ガゼッタ・デロ・オワライーノ
note、人によっては箇条書きで思いついたことをとにかく書いていくスタイルの人もいるようだけど、今のところ文章で書いていくことに不自由はないので当面これでいこうと思う。たぶん潜在的村上主義者(ハルキスト、というとニワカと一緒くたにされてるような気がするし、何より本人がいい顔をしないので)だからかもしれない。射精とか好きだし。いやてか射精はみんな好きだろ。緊張と緩和だからあれは。
それと大学時代、スッカスカなレポートをいかに嵩ませて文字数を稼ぐかに打ち込んでいたからっていうのもある。あるいはそうかもしれない。箇条書きになったら「あ、書くのしんどいんだろうな」って思ってもらえばいい。
さてキングオブコント。
10月のこの前の3連休は単独ライブに行ったりなかなか充実していたんですけど、キングオブコントもめちゃくちゃよかった。歴代最高とは軽々しくは言えないけど、かなり盛り上がった年なんじゃないでしょうか。
よく審査員気取りで点数までつけるニワカがいるけど、おれぐらいのゆとり世代ともなると、こういうので点数をつけることの痛々しさはわかってるから。みんなで一緒にゴールしよ、主役の桃太郎が18人いてもいいじゃん。
①クロコップ
過去最高のトップバッターであり、今大会が歴代最高得点となった影の立役者。クロコップのおかげでいい意味で採点にインフレが起きた。『遊戯王』をオマージュしたネタだったけど、知らない人でもきちんと楽しめるような言葉選びと構成だった。とくにバトルのクライマックスで使ったカードの名前が変に捻らず『俺も』という雑さが最高。「バカバカしいことを真剣にやる」というのはベンチャーのチャラチャラした経営者とかが偉そうにいうと本当にカスだけど、芸人にとってはそれこそが原点であり、そういう意味ではクロコップのネタは本当にバカバカしくて面白かった。
一方で、「面白い」の要素が元ネタの『遊戯王』に立脚したものでもあるので、そこはある種ドーピング的でもあったと思う。
≪追記≫
これ書いていて思ったけど、順番通りに書こうとするとどうしても1番手は置きにいった感想になってしまい、後半になるにつれ筆が乗っていくということを身をもって体感したので、やっぱり審査員も大変なんだろうな。
②ネルソンズ
大枠は「花嫁を奪いにくる元恋人」というよくある設定であったにもかかわらず、「こういうのって普通教会でやるよな…」という疑問をちゃんとツッコミで回収していたところがよかった。普通に二次会でやるなよ。ネルソンズといえば和田まんじゅうの個性的なキャラがコントの軸と思われがちだが、岸のいったん行こうとする演技も自然で面白く、とてもいい味を出していた。それからトリオの、コンビにはない最大の武器というか良いところというのはまずボケがいて、そしてツッコミがいるときの「3人め」がどちらに転ぶかわからない展開の読めなさがある部分だと個人的に思っていて、そういうトリックスター的役割を岸がしっかりこなしていたのがよかった。ここで岸を褒めておくと”通”ぶれる(追記:このあと本当に岸が座王優勝してて笑った)。
個人的には「バスケのスタメン発表」のネタが好きで、あとは和田まんじゅうの「バカだから…」も大好きなので、和田まんじゅうがちょっと常識人すぎた点で少しパンチが足りないように感じた。
③かが屋
「暗転」が俎上に載せられた今大会で、くどくなく1つの物語の1つの場面を切り取りきった設定のコントだった。「賀谷の演じたキャラ」が演じたキャラはめちゃくちゃくどかったけど。審査員の誰かも言っていた通り、2人が席を外す回数も必要最小限に収めていたところが総合的なレベルの高さを物語っていたと思う。トリオに比べたコンビの武器としては、「第三者」を自由に設定できる(そのぶん演技力は求められるけど)部分と考えているんだけど、その点では店のマスターをうまく使っていた。かが屋のネタは起伏があんまりないんだけど、やっぱり賞レースでは不利。
④いぬ
こんなネタを地上波でやるな。
⑤ロングコートダディ
ずっと推してるコンビでオールザッツも優勝して満を持して、という感じだったが結果としては残念だった。芸風として淡々と進むコントなのでなかなか後半に不気味に控えていた火力の高さで勝負するコンビに勝てなかった面はある。これは本当にM-1も含め、賞レースのどうしても改善してほしい部分である。とはいえ、強烈なキャラクターも奇抜な設定もワードの強さも抑えながら「空気感」で笑わせる技術はかなりレベルが高い。掴みが全ネタで1番面白かったのは文句なくロングコートダディ、兎のウザいんだけどだんだんクセになってくるキャラと、キョドキョド困惑しながらツッコむ堂前の対比を楽しむコンビ。
また、彼らの色んなネタは見ているつもりだけど、中盤がどうしてもマンネリになり気味なので、「転」の部分でドラスティックに展開するネタがあれば100%優勝できると思う。てかそれでいえば「ママ」やってたら優勝できてただろ。
余談だけど、ネタ終わりのコメントもコントの設定そのまま継続してたのが小ネタ的でよかった。あと「金髪だから印象に残りやすい」って何?
