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マツロユフミチ...…服織法 カムナガラノミチ 13 【直観物理と相似象 その 31】
マツロ ユフミチ...…服織法
ここでは、服織の技法(マツロ ユフミチ)を対象とします。
これは、カタカムナの上古代人が何を着ていたのかについて、かなり詳細の情報が得られる貴重な資料となっています。というのは、通常、このような古い時代の文化の一旦について詳細に書き記した文献は、他に残っていないからです。
例えば、縄文時代については、文字が残っていないというのが一般の定説で、服飾についてはほとんど正確な様子はわかっていません。しかし、一昔前によく言われたように身に簡単な毛皮をまとっていただけだ、などというのは、現代人が、一方的独断的な想像によって縄文人は野蛮人だったと決めつけた結果に過ぎないのです。最近になって発見された縄文時代の土偶の紋様や繊維やアクセサリーの断片等から、縄文の人々は、着飾ることにもっと熱心だったのではないかといわれるようになっています。
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北海道ホームページより
さて、それでは、縄文人よりもさらに古い時代の、カタカムナ人達の服飾はどうだったのでしょうか? 実は、カムナガラノミチの記述によれば、以下に記すような、更に高度の服飾文化があったのです。
時代が古すぎて、もちろん出土品などはなく、唯一現存するカタカムナ文献による記述だけに頼らねばならないので、細部については想像するしかありませんが、カムナガラノミチによれば、カタカムナ人が服飾技術においても、自然と共存しながら、如何に合理的な見識を持っていたかが窺えるのです。
第89句 カヤ アヤメ(植物繊維)
カムナガラ
ヒノキアマカハ ツラネハギ
ウツチヤニカキ マスジクリ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、檜のアマカハ(形成層皮)を、長く連続させて剥ぎ取り(ツラネ ハギ)、アマカハの内部に含まれた(ウツチは内にこもる気持)、ヤニを掻き落として(ヤニカキ)、真直ぐな筋(繊維)を繰り集める(マスジ クリ)。それは、草葉の繊維網の仕組のカヤアヤメ(草綾理)に合った服織(マツロ ユフ)の技法である。」
<カヤ アヤメ>
植物の、導管の内部に送られてくる養分を含む液体は、外には滲出できても、外部から導管内には浸水することはできないようになっています。「カヤ アヤメ」は、そのような膜性繊維のことです。従って「植物繊維」を使って服地を織れば、身体からの蒸気や汗を排出することが容易であり、しかも外からの水分の侵入は防ぐことができるという、自然の生理作用に適った性質を利用することができます。カタカムナ人はこの点のサトリを持っていたようです。
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<マツロ>とは、「まつろふもの」のことです。また、コロモ(衣)というのは、マツロの、以前の古い和語なのです。
<ユフ>とは由布、すなわち、布地のことであり、<ユフ ミチ>とは、網み織りする方法の意です。
第90句 ナガタラシ(麻糸の分子の軸結合強化)
カムナガラ
アシアサクキミ ヤリサラシ
タグリヨリカケ ナガタラシ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、アシのように丈が高く伸びた麻のクキミ(茎身)をヤリサラシ(流水酒、すなわち、茎身を流水にて洗い繊維を取る処理法)したものを、手もみしながら(タグリ)縒りを掛け(ヨリカケ)、それを長く逆吊りして(ナガタラシ)乾燥させる。それは、カヤ アヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<アシ>は、葦のことですが、ここでは、「葦のように縦方向に丈高く直線的に伸びる様子」を形容しています。
<ナガ タラシ>とは、繊維の束を逆さに吊って、重力利用による分子の軸結合(縦の結合)を強める乾燥法であり、その方法で採った繊維をナガタラシ、またはタラシモノと言います。現在の服飾で言うベルトの「垂らし」のことではありません。現在でもそうですが、生の繊維を横に並べておけば、乾燥して切れやすくなるために、ナガタラシ(長垂し)をします。そうめん等の場合も同様です。
第91句 ニギナメシ
(荷重圧による繊維の絡みつき強化と柔軟性)
カムナガラ
ヤソスジタラシ ネリツムギ
チクラオシオキ ニギナメシ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、いろいろ長さの異なる麻の繊維(ヤソスジ)のタラシモノを、練りながら糸に結び(ネリ ツムギ)、その糸をチクラ(重しを掛けて置く場所)にて、オシオキ(荷重を加えること)をして、繊維の柔軟性を出させるニギナメシ(和滑)をする。それは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<チクラ オシオキ>とは、麻糸の束に荷重圧を加えて保存することであり、これによって、繊維素の絡み付きが強固になると共に、柔軟性が出てくるのではないかと考えられるのです。
第92句 カジキケチ(織り目の整頓)
カムナガラ
ツムギイトスジ キザミヒユ
アサコユクハリ カジキウチ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、以上のようにして紡いだ麻糸を、タテヨコを段々に(キサミ)編織(ユヒ)として、アサコ ユフバリ(麻子由布張)を作り、そのユフ(由布、すなわち布地)に、カジキウチ(梶木打、すなわち細い平板にて表面を打つこと)をする。それは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<ユフ>(由布)にカジキウチをすることは、布地に軽い微振動を与えて、織り目の整頓を図る方法と考えられます。
