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給付 保険医療機関等 その3 「療養担当規則」 「薬担規則」 禁止事項

鹿島 「今日は「保険医療機関及び保険医療養担当規則」と「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」について話します。長い名称なので、前者は「療養担当規則」とか「療担規則」、後者は「薬担規則」とも呼ばれていますから、私たちも「療担規則」と「薬担規則」としておきましょう。私たちは保険医療機関の職員ではないので、国保組合の職員として知っておいてほしい条文だけになります。」
 
出雲 「あのう、少しは予習しておこうと思って昨日それを見たんですけど冒頭に「健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条ノ四第一項及び第四十三条ノ六第一項」に書いてあって、健康保険法を見たのですけれど該当する条文が無くて、いきなりわからなくなりました。」
 
鹿島 「それは制定された当時の健康保険法の条文だからです。先日学んだように現在は第70条第1項と第72条第1項でしたね。じゃあ、中身に入りましょうか。」
 
鹿島 「先ずは「療担規則」から見てみましょう。最初は保険医療機関が実施する療養の給付の範囲を定めています。ここでいう「療養の給付」とは、国保法や健康保険法にある保険外併用療養などが除かれたものではなく、それらも含め改めて「療担規則」で定義された広い意味です。範囲として挙げているのは、
 
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
 
の五つです。実はこの項目に則して、個々の医療サービスを点数化した診療報酬点数表が定められています。繰り返しますが、この範囲は医師と歯科医師が行う医療の範囲ではなくて、あくまで保険医として保険診療を行う範囲です。」
 
出雲 「わかりました。他にもたくさん書かれていますね。倫理規範みたいなのも結構あります。」
 
鹿島 「その通りね、それらはそのまま読んでもらっていいのでしょう。それで、提案なんだけれど、分かり易くするために、「してはならない事」と「しなくてはならない事」をそれぞれ探してみましょうか?」
 
出雲 「その方がいいかも!じゃあ、先に「してはならない事」を探してみます。順次挙げていきますね、うーん、あ、ありました!
 
(経済上の利益の提供による誘引の禁止)
第二条の四の二 保険医療機関は、患者に対して、第五条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険医療機関が行う収益業務に係る物品の対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、当該患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
2 保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
 
第五条の規定により受領する費用って、ああ、一部負担金や食事療養標準負担額とかか、これらを値引きしちゃいけない、セールで商売しちゃダメって書いてあるんですね。次は、うーん、例えば、施設やそこの従業員に、「ひとり患者さんを連れて来てくれたら千円上げるね」なんてことはダメという事ですね。」
 
鹿島 「その調子、その調子。自分の感覚で覚えたことは忘れないものよ。」
 
出雲 「あ、次もそうだ!
 
(特定の保険薬局への誘導の禁止)
第二条の五 保険医療機関は、当該保険医療機関において健康保険の診療に従事している保険医(以下「保険医」という。)の行う処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行つてはならない。
2 保険医療機関は、保険医の行う処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。
 
 これは「うちの病院は隣の薬局って決まっているんだよ」などと患者さんに言っちゃあいけないってことですね。さらにそうしたことの代償に金品をもらうのはもってのほかというわけですか。」
 
鹿島 「いいわねぇ。どんどんいきましょう!」
 
出雲 「見出しに禁止と書いてあるのは・・・・あっ、これもだ。」
 
(特殊療法等の禁止)
第十八条 保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない。」
 
出雲 「うーん、どういうこっちゃ。」
 
鹿島 「もう忘れちゃったの?保険外併用療養費でやったでしょ。」
 
出雲 「あ、そうか、先進医療に類似するような診療を勝手にやっちゃダメってわけですね、忘れたんじゃなくて、結びつかなかっただけです。」
 
鹿島 「そう、他には?」
 
出雲 「次の条文、見出しに禁止とはないけれど、内容は禁止事項です。」
 
(使用医薬品及び歯科材料)
第十九条 保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、又は処方してはならない。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十七項に規定する治験(以下「治験」という。)に係る診療において、当該治験の対象とされる薬物を使用する場合その他厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
2 歯科医師である保険医は、厚生労働大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴てつにおいて使用してはならない。ただし、治験に係る診療において、当該治験の対象とされる機械器具等を使用する場合その他厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
 
