![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171255952/rectangle_large_type_2_9315f16b0c295448c37f3cf4cd553b86.png?width=1200)
給付 一部負担金 その4 十円未満四捨五入
鹿島 「今日で一部負担金については卒業しましょう。細切れにしてしまいましたが、残っている条文は3つですね。長くなるから一部省略しましたが、第43条は保険者が一律に一部負担金の割合を減じる場合、第44条は組合員の個別の事情による申請に基き、被保険者単位、事実上は世帯単位で一部負担金を減額・免除・猶予する場合でした。難しい条文ではないから、ささっと読めますね。」
第四十二条の二 前条第一項の規定により一部負担金を支払う場合においては、同項の一部負担金の額に五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。
第四十三条 (省略)
4 前条の規定は、第二項の場合における一部負担金の支払について準用する。
第四十四条 (省略)
3 第四十二条の二の規定は、前項の場合における一部負担金の支払について準用する。
出雲 「一部負担金は全て10円未満四捨五入で保険医療機関に支払うということですね。」
鹿島 「その通り。条文は簡単なのですが、高額療養費や一部負担償還金の計算が合わないという問い合わせは結構あります。食事代や部屋代、選定医療などが原因ということが多いのだけれど、細かく合わないのはこの10円未満四捨五入だったりすることもあるわ。保険医療機関で請求される一部負担金は支払いの都度計算されるのに対して、保険者が支払う高額療養費や一部負担償還金はレセプトの月単位合計点で計算されるから、その事も微妙に合わなくなる原因になりえます。ここで私が話したかったのは、組合員さんからの問い合わせは、制度一般について質問しているわけではないから、一般論で答えるのではなく、必ず領収書を見せてもらうか詳細を聞き取って、レセプトも確認して、具体的に計算してあげることが大事だということです。なかには診療報酬の査定があったりして、かなり複雑なケースもそう珍しくありません。給付金の計算は電産がやってくれるけれど、どうしてその金額になったかという問い合わせがあったら、被保険者さんが納得できるように具体的に回答してください。」
出雲 「診療報酬の査定って何ですか?」
鹿島 「そうか、説明してなかったわね。被保険者が保険医療機関で受療すると、病名と診療内容、金額、といっても一点十円の点数なのだけど、これらが記載されたレセプトが月単位で国保連などに送付されます。そのレセプトの病名と診療内容に齟齬が無いかとか、医学的に見て診療内容が過剰ではないかとか様々な審査があります。これらの不都合が確認されると、レセプトは保険医療機関に戻されたり保険点数が減額されたりします。この減額された場合を査定と呼んでいます。減額された場合には保険者はその金額で高額療養費などを計算するし、減額があったという事についてその人に連絡がいくこともほぼないから、組合員さんからすると、高額療養費や一部負担償還金が支払われたときに、「あれ、少ない!?」ということになってしまうのです。」
出雲 「その場合は、一部負担金も患者さんに返金されるのですよね?」
鹿島 「いえ、保険診療には幅があって範囲で認められている場合も多いのね。この範囲内で過剰ということなのであれば、違法ではないし、実際に過剰分とされた療養サービスを受けているわけだから、その分を患者さんに返金する義務まではないでしょうというのが私の考えです。裁判になるとどうなのかしらね。もともと範囲で決めているものを過剰だとされるようなことが続くと範囲の一番低い基準でしか療養を受けられなくなる懸念もありますね。経験的にいうと患者さんに返金があるのは単純な一部負担金の計算ミスくらいかな。とにかく、そういうことが判るのも領収書とレセプトをきちんと調べるからです。問い合わせには誠実に対応してくださいね。」