ファムファタルの遁走。
アレは拒絶だ。
彼の本能か、或いは宿儺の仕業か…
どちらにせよ「悟られた」のだろう。
分かる様に伝えるつもりは無かったが、性急過ぎる願望を口にした覚えはある。
もう、認めざるを得ない。
まだ制服も脱げない歳の
ほんの子供に私は────
「冷えたでしょう?先にシャワーを…」
学ランを脱ぎかけた手が止まり、入室からずっと逸らされたまま狼狽した視線の先には一つしかないベッドがあった。
「虎杖くん。」
「は、はひ!」
「落ち着いて下さい。と、言ってもこのシチュエーションでは無理もありませんが、幸い君は男子で…失礼、コレは昨今失言になるんでした。」
「あはは、そだねー」
「…私と、こんな場所に籠るのは怖いですか?」
「あ!違う、俺が勝手に!き、緊張してんの。
ナナミンはむしろ、巻き込まれ事故じゃん?」
「まぁ、そうとも言えますが」
「酷デェ。少しは否定してくれても…どうせ俺はムチムチJKじゃありませんよ。何で野郎とって思ってる?あ、ねぇ!聞いてます?ちょ、笑ってんのナナミン!」
先に入りますよ。と言ってバスルームを閉めた。そうでもしなければまた余計な事を口走りそうで怖い。
「…君で良かった。」
所謂、ラッキーハプニングです。
などと言って聞かせて、再び彼方へ飛び去られても困る。
前の話(虎視点)↓