「踏ん張って生きていこう」
草の根プロジェクトのメンバーでもある大学院生の中村くんの翻訳が『世界』4月号に載っている。
今回は翻訳だけでなく彼自身の解説も載っている。
力強いその解説は、普段の中村くんとギャップがあって新鮮だ。
少し前に「ちょっと元気がない」と言う中村くんと一緒にお昼ご飯を食べに行った。
中華料理屋さんで熱々のシュウマイとか焼きそばとか、焼飯を食べた。
湯気を立てている料理を食べながら私は中村くんに向かって話しかけていた。
「中村くんにとって人生はまだまだとても長いやろうけど、私だってまだそれなりに長い人生が控えていると思う。私の場合はこれから頭も体も弱ってくる。目もしょぼついてくるし、頭も回らんくなる。この先、世の中は想像を超えて悪くなると思ったほうがいいかもしれん。弱ってくる自分を抱えてそんな世の中を生きていかなあかんけど、でもなんとか踏ん張って生きていこうと思う。中村くん、踏ん張って生きていこう」
言った直後に「あれ私、なんか変なこと言ったなあ」と感じた。
こうやって書いてみるとますます変だ。
かなり恥ずかしくもある。
だけど、どこかから言葉がやってきて口をついて出たみたいな風で、ずーっと今もそんな感覚は続いている。
中村くんの書いたものを読むと、彼の冷静さと、先を見通す力と、それ故の絶望とが、ないまぜになって迫ってきて言葉が見つからなくなってしまう。
そんな中村くんに言った言葉が「踏ん張って生きていこう」とは、どういうこっちゃ。
だけど、忘れられないのはなんだろう。
『世界』4月号、読み応えあります。
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