⑥や団
いい意味で全グループ中最も期待を裏切られたトリオだった。あんまり印象のない芸人だったのでフラットな気持ちで観ていて、冒頭のようなテンションの高い、コミカルな芸風で展開していくのかなと思っていたら中盤からシリアスな雰囲気になり、またコミカルに戻っていくというバランス能力に優れたネタでとても面白かった。ロングサイズ伊藤がはけてから再登場したときの空気の変わり方は、展開の予想はついていても見事だったと思う。ドッキリを仕掛けた張本人の中嶋の異常性もコミカルとシリアスを行ったり来たりする、要は本間キッドとロングサイズ伊藤との間の橋渡し役をしていたように感じられてとてもよかった。
あとはもう完全に好みの問題になってくるけど、ツッコミがわざとらしい、かつ騒がしいネタがあまり好きではないのでそこは気になった。コミカルさ、コテコテ感を出すならGAG福井ぐらいがちょうどいいし、騒がしくツッコむなら東京03飯塚ぐらいの技術がほしかったな。
⑦コットン
今大会の全ネタの中で1番いいなあと思った。1番よかったというのはお笑い的意味での「コント」ネタの原点のひとつであるように感じられたから。具体的にいうと、キングオブコントのような短い時間の中でのコントは、いわば短編小説の一場面の起承転結を切り取ってほしい、というのがおれのコントに対する考え方で、それに1番近かったため本当に最高だった。こういうネタがもっと増えてほしい。最近のコントネタはメリハリをつけるためだと思うけれどもBGMを誇張して使用するきらいがあるけれど、このネタはそれに頼らなかった。また、「ない職業」をさもあるかのように見せる設定もコントの持つ自由さだと思うけれど、それも効いていた。ストーリーも、オチ間際の「転」につぐ「転」、もっとその先を見てみたいと思わせる余韻があり、すべてが神がかっていた。
⑧ビスケットブラザーズ
イロモノのキャラが一点突破するように思わせておきながら、実は1番面白いのは言葉でのかけ合いというたいへん玄人好みのネタは1位通過も納得の出来だった。元々ビスケットブラザーズって2019年のように完全に独自の世界があるコンビという認識だったので、むしろ寄せてきたなという印象を受けた。しかしそれが功を奏し、シンプルに設定でも面白く、かけ合いでも面白いというアウフヘーベンに成功していた。ヤバいキャラが「奨学金」とかのフレーズでどんどんまとも側に寄ってくる感じ、まともな立ち位置だったきんが協力しはじめて徐々に境界が曖昧になっていく感じがサイケデリックで本当に心地よかった。あとは「小さくなったオレが、キミの細胞の代わりをしてると思ってもらっていい」が全ネタの中で1番好きなフレーズかも。嫌すぎるだろ。
ひとつあげるなら魔法少女好きとしては2人とも「キラキラリーン☆」がちょっと棒読みっぽかったのが残念。やっぱ疲れるのかな。ガタイでかいし。
⑨ニッポンの社長
先にも述べたけど、コントはひとつの場面における起承転結を切り取ったものであってほしいという、審査員でいえばかまいたち山内に近い価値観なので、1ネタでゴリゴリ押してくコンビが好きでないにもかかわらずめちゃくちゃ矛盾したことを言いますが、ニッポンの社長かなり面白かった。というのも、たしかにニッポンの社長初見ではかなり嫌いではあったんだけど、あまりにもゴリゴリ来られすぎて完全にこちらが根負けしてしまったから。でもそういう恋もあるよね。たとえば去年のバッティングセンターのネタはゴリ押してゴリ押してゴリ押して、それによって最後のホームランを打つオチが活きていて今でも鮮明に思い出せるぐらい面白かったんだけど、今回についていえば芸風は変わらずともオチがそこまで印象的ではなかった点と、ケツの顔芸に頼りすぎてた点と、言われている暗転によって「物語」の連続性が途切れてしまっていた点が残念だったかなと思う。ダイジェスト版を見せられていたような感じ。ただ、ネタ終わりのコメントでの辻の切り返しは今大会1のコメントだった。あれはすごかった。