第93句 ククハナ(綿布)
カムナガラ
ククハナハタケ ワタツムギ
ヒナタカゲホシ カタミユヒ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、ククハナ(白い色)のハタケワタ(白い花が、ハダケ開いて、絡み合い、入り曲り毛のワダカマル感じが、綿の名になったのであろう)を紬いで、それを、日向乾しと蔭乾し(ヒナタ カゲホシ)とを行って、固目(カタミ)に編織りする(カタミ ユヒ)。それは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<ヒナタ カゲホシ>とは、綿糸の絡み付きを強くする手段であり、糸を丈夫にするものです。
<カタミ ユヒ>とは、綿布の予備的防縮工程です。カタミ ユヒにしなければ、綿布は局所的に縮み、ユガミの多い布になってしまうのです。
第94句 シタミケシ(下着用木綿)
カムナガラ
カタミフトユヒ モモテウチ
ヤワシシラタヘ シタミケシ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、カタミ(固味)に縫った綿布(フトユヒ)を、何度も手で打って(モモテウチ)、やわらかく(ヤワシ)手ざわりを良くしたもの(シラタヘ)は、下着用(シタミ)のケシ(衣類)にする。そのことは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<モモテ ウチ>とは、布面の縦横の偏向した引合い(ヨリヒキ)を均等に平衡させるための手段として、綿布を手で何度も打つことです。打つことよって、表面張力の平衡状態を促進させる効果があります。その結果、ヌノアジ(布味)が柔らかく(ヤワシ)手触りの良い(白妙の)綿布になるのです。そして、下着(シタミケシ)に適した材質になるのです。
第95句 キシブヌリ サナラウチ コワリハリ
カムナガラ
コユフアナユフ キシブヌリ
サナラヤソウチ コワリハシ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリであるが、コユフ(木の皮のアマカハのマスジを織った布地)や、アサユフ(麻を織った由布)等に、キシブ(木渋、すなわちタンニン液)を塗り、ササラ(竹や細割渇した道具)で、いく度も押打(ヤソウチ)をする。そしてそのユフ(布地)に、コワリハリ(簇張り、すなわち、今のシンシ張りのようなもの)をする。そのことは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<キシブ ヌリ>とは、布地の耐久性を増す手段の一つです。
<コワリ ハリ>は、布地の防縮を目的としたもので、楢崎皐月の推測によれば、竹の先を尖らせたものを使ったと思われます。
<ササラ ヤリウチ>とは、暖かい電氣絶縁体(竹のササラ)で布地を打つ方法であり、これを行うと、染め付きが良くなると言われています。
▶楢崎皐月によれば、染色においては、色素と布糸との電氣親和力が必要であり、その為、布を打つ道具には、導電性のものを使っていないということです。もし針金材のような導電材を使って打つとすると、電子密度が減少して、染め斑(ムラ)が多く出てしまいます。現在の染色でも、アルカリ(OH基)の電氣(-)と酸(H基)の電氣(+)をを中和して、電氣的に安定させるために、塩や酢酸を使って仕上げをしています。
第96句 ウデナヌヒ ツヅリヌヒ
カムナガラ
カムリキソデキ ウデナヌヒ
ハカマタレコミ ツヅリヌヒ
マツロユフミチ カヤアヤメ
概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、カムリキ(冠着)や、ソデキ(袖のあるもの、すなわち上着)は、型台(ウデナ)に密着させて縫い、ハカマ、タレコミ(ズボン様のものや、前後に垂らすサガリ着、すなわち前掛けのようなもの)は、ツグリヌヒ(指子縫い)をする。それは、カヤアヤメ(草綾理)に合った服織の技法(マツロ ユフミチ)である。
<ウデナヌヒ>とは、型に馴れ染ませた、着崩れしない縫い方です。
<ツヅリ ヌヒ>は、日本伝統のサシコ縫いのことで、布地の補強のため、布の表、裏を貫いて指縫いする縫い方です。
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▶冠着、袴、垂れ込み等がどのようなものであったかについては、絵や絵画が残っていないので不明ですが、これだけの文化を持ったカタカムナ人ですから、かなり質の高いものだっただろうと推測されます。すべてに「天然のナリ」を尊重した彼らには、当然ながら、鼻や耳に穴を開けるなどして身体を傷つけて身を飾るような、未開人的な風習はなかったものと考えられています。
▶(以下は、楢崎皐月による。)
mカタカムナ人は、物のイノチを惜しんで「モッタイナイ」と言いながら、自分のテマヒマは惜しまず、つつましくマメに手足を動かして、工夫しながら良いものを作ろうとして、様々な技法を開発したようです。また、衣・食・住を整えるために、骨身を惜しまなかったのです。当然、作品は、民族を超えた「美しさ」を持ち合わせているのです。モモテ、モロテのイトナミがアマウツシのミチであり、このように、人間の手のハタラキの重要さを認識して、機械化すべき点と、人間のテシホニカケルべき点とを、明確に区別すべきなのです。現在、手仕事の良さがだんだんと失われていく傾向にありますが、それを懐古的に嘆いたりせずに、正しい認識として、現在のアラカミチとして活かすことが肝心なのです。