出雲 「決められた医薬品と歯科材料を使ってはいけないという事ですね。治験って何です?」
 
鹿島 「国内で新しい薬や医療機器の使用許可を得るために行われるもの臨床試験のひとつです。それは別って書いてありますね。」
 
出雲 「なるほど。次いきます。あ、これだ。でも、さっきやりませんでした?」
 
(特定の保険薬局への誘導の禁止)
第十九条の三 保険医は、処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行つてはならない。
2 保険医は、処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。
 
鹿島 「よく見てちょうだい、少し違うわよ。」
 
出雲 「へっ、うーん、あっ、保険医療機関と保険医、組織と個人それぞれに規制をかけているんですね。」
 
鹿島 「まだあるわよ。」
 
出雲 「これもそうですね。」
 
(診療の具体的方針)
第二十条 医師である保険医の診療の具体的方針は、前十二条の規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。
一 診察
(中略)
ハ 健康診断は、療養の給付の対象として行つてはならない。
ヘ (略)各種の検査は、研究の目的をもつて行つてはならない。ただし、治験に係る検査については、この限りでない。
 
鹿島 「そうですね、禁止事項表現になっているのは全部出てきたかな。」
 
出雲 「次は「薬担規則」の禁止事項ですね、私がやります。」
 
出雲 「あれっ、「療担規則」に比べるとずいぶん短いですね。えーっと、範囲は大切だから押さえておく必要がありました。」
 
(療養の給付の担当の範囲)
第一条 保険薬局が担当する療養の給付及び被扶養者の療養(以下単に「療養の給付」という。)は、薬剤又は治療材料の支給並びに居宅における薬学的管理及び指導とする。
 
出雲 「続いて、禁止事項、ありました。」
 
(健康保険事業の健全な運営の確保)
第二条の三 保険薬局は、その担当する療養の給付に関し、次の各号に掲げる行為を行つてはならない。
一 保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行うこと。
二 保険医療機関又は保険医に対し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、金品その他の財産上の利益を供与すること。
 
出雲 「エー、近所の薬局、出入り口は別になっているけれど、診療所と同じ敷地にありますよ。正確には不動産登記簿を確認したわけではないからと同じかどうかわかりませんけれど。」
 
鹿島 「それ、実は、保険薬局指定拒否処分の取消し等を求めた訴訟にもなったのよ。東京高裁の判決は、医薬分業の目的達成という見地からは、経営上の独立性が一番大切で構造上の独立性はその次だから、経営上の独立性が十分に確保されている場合には、構造上の独立性に関する規定は緩やかでいいよという判決が確定したのよ。誘導などをすれば「療担規則」と「薬担規則」に抵触するけれど、出雲さんの近所の薬局も誘導なんかしていないと思うわよ。」
 
出雲 「なるほど。医薬分業の目的って何ですか?」
 
鹿島 「厚生労働省が挙げているものを私なりに要約すると次のようになります。
 
l  医薬品の在庫を気にせず、患者に必要な医薬品を医師・歯科医師が自由に処方できること。
l  処方せん交付により、患者自身が服用薬について知ることができること。薬剤師が、医師・歯科医師と連携して、服薬指導することにより、薬物療法の有効性、安全性が向上すること
l  「かかりつけ薬局」となれば、飲み合わせの確認などができ、薬物療法の有効性・安全性が向上すること。
l  病院薬剤師の外来調剤業務が軽減することにより、本来病院薬剤師が行うべき入院患者に対する病棟活動が可能となること。
 
出雲 「なるほど。病院と薬局それぞれ行くことはたいへんだし、病院のように感染症疑いの時間的空間的分離も難しいけれど、確かに分業した方がいいことが多いようですね。」
 
鹿島 「他にも「療担規則」と同じような記述があるでしょ。」
 
出雲 「これですね。あとこれも。」
 
(経済上の利益の提供による誘引の禁止)
第二条の三の二 保険薬局は、患者に対して、第四条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険薬局における商品の購入に係る対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、当該患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならない。
2 保険薬局は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならない。
 
(使用医薬品)
第九条 保険薬剤師は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の医薬品を使用して調剤してはならない。ただし、厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
 
鹿島 「そうですね。禁止事項だけでもかなりありました。今日はここで区切りましょう。」

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