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本当にあった話「2001、夏、鳥取」

僕達は狂犬には負けたが権力に対して戦いを挑んだ話。

狂犬力



2001年6月梅雨まっしぐら、しかし夏直前。暑さで出た汗は僕らの肌に浮きTシャツにすぐ吸収される。下校はいつもの3人、リーダー格の1つ上の小学3年生ノリさん、少しぽっちゃり体質の小学3年生あづささんそしてこの物語の常に主役の小学2年イケミのスリーマンセルだ。


今日はいつもの三人。天気は晴れのち曇り。後ろを歩いてる老人男性。主人に繋がれた犬は全体的に黒で熱を全て吸収していそうなのに陽気な顔で歩いてる。
僕等も「アイス何が好き?」「スイカバー!!」いつものようなくだらない話で陽気に歩く。
そんな中僕らの声を切り裂く突然の雷音。一瞬にして世界が変わる。
RADWIMPSの「オーダーメイド」や
Dragon Ashの「百合の咲く場所」の
サビで世界感変わるようにいま僕等の目の前の景色は変わった
異常な雨の量、びしょ濡れになる僕等、暗くなる空、雷の音で凶暴化する犬。

主人の手から離れる犬。
そのまま吠えながら走る犬、犬!走る犬!
ノリさんは足が1番速く誰よりも前へ前へ全速力で逃げる
俺2番目に足が速いため少し安心しながら走っていった
僕等は足が速い事を理由にあづささんを生贄に捧げた。

「うわあああああ」叫ぶ生贄の声を背中に僕とノリさんは走る走る、
風を切り裂き雨粒の形すらも潰す爽快さを味わいながら走る。

安心した足取りでトップを走り続けたノリさんは1番前の景色から僕等を振り返った。
ノリさんと目があった僕。犬に噛まれて涙目で立ち尽くしていた僕。
あの凶暴化した犬はあづささんという生贄を完璧に無視をし1位を追随する2位の僕目掛けて襲いかかった。過ぎ去った雷と雨、なにもなかった顔する犬、「すまんのお」謝る老人、笑うノリさん、叫び疲れてるあづささん。涙目で僕は、雷、雨、犬、主人、ノリさん、生贄、同じ怒りの量でみんなを恨んだ。




これは映画にはならない。僕達が狂犬には負け町の権力に対して戦いを挑んだ話。


町権力


夏まっしぐら、時間は真っ昼間。大人になるタメの義務教育しなきゃ響く失業率、僕は勉強、町は町長決める選挙、同じ名前の連呼で小さな町は賑か。家の方面が一緒の為また今日も3人。遠くを見れば蜃気楼が浮かんでるがきっとこの熱さの証人になってくれる事は違いない。
頭がおかしくなったのか分からないが、「これは亀だな」「これはタコっぽいな」1学年上の二人が奇妙な会話をし始めている。蜃気楼から僕は目を離し二人の会話の中に視線がまず追いついた。

そこには7人の顔が貼られていた。
多種多様で同じ物は1つとないが大人達が全員作り笑いを浮かべていて不気味さを感じる。ポスターに目を向けると亀やタコと言う理由も分かる、髪の少ない人、日焼けで真っ赤な顔、僕ら子供は正直だ、そしてバカだ。
思い付いた事を残さなきゃいけないと言う人間としての本能が僕らを掻き立たせる、
ノリさんとあづささんは地面に落ちてる鋭利な石を拾いが嘘の笑みを浮かべた大人達の紙を石で削る、それを見よう見真似で僕も
カメタコサルカエルの生物やひげや鼻毛、シワの整形をどんどん思い付いた事を躊躇なく石で紙を削る。一寸の迷いもなく一心不乱に。顔と落書きのマッチが良すぎて笑いが止まらない。

僕らはその後ほとんど会話もなしに家路に着く。悪い事したなんて一切思わずむしろ僕らは何かやり遂げた気になって眠りに着く。
7人の顔達は町長を決める選挙のポスターと知るのは今はまだ。

