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 ここはある国保組合の会議室。今日から職員として働くことになった出雲健太さんと新人教育係に指名された鹿島直子さんが会議用テーブルを挟んだ状態で座っています。

鹿島 「まあ、そう、かしこまらずに楽にしていいわよ。今日からしばらくの間、新人教育係として仕事を教えることになった鹿島です。新人教育係なんて肩書を付けられましたが、私は学校の先生ではありません。そもそも学校は金を払って物事を教わるところですが、出雲さんはここに授業料を払っているわけじゃないですね。全く逆で、給料をもらうわけです。学校じゃ出雲さんはお客さんでしたが、ここじゃお客さんは組合員とその家族。これを合わせて被保険者といいますが、この人たちのために法令の範囲内で最高のサービスを提供し、その対価として給料が出るわけです。学校を卒業して何年たってもここのところを勘違いしている人もいますので、そうならないよう、しっかり切り替えて働いてください。」

出雲 「(厳しそう・・・)わかりました。」

鹿島 「もうひとつ。人の好い正義感をお持ちの方に多いのですが、先ほど話した被保険者のためとは被保険者全体のためなのであって、必ずしも目の前の被保険者の要求とは一致しない場合があります。おいおい分かるかとは思いますが、簡単に言えば、特別扱いやイレギュラーなことはするなということです。」

出雲 「なんとなくわかります。」

鹿島 「ところで、出雲さんは運転免許もっていますか?」

出雲 「オートマ限定免許ですが、持ってはいます。」

鹿島 「車の運転も交通法規がわからないと危ないですよね。例えば同じ信号無視の事故でも、赤信号を見落としたのか、赤信号で止まることを知らなかったのでは全く違います。国保の仕事も同じ。一度事故を起こすとあちこちに迷惑をかけるだけでなく戻すのに何十倍も時間を取られてしまいます。しかし基本的な法令を理解していれば大きな間違いはしません。ただし、車が止まっている状態から加速し安定した速度になるまでが一番エネルギーを必要とします。最初は大変だとは思いますが、基礎は手を抜かずに身につけてください。今日は雑用係みたいになってしまうけれど折に触れて国保業務の考え方を話します。」

(2024年11月17日)


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