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給付 保険医療機関等 その1 責務を定めた厚生労働省令

鹿島 「今日は保険診療をする側、病院や薬局の話です。先日、「給付 「療養の給付」関連 その4 保険外併用療養費 評価療養、患者申出療養、選定療養」の説明の時にある程度は話したから、重複するようなことはできるだけ省くわね。早速条文を確認しましょう。」
 
(保険医療機関等の責務)
第四十条 保険医療機関等又は保険医若しくは保険薬剤師(健康保険法第六十四条に規定する保険医又は保険薬剤師をいう。以下同じ。)が、国民健康保険の療養の給付を担当し、又は国民健康保険の診療若しくは調剤に当たる場合の準則については、同法第七十条第一項及び第七十二条第一項の規定による厚生労働省令の例による。
2 前項の場合において、同項に規定する厚生労働省令の例により難いとき又はよることが適当と認められないときの準則については、厚生労働省令で定める。
 
出雲 「この条文、保険外併用療養費の説明の時には第1項だけでした。第2項はその時にちらっと見ましたが、なんかピンとこなかったことを覚えています。健康保険法を根拠にした厚生労働省令では適当でないことって何ですか?」
 
鹿島 「実は私も条文を初めて読んだ時に同じ疑問を持ちました。でね、調べたのよ。滅茶苦茶苦労したわ。調べた過程をなぞって話すと、
 
1.  当然だけど、先ずは国民健康保険法施行規則と国民健康保険法施行令を調べました。健康保険法の読み替え規定はあっても内容は同じで、「健康保険法を根拠にした厚生労働省令では適当でない」場合というような条文は見つからなかった。

2.  国民健康保険法第40条に相当する条文について、他の公的な健康保険各法がどうなっているか調べました。すると、国家公務員共済組合法では第58条、地方公務員等共済組合法では第60条、 高齢者の医療の確保に関する法律では第65条、船員保険法第54条に相当する条文がありましたが 「健康保険法を根拠にした厚生労働省令では適当でない」というような条文があったのは船員保険法第54条第2項だけでした。

3. 請求する側だったら分かるかもしれないと、保険医療機関等が使う診療報酬請求の解説本をくまなく確認したつもりですが、国民健康保険と船員保険に関するそれぞれ独自となる請求はありませんでした。

4.  過去の条文はどうなっていたのかと追ってみましたが、ネットでは限界があって平成までしか遡れず得るものはありませんでした。

5.   昔の解説本、「詳解国民健康保険(1960年)」と「逐条詳解国民健康保険法(1983年)」を確認しました。ここでは収穫があって、「詳解国民健康保険(1960年)」では、当時から健康保険法を根拠とした厚生省令と国民健康保険法による厚生省令は併記され、当時の国民健康保険法の第36条第4項には療養機関の開設者の療養の実施時に必要な措置を講ずる義務を課しているが、その措置については未制定と書いてありました。また、「逐条詳解国民健康保険法(1983年)」には、法第40条に国民健康保険法と健康保険法それぞれの準則のことが併記されているけれど、国民健康保険法の準則については未制定と書いてありました。
 
 でね、結論としては、いまだに未制定なのよ、きっと。なんて人騒がせな条文でしょう!何が大変かって無いものを無いと確認するのは、ある事を見つけるより何千倍も大変なのよ!わかってくれる?」

出雲 「わかります、わかります、落ち着いてください。(真剣に怒ってるよ、このひと!俺に言われてもなあ)微力ではありますが、いつか厚生労働省の役人さんか国会議員さんに会う機会があったら必ず話します。」
 
鹿島 「2850万人が加入している保険の法律なのよ。いくら変更を重ねてきたとはいえ、国はもっと分かり易い情報を提供すべきだわ。法・施行令・施行規則の対応表とか公表して、今回みたいに対応する条文が無い場合にはそこに書いておいてもらいたいわね。法令は官僚や学者だけのものではないって思わない!?あっ、溜まってたものを吐き出したら、すっきりしたわ。
 まあ、そんなことで、保険医療機関等は健康保険に限らず国民健康保険や共済組合においても、健康保険法第70条第1項と第72条第1項を根拠とした厚生労働省令である「保険医療機関及び保険医療養担当規則」と「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」に従って療養の給付や診療、調剤をすることになっています。続きは次回にしましょう。出雲さんはその条文を確認しておいてください。」
 
健康保険法
(保険医療機関又は保険薬局の責務)
第七十条 保険医療機関又は保険薬局は、当該保険医療機関において診療に従事する保険医又は当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に、第七十二条第一項の厚生労働省令で定めるところにより、診療又は調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。

(保険医又は保険薬剤師の責務)
第七十二条 保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師は、厚生労働省令で定めるところにより、健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。

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