見出し画像

保険証など医療証の変更整理

鹿島 「次回から保険給付の話をする予定ですが、その前に2024年12月2日から従来の保険証をマイナ保険証へと原則として切り替えるために、法令が大改正されました。今回は混乱を防ぐために保険証類を先に整理しておきます。といっても、随分性急だったので、市町村のホームページにも書き替えが間に合っていない記述が散見されますし、私自身も少々自信がございません。間違っていたら訂正するので指摘してください。」
 
出雲 「いきなり自信ない宣言されても困ります。」
 
鹿島 「間違わないために根拠法令も挙げていくので復習を兼ねて確認しておいてください。まずは2024年12月1日までに発行された保険証や高齢受給者証、短期保険証、被保険者資格証明書は有効期限または2025年12月1日のどちらか早い方までは使用できます。
 次に保険証などから切り替わった「マイナ保険証」と「資格確認書」について説明します。どちらも、公営国保は法9条第2項を根拠として、国保組合は第22条の準用条文を根拠として、世帯主または組合員が求め、市町村と組合はその提供をしなければならないとなっています。資格確認書の名称は国民健康保険法にはなく、施行規則第6条に出てきますが、注意しなくてはならないのは世帯主または組合員は申請しなければ交付されないということです。今回だけは特別に、最長5年、有効期限は保険者によって異なりますから、1年だったり、それ以下だったりするのでしょうけれど、資格確認書は交付されます。しかし、原則は申請となっていて、申請せずとも更新される従来の保険証制度とは異なっています。
 次に滞納者の取り扱いですが、有効期限を通常の期日より前の期日に変更し面談等の機会を増やすための制度であった短期保険証の根拠であった法9条第10項は削除され廃止となりました。関連して6か月以上の18歳未満の被保険者の短期保険証も同時に廃止され、通常の資格確認書が交付されることになりました。特別な事情がないにもかかわらず保険料を支払わないとされた世帯の18歳以上の被保険者には被保険者資格証明書が発行されていましたが、これも廃止され、あらかじめ書面通知すること(法54条の3第3項 施行規則第二十七条の五の二2号)を条件に、特別療養費と記載された資格確認書を交付することになりました(施行規則第二十七条の五の二4号)。ここまではいい?いいわけないわよね。」
 
出雲 「情報の洪水でございます。はるか遠くに流されております。いま、もがいております・・・特別療養費って何ですか?」
 
鹿島 「そうよね、そこからよね。廃止された被保険者資格証明書とそれに替わって発行されることになった特別療養費という文言がある資格確認書は、どちらも医療機関に提示すると、受けた診療は保険診療で計算され、窓口で10割負担することになります。その後に保険者から自己負担分を除いた金額を支払ってもらうのが特別療養費です。何も提示しないと自由診療扱いとなるため1.5倍とか2倍とかの金額になってしまいます。自由診療扱いとなったものは、滞納が関係のない療養費払いでさえ保険診療で計算されることになります。例で話した方が早いわね。何も提示しないで診療をする場合は保険診療の2倍の料金とすると決めている保険医療機関で1000円の診療を受けたとします。3割負担の人が特別療養費の資格確認書を提示した場合は窓口で1000円を支払った後、保険者に特別療養費として700円が支払われます。しかし、何も提示しない自由診療での診療を受けた場合は、窓口で2000円を支払い、後日、保険者に請求しても、700円しか支払われず、1300円は自己負担という事になります。」
 
出雲 「特別療養費については分かりました。でも、何だかよく呑み込めません。」
 
鹿島 「そうよね、でも、まだ、話は途中だから、少し我慢して聞いてください。限度額認定証については、限度額認定事項の記載されている資格確認書の交付を受けている場合を除いて、引き続き申請により発行されます(施行規則第二十七条の十四の二)。高齢受給者証も資格確認書に負担割合が記載されていなければ、継続して交付されることになっています(施行規則第七条の四)。今まで話したのは、紙の話、主に資格確認書の事です。マイナ保険証はそれらの情報がデータとして連携できるようになります。ただ、マイナ保険証に対応していない医療機関や停電でマイナ保険証が認識できない状況が起きた場合に備えて「資格情報のお知らせ」も発行されています。「資格情報のお知らせ」はスマホでのマイナポータルの資格情報画面でも代用できます。最後にマイナ保険証でも申請する必要があるのは年間90日超の長期入院となる食事標準負担額の減額認定です。」
 
出雲 「溺れました、完全に・・・」
 
鹿島 「過渡期は特に混乱するのよ。復習のために箇条書きで整理しておきましょう。間違えていたら訂正します。」
 
1.      2024年12月1日までに発行された保険証などの医療証類は有効期限日か2025年12月1日のどちらか早い方までは使用できる。

2.      マイナ保険証保持者は、3から5までの情報についてデータ連携で確認する。

3.      旧保険証は申請が無くとも交付されたが、資格確認書の交付には世帯主または組合員の書面での申請が必要となった(施行規則第六条)。

4.      滞納世帯に関わる、短期保険証(法9条第10項削除)・被保険者資格証明書(法9条第6項削除)は廃止され、あらかじめ書面通知すること(法54条の3第3項 施行規則第二十七条の五の二2号)を条件に、18歳以上の被保険者に特別療養費と記載された資格確認書を交付することになった(施行規則第二十七条の五の二4号)。

5.      限度額認定証・高齢受給者証は、資格確認書にそれぞれの情報が記載されていない場合は申請により引き続き発行される(限 施行規則第二十七条の十四の二) (高 施行規則第七条の四)。

6.      非課税世帯の入院91日以上の食事療養費減額認定はマイナ保険証保持者も必要である。

7.      高齢者・障害者等の要配慮者については、マイナ保険証を保持していても申請により資格確認書が交付されるということらしい(根拠見つからず)。
 
おまけ
健康保険法施行規則第五十条の二にある被保険者資格証明書(マイナ保険証の登録または資格確認書の交付までのつなぎ)は引き続き申請により交付されます。
 
※12月2日の大改正により医療証類が大きく変わってしまいました。市町村のホームページなどにも未更新の記述が散見されます。また、ネットに公開されている政府関係の資料には根拠法令が記載されていないものが多く、現役を退いて2年半となり、かつ、ぼんくらな私には辿りつけないことも多くあるようです。次回より始める給付に関する投稿の前に、この整理は避けられないとあきらめ投稿いたしました。錯誤や不備などあるかと思いますので、コメントにてご指摘いただければ助かります。なお、その際は、根拠法令もお示しくださるようお願いいたします。
(2024年12月8日 伊矢波俊信)

(2024年12月8日)

いいなと思ったら応援しよう!