翌日、僕らは何かやり遂げた気になって悪いなんて微塵も分からず集団登校をした。
その時の班長が選挙ポスターを見つけ学校に着くや速攻先生に言いに行った
心の奥底で「あ、あれこれちょっとまずいなーあれこれ怒られる奴じゃね、出でも誰も見てなかったし3人が言わなきゃバレないよな」独り言を呟く。

学年が違う為教室は別々。あのノリさんも顔が引きつっていたように見えた。
でも自分から言わなければ大丈夫。そう何度も何度も自分に誓った。


義務教育権力


朝の会というまず一つ目の試練が来た、担任の女性の先生が入るや否や
「今から皆さん目を瞑って下さい。」

いきなり来た、一つ目とか自分で言ってたのに。でもこれはあれだ映画『バトルロワイアル』のシーンの撮影だ。
ここから先生が「殺し合いをして下さいなんて言うに決まってる。そしてここからアドリブで演じてカメラマン達が僕等を銀幕スターに成り上がらせるんだ。頭の中巡らせてる瞬間

「学校の近くの選挙ポスターに落書きがありました。」
いたもう無理じゃん選挙ポスターって言ってるじゃん
いや俺は誓ったノリさんとあづささんの為に言わないぞ、、絶対に。
「知ってる人いませんか?もしいたら手をあげて下さい」
耐える耐える耐える。
「いないんですね」
よし、二人を守ったぞ俺は守ったぞ!!これでこの一味での株が上がる!!
「うちの学年にいなくて先生ホっとしました、」

その言葉と同時にドアを二度叩く音、少しドアを明けこそこそとうちの担任を呼んだ。ドアの所から
「池未くんちょっと」担任をが呼ぶ
え、はい、なんだろうな〜と言いながらドアに向かってゆっくりと。いやまさか二人が裏切るはずがない多分親が倒れたとかもっと不幸な事だと信じながら向かうと
「もう二人から聞いてるよ」刑事ドラマ1つ上の学年の担任が僕に向かって本格派の豪速球を投げ込む。僕は顔を見れず
は、はいと頷き、付いてきなさいと言う言葉に返事をする事もなく付いていくしかなかった。「はぁ」呆れた声が聞こえた
僕は正直者というスキルを得る事無く学生時代を過ごすことになりそうだ。

連れてかれた先は、落書きされた選挙ポスターが置いてある学校のすぐ近く。
「よ、よう」ノリさんの声が聞こえ、顔をあげるとノリさんと元生贄がいた。
じゃまず誰が書こうとしたの?問いただたすにはどこか優しい声で聞いてきた。
心の奥底で僕は「あ、これあれだ優しくなる奴だ、怒ると見せかけて優しく説教させて更生させるんだなこれは」少し気分が楽になり選挙ポスターに目をやるとカメと描かれ鼻毛も描かれている。それなのに大人が一生懸命の作り笑いでいる。僕は我慢出来なくて思わず大声で笑ってしまった。そして釣られて主犯格の二人も笑い声を溢した。
怒号にも歓声にも似た音が笑い声と混ざって聞こえた。僕は一瞬何が起きたか分からなかった。ふと意識を取り戻すと、僕だけがビンタをされていた。

何もなかったかのように「じゃあみんなどこを書いたの?教えて」
優しい問いが始まる。主犯格の二人は続々と答えている。さっき起きたことが何も無かったかのように。僕の番になると
何故か僕はここで言い訳を発する「二人がここ書いて僕は、、、」
「二人のことはどうでもいいです」5本指でど突かれた。
どんどん印象は悪くなる、もう喋らんとこ!と硬く決意し黙認したら僕は後でこっ酷く担任に怒られた。
一緒な罪を犯したのに評価は僕だけ地に落ち主犯格の二人は正直者、僕は嘘つき言い訳クソ黙認野郎をレッテルを貼られた。
ビンタされた痛みを思い出し涙目になりながら僕はノリさん、元生贄、班長、担任、ビンタ先公、カメ、タコ、サル、カエル、もうこうなったら雷、雨、犬、主人、、同じ怒りの量でみんなを恨んだ。

町長はカメ鼻毛が当選した。



これは映画にはならない。でも僕達の中でずっと消えない、狂犬には負け町の権力に対して戦いを挑んだ話。

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