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給付 保険医療機関等 その2 医師、歯科医師、薬剤師

鹿島 「「保険医療機関及び保険医療養担当規則」は、健康保険法に根拠を持ちますが、健康保険法だけでなく全ての公的健康保険制度の療養の給付、診療や調剤は全てこの準則に従う事は前回確認しました。その説明に入る前に今日は医師・歯科医師・薬剤師について話します。」
 
出雲 「何でしょう?」
 
鹿島 「この準則には保険医と書いてありますが、医師・歯科医師とは書いていませんね。医師・歯科医師がいかなる場合もこの準則に則して診察するわけではないという事です。医師と歯科医師の業務において国が指示をすることができるのは「公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合」だけです。医師法と歯科医師法全部は載せられないからここでは該当箇所だけ確認しておきましょう。」
 
医師法
第二十四条の二 厚生労働大臣は、公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合において、その危害を防止するため特に必要があると認めるときは、医師に対して、医療又は保健指導に関し必要な指示をすることができる。
 
歯科医師法
第二十三条の二 厚生労働大臣は、公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合において、その危害を防止するため特に必要があると認めるときは、歯科医師に対して、歯科医療又は保健指導に関し必要な指示をすることができる。
 
出雲 「薬剤師さんはどうなっているのですか?薬をくれるのは薬剤師さんですよね。」
 
鹿島 「あら、興味が出たのは、とてもいいことだわ。じゃあ、条文で確認してみましょう。」
 
薬剤師法
(処方せんによる調剤)
第二十三条 薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授与の目的で調剤してはならない。
2 薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。
 
出雲 「そうなっているんですね。知らなかったな。実は高校の同級生に薬学部に通っているのがいるんですよ。優秀な奴でしたが、でも、これじゃ、機械みたいに調剤するだけで、物足りなくなっちゃうじゃないかなあ。」
 
鹿島 「いえいえ、次の条文も確認してください。薬剤師さんの仕事はとても大切よ。」
 
(処方せん中の疑義)
第二十四条 薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。
 
出雲 「単に処方箋通りに調剤して患者さんに渡せばよいという事ではないのですね。薬剤のプロとして医師と歯科医師に場合によっては疑問を呈し対等に意見を言えるという事ですね。」
 
鹿島 「実は私の父がいろいろ病気を持っていてね、いくつかの病院に通っているの。でも、薬局はひとつに決めていて、そこで全部処方してもらっているらしいのよ。父の話では、検査結果とかも見てくれて、何度か医師に連絡を取って、薬を変更してもらったり、やめたりしたことがあったらしいの。わからないことも丁寧に教えてくれるらしくて、父は本当にその薬剤師さんを信頼しているわ・・・ちょっと、何見てるの?」
 
出雲 「すみません、次の条文を目が追ってしまいました。へえ、すごいですね。」
 
(情報の提供及び指導)
第二十五条の二 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
2 薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
 
鹿島 「父の薬を取りに行く時があって、お世話になっている挨拶がてら薬剤師さんと話したんだけど、なかには病院毎に異なる薬局を選んで、なおかつ、薬局ごとに「お薬手帳」を持っている人もいるんだって!それぞれの薬局の薬剤師さんは情報を共有できていないから、どの薬剤師さんも飲み合わせや体の状態とのチェックができるわけがないと嘆いていたわ。マイナ保険証でもタイムラグがあるからお薬手帳は必要だけれど、お薬手帳と薬局はひとつに決めておいた方が患者さんにとって絶対にいいわね。画面を見せてもらったけれど、父が通っている薬局では飲み薬のチェック機能が自動化されていたし、過去に提供された薬剤の使用期限なんかも分かる仕組みになっていて感心しちゃいました。」
 
出雲 「すみません。医師、歯科医師、薬剤師、それぞれの業務というか、地位というか、立場というか、そんなことはおおむね理解しましたが、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」とどう関わってくるのですか?」
 
鹿島 「医師と歯科医師に指示できるのは「公衆衛生上重大な危害を生ずる虞がある場合」なのは確認しましたが、それは医療と保健指導そのものの事であって、保険医療機関において、保険医として、診察などについては別で、それらについては「保険医療機関及び保険医療養担当規則」に則してやってもらうという事です。口を出しますよという事です。」

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