?五条先生はエッチな動画の副音声みたいな…」
「腐った教師の言いなりになってはいけません。まさか、いつも二人で?」
「たまにね!」

溌剌と答えるトコじゃない。
こめかみに青筋の立つ感触とはコレかとアンガーマネジメントの要領で息を吐く。
一体どうゆうつもりで?と、脳裏を過ぎる軽率の権化に詰め寄った。

「確かに、君達の年齢なら正しい性処理はあって然るべき。ですが、あくまでパーソナルな行為であって大人が一緒になって、まして担任が手引きするような真似を、…あの野郎ッ」
「俺、告げ口したみたいになんの嫌だよ。」

帰ったら先生と喧嘩せんでね?などと…
いじらしく誰が誰の心配をする必要があるのだ。

『バッカだな悠仁!
七海にバラしちゃ駄目でしょwww』

何処からか下卑た嗤い声がこだまする。

「君の性嗜好を、アノ男は把握しているとゆう事ですか。」
「え?ああ、まぁ…どうだろ。」
「呑気に構えてる場合ですか!どれがイイと教えたんです!さぁ!」

シーツに散乱したカタログを前に、すっかり萎縮した少年は伏し目がちになる。

「怖いよナナミン。」
「情報によれば、君は大きめが好みだとか」
「ヒェ、どっから聴いたの…」
「タッパの話ですか?それとも部位?」

例えば、コレか。
そう言って、目ぼしい女優の横臥するタイトルに指を差し滔々と読み上げる。

「は、恥ずい!!!思ってたのと違う!こんなのボーイズトークじゃない!俺の事情聴取じゃん!もっとお互いの好みとかさぁ、」
「私のですか?」

聞き返すと、頷くより不思議そうな顔が先ず傾き目を瞬いた後で何かに驚愕したように固まった。

「フェアじゃないなら、そうですね参考までに」
「…、ん、やっぱイイや!」
「?」

ついさっきまで、渋る方を説き伏せてまで執着していたのが嘘のように、今はまるで汚らわしいと固辞をする。正直、この手の情緒変化にはついて行けないと疲弊を露わにした。

「つか、ナナミンも観るの?こーゆー」
「十も歳上の男に何を今更。」
「何か、嫌。」
「…君が引き合いに出した話ですよ。」

叱られた子供のような顔をして首を振る。
会話を放棄して枕を抱きに倒れた彼の、はだけるバスローブから伸びた脚先を掴まえた。

「良いですよ。観たいんでしょう?」

どれにしましょうか…と、執拗な絡み方をする。

「ヤダ、もう見ない。」

知りたくない。
貴方の「好み」なんて ———
そう言って耳を塞ぐ、まるで恋人の仕草だ。

「狡いですね。」

試すようなそぶりをする君も
君の秘密に先に触れた男も
許せない。

私は聖人君子ではないのです。
ただの狭量な男だ。

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