スイハンジャーの作者がIH炊飯器を買った日
それは先週末のこと。やけに喉が渇く夏日だった。
いつものように土鍋でご飯を3合炊き、檜のおひつに詰めて余分な水分を取るためにエアコンも扇風機も付けない居間のテーブルに置いて3時間外出し、
帰宅して「さあ、ご飯を冷凍保存パックに詰めるか」とおひつの蓋を開けた所─
…何だか、ほんのりとねまっている(熊本弁で腐っている、という意味)臭いがする。
そのまま食べたら腹を壊してしまうだろうか?いいや、せっかく3合も米を炊いたのだからとにかく今はご飯茶碗一杯分だけ残して全て冷凍して、
ねまる?orねまってない?飯は…
チャーハンにしてお昼ご飯にしてしまおう!とたまたま冷蔵庫にあった卵とレタスとカニカマと顆粒の中華味の素をごま油を引いたフライパンに一緒に炒めて、
即席卵カニカマチャーハンにして胃の中に入れてしまいましたけど、お腹は大丈夫でした。
残りの冷凍ご飯もレンチンで解凍後、雑炊だのドライカレーだのとにかくも一度火を通してねまったご飯食中毒の元のバチルス菌君たちに、
私の不手際で君たちを醸《かも》してしまったかもしれない。けれど、
悪いね、これも私の健康のためだ。火あぶりになってもらうよ…
と心で語りかけながら熱したフライパンで木べらで押し付け、或いは濃縮白だしと共に釜茹でならぬ鍋茹でにしたその日、
ああ、もう夏が来たんだな…と季節の移り変わりを実感し、
よし!炊飯器を買おう!と決意したのである。
某大手通販サイトの大感謝デーで千円オフクーポンを使ってかねてより狙っていた5.5合炊きのIH炊飯器に相場の底値でポチし、
かまどで炊いたようなご飯が味わえる。というキャッチフレーズで有名な虎印の炊飯器が届いたのは3日後。
早速炊こう。とは焦らずまずは使用説明書を暗記するまで読み込み、
やってはいけない三箇条
フッ素コーティングを剥がしてしまうので釜で米をといではいけません。
蒸気口の詰まりの原因になるのでアマランサスなどの小さすぎる穀類を入れて炊いてはいけません。
でんぷん質が堆積するので炊飯後、釜、内蓋、軽量カップを雑に洗ってはいけません。
を念頭に置いて冷凍ご飯もあと一膳となった昨日、初めてこの時のために買っておいた無洗米2合を釜に入れ、目盛りの分まで水を注ぎ、彼(炊飯器のことな)の本気が見たかったので極うまコース58分を選択して炊飯ボタンをポチッとな。
果たして58分後にピーッ、と炊き上がりのお知らせが鳴り、蓋を開けてみると…
おお、なんともちぴかつやつやなんだ!美味しいご飯の印であるカニ穴まで開いている。
どれどれ一口、とご飯茶碗に三分の一くらいの白く輝くご飯に向かって、
おらの糧になってくれてありがとうごぜえますだ。と一礼してからお箸で運んだ一口ぶんをぱくり、と口中に入れた。
甘い!ベタベタしてない!一粒一粒がしっかり主張している!
これが最新式の炊飯器で炊いたお米の本気かあぁっ!
と十数年前に和解したグルメ漫画の親子か新味に出会ったら過剰にリアクションする味エンペラーの如くテンションダダ上がりになったのは、
全て、夏の仕業なのさ…
今年の夏の目標、
熱中症にならず食中毒にならず、
生き延びる。
な作者の近況報告なのでした。