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給付 「療養の給付」関連 その1 療養の給付
鹿島 「今日からは保険給付の話ですね。長い語句も多くて分かりにくいこともあるけれど、まずは大きく仕組みを捉えてくれれば結構です。様々な金額が出てきますが、それらは変えられるものですし、いずれ担当になれば、問い合わせに答えるために細かい計算などすることになります。さて、基本となる療養の給付の条文は第36条になります。条文通りに説明するより、最初に構造を大まかに知っておくと理解してもらえるのではないかと思うのでそのようにします。療養の給付の基本の話と、療養の給付から除外されたふたつのものの話、オプションの話で3回に分けて話す予定です。今日は基本となる療養の給付そのものの話です。まずは条文を確認しましょう。
(療養の給付)
第三十六条 市町村及び組合は、被保険者の疾病及び負傷に関しては、次の各号に掲げる療養の給付を行う。
「ただし」以下は略しました。各号は診察、薬剤・治療材料の支給、治療、在宅療養看護、入院療養看護が挙げられ、これら一連の医療サービスが対象となります。これらは立替などしなくとも直接受けられる給付なので現物給付と呼ばれています。」
出雲 「意外と分かり易いです。」
鹿島 「そうですね、制定当初の第36条もシンプルでしたが、次回以降話す除外やオプションが追加されて複雑になりました。さて、先ほどの一連の医療サービスが療養の給付となるためには、あと二つの条件を満たす必要があります。その条件とは、どこで、と、どういう方法で、の二つです。具体的に条文で確認していきましょう。」
出雲 「お願いします。」
鹿島 「両方とも条文は第36条第3項になります。分かり易くするために()内を省いて見てみましょう。」
3 被保険者が第一項の給付を受けようとするときは、自己の選定する保険医療機関等から、電子資格確認その他厚生労働省令で定める方法により、被保険者であることの確認を受け、第一項の給付を受けるものとする。ただし、厚生労働省令で定める場合に該当するときは、当該確認を受けることを要しない。
出雲 「随分すっきりとしました。どこでは保険医療機関で、方法は、マイナ保険証や資格確認書で、保険証も最長2025年12月1日までは有効ですよね。最後の箇所は確認しなくてもいい場合があるという風に読めたのですけれど、そうなんですか?」
鹿島 「ごめんなさい、私もわかりません。法第三十六条第三項に定める方法については、施行規則の第二十四条の四と第二十四条の五が受けています。前者はマイナ保険証で、後者は資格確認書などマイナ保険証以外の方法です。しかし、厚生労働省令で定める場合については、施行規則では見つけられませんでした。調べた事を挙げておくと、1959年に木代一男氏が著した「国民健康保険法 : 逐条解説」に、制定当時の法第36条第5項に「ただし厚生省令に定める場合に該当する時は、被保険者証を提出することを要しない」という文言が確認できること、解説には提示しない場合として薬局の処方箋が挙げられていました。処方箋については現行の第二十四条の五 二に方法として記載されています。また、健康保険法においては、この条文に相当するであろう第63条第3項にそのような記述はないこともわかりました。で、それらのことを勘案すると・・・下衆の勘繰りと笑われるかもしれないけれど、「方法と場合が混同されて残っちゃったんじゃね?」とずっとモヤモヤしているんです、はい。」
出雲 「そうなんですかあ?」
鹿島 「だから、わからないのよ。制定当時からの国保法の法令全ての改正を調べてみようとしたのだけど、ネットの情報は限界があって諦めました。まあ、仮にそうだったとしても支障があるわけでもないし。それより第36条第3項にはもうひとつ重要な記述があります。それは保険医療機関等の前に「自己の選定する」という文言がある事で、これがフリーアクセスの根拠となります。」
(2024年12月11日)