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給付 「療養の給付」関連 その2 人の除外 特別療養費

鹿島 「今日は療養の給付から除外された二つのものを話します。先に大枠を話しておくと、ひとつは人の除外、もうひとつは医療サービスの除外です。まずは人の除外について話しますね。いつもの通り、条文を確認しましょう。
 
(療養の給付)
第三十六条市町村及び組合は、被保険者の疾病及び負傷に関しては、次の各号に掲げる療養の給付を行う。ただし、当該被保険者の属する世帯の世帯主又は組合員が当該被保険者について第五十四条の三第一項又は第二項本文の規定の適用を受けている間は、この限りでない。
 
どこがそうかわかるわよね。」
 
出雲 「ただし、以下ですね、ふたパターンですか。」
 
鹿島 「その通り、じゃあ、除外するという該当条文を見てみましょう。
 
(特別療養費)
第五十四条の三 市町村及び組合は、保険料を滞納している世帯主又は組合員が、当該保険料の納期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に、当該市町村又は組合が当該保険料の納付の勧奨及び当該保険料の納付に係る相談の機会の確保その他厚生労働省令で定める保険料の納付に資する取組を行つてもなお当該保険料を納付しない場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認められる場合を除き、当該世帯に属する被保険者が保険医療機関等から療養を受けたとき、又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けたときは、その療養又は指定訪問看護に要した費用について、療養の給付又は入院時食事療養費等の支給に代えて、当該保険料滞納世帯主等に対し、特別療養費を支給する。
 
2 市町村及び組合は、前項に規定する厚生労働省令で定める期間が経過する前においても、当該市町村又は組合が保険料納付の勧奨等を行つてもなお保険料滞納世帯主等が当該保険料を納付しない場合においては、その世帯に属する被保険者が保険医療機関等から療養を受けたとき、又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けたときは、その療養又は指定訪問看護に要した費用について、療養の給付等に代えて、当該保険料滞納世帯主等に対し、特別療養費を支給することができる。ただし、同項の政令で定める特別の事情があると認められるときは、この限りでない。
 
第1項は被保険者資格証明書が廃止されたことによる変更で、第2項は新設された条文です。カッコ内は省き、言い換えは太字で示しました。条文の構成が少し異なりますが、かなり対比し易くなったと思います。ちなみに厚生労働省令で定める期間は1年間となっています。
 
(法第五十四条の三第一項の厚生労働省令で定める期間)
第二十七条の四の三 法第五十四条の三第一項の厚生労働省令で定める期間は、一年間とする。
 
ふたつのパターン、どこが違う?特別療養費の概略については「保険証など医療証の変更整理」で話したばかりだから大丈夫よね。」
 
出雲 「ええ・・・少し待ってください。うーん、特別の事情があるときは両方とも除かれています。そのほかとなると、第1項は、1年間が経過しても保険料を支払わない場合は特別療養費を支給するのに対して、第2項は1年間が経過しなくても特別療養費を支給することができる、と書いてあります。でも、なんか変だなあ、一年間滞納している人の方が悪い状態なのに特別療養費を支給してもらえるのに、そこまでいかない人がどうして特別療養費を支給してもらえるかもしれないのですか?」
 
鹿島 「あらら、そう読んじゃったのね。いいかな、特別療養費じゃなければ本来は何なの?」
 
出雲 「療養の給付という医療サービスです。うっ、そうか。そこから除かれる人の話でした、うっ、恥ずかしい。第2項は新設されたということでしたから、2024年12月1日以前は滞納期間が1年以上なければ保険証を返還させて被保険者資格証明書に替えて窓口10割負担の償還払いにしなかったのが、今度は1年以内でも窓口10割負担償還払いにできるということか、うへ、厳しくなったのですね。」
 
鹿島 「そうね、さらに特別療養費に切り替えるには次の第三項を見ると書面で通知することになっているわね。でも、機械的な運用は絶対に避けないと、滞納者対策ではなくなってしまう。公営国保の公務員さんは無職も含めて様々な職業の人を相手にしますが、私たちは同業同種で役員さんが仕事仲間だったりすることも多いから、状況をしっかり把握して払えないのか払わないのか見極める必要があります。保険料を本当に払えない人に窓口10割負担はまず無理ということを念頭に置きながら、慎重の上にも慎重を期して対応する必要があります。」
 
出雲 「わかりました。ところで、特別の事情というのはどんなものなのですか?」
 
鹿島 「それは国民健康保険法施行令に記載されています。今回の法改正で大移動したはずだけれど、あ、これだ。
 
(法第五十四条の三第一項に規定する政令で定める特別の事情)
第二十八条の六 法第五十四条の三第一項に規定する政令で定める特別の事情は、次に掲げる事由により保険料(地方税法の規定による国民健康保険税を含む。次条において同じ。)を納付することができないと認められる事情とする。
一 世帯主又は組合員がその財産につき災害を受け、又は盗難にかかったこと。
二 世帯主若しくは組合員又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと。
三 世帯主又は組合員がその事業を廃止し、又は休止したこと。
四 世帯主又は組合員がその事業につき著しい損失を受けたこと。
五 前各号に類する事由があつたこと。
 
まあ、このうち、三だけは組合員資格にも関わってきますね。さて、法54条の3には他にも条文があります。簡単に説明しておくから後で条文を確認しておいてください。第4項は特別療養費から療養の給付に戻すケース、滞納額の完納は当然として、著しい減少と今の「特別の事情」の発生を挙げています。第5項は第3項と同じで戻す場合も通知が必要と書いてあります。第7項と第8項は療養費なので後日やりましょう。うん、何?怪訝な顔して?」
 
出雲 「なぜ滞納などするのでしょう?」
 
鹿島 「私たち職員は天引きされちゃうから、わからないのも無理はないですね。個別事情はいろいろだと思うけれど、構造的な要因として考えられることを挙げておきます。ひとつは国保には事業主負担が無い事、ふたつめは加入している人の平均年齢が大きく異なる事、厚生労働省の資料(参照)によれば、2021年度(令和3年度)9月末時点での平均年齢は、共済組合の33.1歳が筆頭で、組合健保の35.7歳、協会けんぽの38.7歳、国保組合が40.2歳と続きますが、公営国保には54.4歳と突出して高い年齢層が加入しています。年齢は医療費と強い相関関係があります。それらのことから保険料が高くなってしまうのよ。国保組合もさらに公営国保運営に関心を持ち、ともに安定的な運営を目指すべきだと私は思うわ。さて、今回で済まそうと思っていた除外でしたが、随分長くなってしまいました。医療サービスの除外は次回としましょう。」
 
参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/iryouhoken/database/zenpan/kiso.html

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