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資格 組合員の範囲 その3 組合員になれる者、なれない者

鹿島 「国保組合は当該地区の同種の事業または業務に従事する組合員で組織するが、誰が組合員となれるかをという事を、都道府県と市町村がともに行う国保、公営国保といいますが、この被保険者の範囲を定めた条文と比較してみましょう。国保法は皆保険制度を完成させるために他の公的保険などの対象者外に網をかけています。住民原則加入が法5条です。そして対象者外が法6条ですね。国保組合の組合員は法13条だけど、ここの第3項にも法6条が使われています。ただし、国保組合は組合員の対象外を記した条文で、公営国保は被保険者の対象外を記した条文だということに注意が必要です。」

出雲 「ともに対象外は法6条、法13条第3項は国保組合の組合員の対象外で、公営国保は被保険者の対象外っと。」

鹿島 「法6条は全部で11号ありますが、法13条第3項ではふたつ除かれていますね。8号の後期高齢者被保険者と10号の国保組合被保険者で、なれない者から除かれているから、なれる者ということになります。ただし、第10号の国保組合被保険者についてはさらに記述があって他の国保組合の被保険者は除かれています。なれる者という観点から整理すれば、法6条に書かれていない公営国保被保険者と後期高齢者医療制度被保険者と当該国保組合の家族被保険者は組合員になれるということになりますね。」

出雲 「ちょっと待ってください。公営国保被保険者が組合員になるというのは普通のことですよね。後期高齢者医療制度は年齢で区切られるから75歳になっても現役で仕事をしているというのはそう珍しいことでもなさそうだけれど、えっ、年齢で区切られるのに後期高齢者が組合員になるということがあるのですか?後期高齢者医療制度被保険者でありながら国保組合被保険者なんて二重加入で変じゃないですか?」

鹿島 「いえいえ、さっき法13条は組合員に関する条文なので注意が必要と話しました。後期高齢者医療制度被保険者は国保組合の組合員となる場合はあっても、後日話す後期高齢者医療制度に入る当日の資格重複日を除いて国保組合被保険者であることはありません。被保険者資格を持たない組合員ということになります。ただし、それぞれの国保組合が持つ規約で入れないことを定めているところも多いのです。組合員として残れるかどうかは規約次第ですね。ついでに国保組合被保険者に関する条文も確認しておきましょう。法13条は組合員に関する条文でしたが、国保組合の被保険者の条文は法19条になります。法19条にも法6条が使われていますが、法13条とは異なって被保険者になるものとしての例外に8号の後期高齢者医療制度被保険者は除かれていませんね。条文に沿ったので少し回りくどい言い方になりましたが、整理すると、組合員の法13条で組合員になれない者から8号の後期高齢者は除かれていたけれど、被保険者の19条では除かれていない。これが後期高齢者は組合員にはなれても被保険者にはなれない根拠です。後期高齢者医療制度被保険者は当該国保組合の組合員にはなれても被保険者にはなれないという事になります。」

出雲 「そうか、そうですね。組合員を規定する条文なのか被保険者を規定する条文なのか、しっかり読み分けないといけないということですね。でも、なんかよくわからないのですが、被保険者資格が無い組合員制度ってあまり意味が無いように思えますが。」

鹿島 「うちの国保組合は規約で制限しているから、実感がわかないのは私も同じです。でも、被保険者資格という点で大きく異なるのは75歳に達した組合員の世帯にいる家族被保険者です。もし、規約で制限していなければ、組合員は後期高齢者医療制度被保険者となって医療給付はそちらから受けることにはなることは同じですが、家族被保険者は公営国保に入らず資格は国保組合で継続することになります。また、組合員として残れば、当該国保組合の運営にかかわることも可能だし、傷病手当金などの給付を受けられる場合もあります。」

出雲 「組合員になれる者のうち、最後に残った、当該国保組合の家族被保険者というのはどういうケースですか?」

鹿島 「これはよくある事で、同一世帯で親が国保組合の組合員になっていて、親と同じ仕事を選んだ家族被保険者の子が組合員になるとか、世帯に組合員が複数となるケースね。」

出雲 「私もこの国保組合に入っていますけれど何故ですか?」

鹿島 「それは同じ法13条の第4項に国保組合に使用される者と書いてあるから組合員になったんです。もっとも第4項は「できる規定」になっているから組合員にならなくても構いません。でも、被用者保険の健康保険法は、適用除外事業を除いた常時5人以上従業員がいる個人事業所と、たとえ社長一人でも従業員がいる法人事業所に適用されますが、わざわざ国保組合に使用される者については適用を除外、しかもそこには任意性はなく完全に排除しているから、国保組合の組合員とならなければ公営国保の被保険者となります。」

出雲 「公営国保に入るとなると年金も国民年金だけですか?」

鹿島 「いいえ、厚生年金法は、原則は健康保険法の適用事業所と同様ですが、国保組合に使用される者の除外規定はありません。だから厚生年金には入ることになります。」

出雲 「公営国保と厚生年金ってあまり聞いたことはないですね。でも、何でわざわざ健康保険から除外したんですか?」

鹿島 「確かに公営国保と厚生年金の組み合わせの国保組合の職員って知らないわねえ。健康保険から除外したのは、その国保組合で仕事をしているのだから運営上その方がいいでしょうという事のようです。まあ、その方が事業内容を実感できますね。さて、法6条、法13条、法19条の関係と除外者について話してきました。ややこしいけれど、基本中の基本なので、読み飛ばさずにしっかり復習しておいてください。何か質問はありますか?」

出雲 「相当難しいです。でも、なんか変だなあ、違和感が・・・・あれっ、ひとつ質問があります。同じ国保組合の家族被保険者は同一国保組合の組合員となる選択肢はあるのに、異なる国保組合の被保険者はなぜ別の国保組合の組合員になれないのですか。別の国保組合の組合員がなれないというのなら納得しますけれど。」

鹿島 「えっ、そこに気がつくのね。説明には少し時間が必要となるので次回にしましょう。繰り返すようだけれど、それまでにしっかりと復習しておいてください。」

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