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管理 理事会 組合会 監事 職員
鹿島 「今日は組織や仕組みについて話します。でも、給付や資格などとは違って、一般職員ましてや経験の浅い職員が詳しく聞かれることはないと思うから簡単に話しておきます。
まずは規約。地区・組合員の範囲・組織・財産管理・保険料などの基本的事項は法第18条により規約に定めることになっています。すべての基本は規約に書いてあるということね。さて、国保組合は組合員が設立運営するわけですから組合員が物事を決める場が必要となりますね。これが組合会で、予算や決算、規約変更など重要事項を決めることになります。決める機関だから議決機関と言われています。組合規模によるけれど、組合員全員が集まるのは困難だから、実際には組合員のうちから選挙で選ばれる組合会議員が組合会を構成することになります。だから、当然、組合会議員は組合員でなければならないのは判るわね。ここまではいい?」
出雲 「大丈夫です。」
鹿島 「さて、議決しただけでは何も変わらないから議決に基づいて実行していく者が必要なのも判るわね。この実行者が理事で、原則は組合員から選ぶことになっているけれど特別の事情があれば組合員以外でも選任することは可能です。理事は最低5人以上ということが法第23条第2項で定められていて、法24条2項では組合の業務は規約に別段の定めがある場合を除くほか理事の過半数で決するとあるから、実際には理事会が執行機関となるわけ。また、理事は組合内では執行機関としての役割があるだけでなく、対外的には組合を代表するとあるから、理事は単独でも組合のためにした行為は組合の行為となることになります。また、第25条には専決処分の条文もあって理事の職務権限は相当強いものとなっています。
また、2010年に全国保組合に対して法令順守体制の整備を求める通知が出されてコンプライアンス担当理事を置くようになりました。」
出雲 「コンプライアンスってよく耳にしますけれど、違法なことはしないという意味ですよね?それと、2010年に何かあったのですか?」
鹿島 「コンプライアンスは法令順守と訳されますが、法令だけじゃなくて道徳や慣習などの社会規範も含まれます。それらにのっとって業務を遂行しなければならないという事です。
コンプライアンス理事が置かれるようになった事件は2010年にある国保組合に出された是正改善命令です。それは、法第106条第1項の検査に基き法第108条第1項の規定から出されました。詳しくはその命令(参照1)と会計検査院の検査報告(参照2)を確認してください。加入資格が無いとされた組合員と家族が単に脱退すれば済むなんてことではなくて、それらの人たちは2年遡って保険料を返金され保険給付費を返納することにすることになりましたが、保険税を採用している公営国保に加入し直した場合は3年分の保険税が課せられたから1年分まるまる国保組合と公営国保に保険料税を納めることになってしまったわけです。また、法人で無資格の人たちは、2年遡及して協会けんぽと厚生年金に加入することになりました。該当の人たちは本当に大変だったと思うけれど、私が一番肝に銘じなければならないと思うのは、その人たちに関わる国庫補助金の事です。国庫補助金は6年分が返還の対象となってしまいましたが、これを負担するのが誰かという事。2年分は無資格だった人たちの保険給付費そのものが無くなるから問題ないけれど、4年分は残った人たちで負担しなくてはならない。残った人たちというのは法令をきちんと守って加入していた人たちでしょ。何のために違法なことをして加入させていたのか知らないけれど、結果として、法令を守って加入していた組合員にまで負担を負わせてしまう。こんなこと絶対に許されるものではないわ。研修初日にイレギュラーな事や特別扱いはするなと話したのはこのことがあったからです。
NHKドラマ「虎に翼」で寅子は法を船に例えました。「人が人らしくあるために、尊厳や権利を運ぶ船。社会という激流にのみ込まれないための船。船の使い方は乗り手次第。人らしさを失い沈むことも、誰かを沈めることも、間違うこともある。人生という船旅を快適に、幸せに終えるために、乗り手の私達は船を改造したり、修繕したりしながら進む」、本当にその通りだと思う。自分勝手な理由を付けて法を軽視したり無視したりすることは自分たちの乗る船に穴をあけたり歪めたりするのと同じこと。沈没する怖さを知らない浅はかな考えです。
さて、コンプライアンス担当理事は執行側にいて自ら法令順守のための研修や措置などを実践しますが、執行側ではなく専ら監視役として監事が規定されています。監という字には見張るとかよく見るという意味があります。監事は理事と並ぶ役員として規定されていて、二人以上で、原則は組合員からだけど特別の事情がある場合は組合員外でもいいことになっています。ただし規約例では理事と職員は兼職できないとなっているわ。」
出雲 「理事を含めて監視するのが仕事でしょうから理事が兼職できないのは理解できますが、なぜ職員はダメなのですか?」
鹿島 「職員は国保組合から給料をもらっているのよ。立場弱いでしょ。」
出雲 「そ、そうですね。」
鹿島 「法24条3項に、「監事は、組合の業務の執行及び財産の状況を監査する」とあるから、会計監査と違って、財産だけでなく国保業務執行状況全般を監査することになっている。規約例では、通常組合会には理事は監事に事業報告書や収支決算書などを提出し監事の意見を添えて組合会に報告することにもなっている。また、議決機関である組合会も法30条で業務執行状況や出納などを検査できる権限を持つことを定めているわね。こうして議決・執行・監査という機能を分立させながらお互いにチェック機能を持たせることで適正な運営を図ろうとしているのね。」
出雲 「職員はどういう位置づけなのですか?」
鹿島 「職員は業務遂行上の補助機関でしょうね。事務の実行機関といってもいいわ。法令を遵守して円滑に業務を遂行することが仕事ですね。」
参照1
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000r6lb.html
参照2
https://report.jbaudit.go.jp/org/h22/2010-h22-0265-0.htm