⑩最高の人間
狂気しかないネタというのは大好物なのでめちゃくちゃゲラゲラ笑っちゃった、ていうか吉住と岡野陽一が組んで面白くならない理由がない。最近の人力舎はヤバい。
コント、というかお笑いネタは「第三者」をどう使うかもネタに幅というか厚みというか、z軸的奥行きを持たせるひとつの技術であると思っていて、たとえば伝説の2019年M-1ファイナルステージでいうとかまいたちは観客を、ぺこぱは漫才の「ツッコミ」そのものを、ミルクボーイはおかんをそれぞれ「第三者」としてどれも奥行きのあるネタを繰り広げていたと考えているんだけど、そういう意味では、岡野も吉住も序盤からこちらに語りかけながら話が進んでいくという展開で、観客側は「第三者」として否応なくこの2人の狂気の世界の当事者とされてしまう点がここでいう奥行きであって、もう本当に最悪すぎて最高だった。
ちなみに審査員が言っていた「緊張」とかはわからなかったけど、たしかに吉住の狂気に岡野の狂気が押し負けていた感じはあった。こちらは風船に鶏肉をくくりつけて飛ばす岡野陽一を知っているのだから、マスカット食べるシーンはもっとヤバくできたはず。あと本当に脳に必要のない部位とかないから。
■ファイナルステージ
ファイナルにあれこれ言うのは野暮なので簡単にまとめると、や団は1本めからツッコミを入れ替えたが、個人的にはこちらの方が好み。雨なのに喉渇くのはたしかに意味がわからない。終盤からオチがちょっと弱かった印象ではあった。自分の中では着ぐるみの中の人が凶暴という裏切りはそこまで裏切りでもないし面白ポイントではなかった。展開読めながらの面白さがや団の魅力だと思うので、そこが魅せきれなかったと思う。
コットンは1本めに比べて失速した感じがある。ロングコートダディ堂前が開催前の座談会みたいなやつでプロレス的に「コットンは女ウケを狙ったネタしか書かない」と言っていたが、なんとなくわかるような気がする2本めだった。最初のごく自然にタバコを吸い出す演技の面白さを最後まで越えられなかった。
ビスケットブラザーズは言うことなし。コントだからこそできる設定をふんだんに使っていた。全ネタで1番面白かった。惜しむらくはコットンが1本めに女性キャラ側がウィッグを脱ぐという行為をしてしまったため、そこがカブってしまった(ウィッグだけに)のは不幸だった。しかし3組中では文句なしのダントツ。めちゃくちゃ面白かった。「ダイスケが来るよ」「腹割って話そうや」などのフレーズが短いながらも効果的に観てる側に刺さりまくった。納得の優勝。
個人的に、今年はロングコートダディ単推しだったけどそれ以外はけっこうフラットな目線で観られた。あんまり嫌なメンツもいなかったしね。そして去年の空気階段の優勝が全体に影響したのか、全体的にヤバめなネタが多くてよかった。
次はM-1、ワールドカップの決勝も同日にあるはずだし楽しみすぎる。お笑いのある世界に生まれてよかった。人生って最高だな。
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