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資格 組合員の資格取得日 その2 遡及加入

出雲 「公営国保からの加入者は実務上翌月1日が加入日となることは理解できましたが、例外というのは何ですか?」

鹿島 「いくつか例外がありますが、健康保険法の適用除外による加入について説明します。健康保険法は健康保険法が適用される事業所に雇用されている者は当然に健康保険に加入することを定めています。これは今まで適用を受けなかった事業所が適用を受ける状態に変化する場合と、適用を受けるべき事業所に労働者が雇用される場合と、大きく二通りあります。この届出の義務は事業所にあり、例えば、労働者が常時5人以上となった日、法人となった日、雇用された日から当然に健康保険の被保険者となります。でも、14日以内に当然に取得した健康保険の適用を除外して、国保組合に残りたい、または、国保組合に入りたいと申請して承認されれば、残る、入るが可能となります。でも、なんでもかんでも申請すれば認められるという事ではなくて、国保組合が公的保険制度において果たしてきた機能が評価されて認められた制度なので、国保組合と関わりのある事業所と者だけに認められる制度です。詳しくは「保国発第 1215001 号平成 17年12月15日「国民健康保険組合の被保険者に係る政府管掌健康保険の適用除外について」を確認しておいてください。短い通知ですけれど、注意深く読んでくださいね。ちなみに通知の根拠となっているのは、健康保険法3条8号に健康保険の被保険者となることができない者として「厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者」とあるからなの。この制度を使って新たに国保組合に加入する者の資格取得日が健康保険法と同じ雇用された日になるのが当然なのは理解できますね。」

出雲 「そこは分かります。」

鹿島 「書類上、手続き的には、同一様式となっている厚生年金資格取得届と健康保険取得届を出し、別紙で健康保険適用除外承認申請書を出すことになるの。その者が国民健康保険法の適用除外となっている健康保険被扶養者だったりした場合でも、一旦は健康保険を経由させることによって当然にその資格を失わせ、その後に改めて国保組合を適用すれば、健康保険被扶養者は国保組合の組合員にはなれないという法13条第3項の壁をクリアできるのよ。技術よねぇー、感心しちゃうわ。この例外は、法令の根拠が明確な遡及ですね。」

出雲 「他に遡及することがあるのですか?」

鹿島 「ええ、被用者保険の資格喪失者や他の国保組合の資格喪失者が喪失日から14日以内に申し込みがあった場合は喪失日に遡及して加入させているわね。資格喪失日はレセプトの区切りとなる月の初日になるものでもないから、翌月1日加入にすると、今月25日までは会社の健康保険、26日から末日までは公営国保、翌月からは国保組合なんて、短期間に保険が二度も替わることになって厄介でしょ。」

出雲 「短期間に保険が替わって二度も窓口に出向くなんて大変だし、面倒ですね。」

鹿島 「そうよね。これから話すことは聞き流していただいても結構です。蛇足を承知の上で話すけれど、住所がある事で強制的に資格を与え、皆保険を成立させている公営国保が資格を遡及するのは当然だけど、国保組合加入は任意なのだから、規約例にある組合員加入の手続き、即ち、早くても申し込みのあった当日で加入するのが当然だとは思うのよ。法令の根拠としては国民健康保険法施行規則の第2条と準用の第20条に組合員または組合員の世帯に属する者になった場合の記述があって14日間以内に届出ることになっているのだけれど、属する者については法19条によって当然に資格を取得するから当然にしても、組合員については申し込みと受理の過程を経る規約例とは矛盾していると思うのよ。違和感があるのよね。でも、規約例の通りに運用すれば、短期間のうちに二度も保険を替えることになって、組合員になる者にとっては手続きの二度手間だけでなく、高額療養費の多数該当カウントなど不利益を生ずることもあるから、便宜上そのように運用しているのではないかしら。逆に被用者保険の資格喪失者や他の国保組合の資格喪失者を資格喪失日に遡及して加入させる法令の根拠はどれ?と訊かれたら、この施行規則なのでしょうね。規約以外の加入については文書にしていないと基準もなくなってしまうから、一般に公開されていない「規程」等を作成して運用しているでしょうね。」

(2024年11月26日)

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