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電波戦隊スイハンジャー#222 謹賀新年ウカ満悦

プラトンの嘆き、英雄と賢者2

謹賀新年ウカ満悦

BGM、宮城道雄「春の海」

戦隊司令官女神ウカノミタマより新年のご挨拶

「皆様、新年あけましておめでとう御座います。昨年はチュートリアル、サキュパス、京の怨霊、ヒュードラー、蔡福明。と強敵を相手に闘ってきた七人の若者には休んでいただき、此度はわたくし豊穣神ウカノミタマエピソードで幕を明けます。今年も宜しくお願いいたします」

2014年元旦 宇迦之御魂神

東京オリンピックで借金返済だのトラディショナルジャパン政策だの海外観光客から落ちる金子で店舗拡大だの、勘違いして浮かれまくっていた2014年の元旦の真夜中の事であった。

お屠蘇と初詣の疲れとお雑煮による胃もたれを抱えたままスイハンジャーと呼ばれる七人の青年たちはそれぞれの実家で床につき、熟睡していると思ったら広い和室の部屋に自分たちは強制転送されていた。

和蝋燭に照らされた部屋の奥にある御幣と御鏡を見て

ここは何処か歴史ある神社の本殿なのかも…

と思って眠気が取れた目を凝らして薄暗い室内を見ると、中には半透明な神職達が正座したままお重を掲げ、御幣の前で白い和服で身を固めて彼らを睥睨するのはまさしく我らが気ままな司令官ウカノミタマ神。

さらに彼女の右背後には体長2メートル越えの九尾の狐、葛葉が神職たちが連れてきたのであろう眷属の白狐たちに睨みを利かせているではないか。

「東から順に北海道◯◯稲荷神社」とウカノミタマの眷属の白狐が化けた巫女姿の少女の呼び出しに応じて神官がお重の蓋を開け、

「今年のルイベは近年で最高の出来でございます」と述べるとウカは右手の箸で冷凍鮭のイクラ漬けであるルイベを一口食し、

「美味し!んもう、ウカ満悦〜」としばし口中の美味に陶然とした顔になったあと急に表情を厳しくし、

「あんたんとこの北西の祠に新興宗教◯◯会が妙な石埋めようとしてるで、即防犯カメラ付けさせてやめさせい」

と言われた北海道の神主、お重を献上台に捧げた後でぴん!と背筋を伸ばし、

「今年も託宣ありがとうございました!」

と拝跪し、そのまま後退りして元の位置に戻る。

彼ら神職たちは各都道府県を代表する稲荷社の宮司の先祖たちで、毎年元旦にここ伏見稲荷神社の本殿に集まり地方の特産品を献上する代わりに未然に難事を防ぐ託宣をウカから受け取っているのだ。

とコシヒカリレッド魚沼隆文の肩に乗った身長13.5センチのスクナビコナ族の長、スミノエノスクナビコナこと松五郎の説明で状況を受け入れたがその光景を隆文は「まるで占い師伏見の母だべ」と評し、

きららホワイトこと女子大生小岩井きららは「ってゆーか、姐さんに上納金納める反社の組長?」とも評し、

ピンクバタフライこと日舞喬橘流時期家元紺野蓮太郎は、

「若い頃のお母ちゃまがやってた任侠ものの姐さんそのままなんですけど…」
と女優である母、四宮蓮花の出世作「西国莫連女さいごくばんれんおんな」の襲名式のワンシーンを思い出していた。

やがて神主全員への託宣を終えると、

「もう帰ってええで、今年もしっかりおきばりやす」

というウカの合図と共に宮司たちは己が子孫の社へと飛び立ち、防寒のために寝巻の上に半纏を着せられた戦隊たちに「明けましておめでとう」と微笑みながら懐紙にくるんだ丸餅を渡した。

「え…これがお年玉?」

とがっかりするヒノヒカリイエローこと農水官僚都城琢磨に向かって七城米グリーンこと寺の跡継ぎ兼教師の七城正嗣が「しっかり平安時代からの元ネタで御年魂をいただくなんて本気でいい事起こりそうですよ」と本来はお餅がお年玉であり、それを豊穣神本人から頂くことの有り難さを端的に説明した。

「実は…年末既にいい事あったんですけど」

と挙手した二人はサニシキブルーこと国内トップの清涼飲料水メーカー勝沼酒造の社長子息の勝沼悟と、シルバーエンゼルこと外科医野上聡介。

「妹がアイスワインで有名なドイツのワイナリーとの提携決めて来ました」と悟。

「俺のお誕生会の二日後の28日、姉のおめでたが判明しました。8月に生まれる予定です」

おお〜っと仲間五人with松五郎の拍手で悟と聡介はいやあ、と照れ、戦隊を代表して隆文が

「おらは来月子が生まれるから安産祈願だべな。このお餅、神棚に飾っておくんだか?」

と「本来の御年魂」の扱い方を尋ねると、

「起きたら朝一番にお雑煮に入れて食べてね。新たなる敵との戦いに備えるエネルギーチャージするから」

とお正月気分から一気にえげつなき戦いを強いられた戦隊メンバーだった事を自覚させられた。

「その代わり素敵なギフトあげるから」

とウカがウインクした途端、七人はそれぞれの実家の寝床で朝7時にぱっちりすっきり目覚めた。

夜中2時に強制転送で中途覚醒した事を忘れるほどそれは素晴らしい目覚めだった。

以上の出来事がウカノミタマのお年玉のまだまだ序の口の効果であったことを七人は思い知らされる事になる。

後記
「ウカ、満悦〜」は「ヒデキ、感激〜」へのオマージュ。

























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