コミュ障は工場でも働けないのかもしれない

今日は今月で唯一遊びの予定のない週末だ。

…というわけで、


働かなければならない。お金!!!



しかし案の定好きな人の工場の募集は出なかった。
日月はなんとか出たけれど、
わたしはもちろん地元にいない。(恒例)

そんな気がしていたので、
わたしは数ヶ月ぶりに2番手の工場に申し込んだ。
前に来たのは5月?6月?
ごめん記憶にない。

わたしは本当に好きなこと以外全く覚えていない女なのだ。(最低)


久しぶりなので緊張する。
前に行ったのはたしか日曜日で、
ここでは珍しくとても優しいお兄さん?おじさん?と
(食品工場なので帽子とマスクで目元しか見えない)
なんか楽しく働けたような。
でもあのお兄さんたしか「また日曜日においで」って言ってたような気がする。
休みは月曜と木曜って言ってたけれどなぜだろう。
今日は土曜日だけど怖い人でもいるのかな。
ちょっとビビる。

ここはお昼休みがあるので、
昼食を持参しなければならない。
一応パンの自販機はあるけれど物足りないので、
わたしは朝からお弁当を作って向かう。
家からもかなり遠く、
駅から歩く時間と着替えの時間を考えると、
好きな人の工場に行くときよりも、
40分も早く出なければいけない。

わたしは昨夜スーパーで品出しのバイトをして、
帰ってきたら好きな人と顔が似ている柳楽優弥のドラマを見てちょっと夜更かししてしまった。
でも6時に起きないと間に合わない。平日より早い。

く、苦行…。


お弁当と朝食で限界を感じたので、
眼鏡のまま眉毛だけ書いて出てきた。
食品工場はとても寒いので眼鏡は曇るけれど、
コンタクトを入れる元気も時間も無かった。

好きな人の工場に行くんだったら、
こんな厚着して来なくても、
お弁当なんて作らなくても、
8時過ぎに出れば間に合うのに!つら…。


工場に着くと、
パートのおばちゃんに「ねねちゃん?」と聞かれた。
わたしはねねちゃんではない。
また誰かと間違えられているのだ。(あるある)
食品工場は髪も口元も制服で隠れるので、
私服だとパートさんでも誰かわからないらしい。


現場に行くと、
眼鏡男子に声をかけられた。
あれ?前回の人よりも若そうだ。あの人は?
よくわからないけど、
今日はこのお兄さんに付いていけば良さそうだ。
お兄さんは何回目なのかだけでなく、
前回いつ来たかまで聞いてくれたので、
わたしは苦笑いして「5月か6月です…」と言うと、
もう一人の初めて来たタイミーさんと一緒に教えてくれるそうだ。よかった。

解凍したお肉をビニールから出したり、
冷凍の魚をトレーに並べたりした。
なんとなくやった記憶はある。
わたしは洗い物が大嫌いで料理も苦手なのだけど、

やっぱり手袋をしてても手が濡れると、めちゃくちゃ不快に感じた。


考えてみれば倉庫でも工場でも品出しでも、
グチョグチョのお肉や魚を触ることなんてない。
せいぜいクリームの漏れたパンくらいだ。
そしてずっと冷凍か解凍したものを触っているので、冷え性ではないわたしでも手が冷たくて辛い。
わたしはやっぱり食品関係は苦手かもしれない。


やっとお昼休みになり、
お弁当とお菓子を食べると、
わたしは廃人のようになっていた。


つ、つらい…。




好きな人の工場のほうが寒くないし手も汚れないし、
彼がいれば時間が過ぎるのは早い。
普通の仕事ってこうなのか。
わたし来月からずっとこうなのか…。絶望。


午後からも冷凍の魚をひたすら並べた。
お昼を食べたので眠い。寝たい。帰りたい。
でも明日明後日は6時に家を出るのだ。きっつ。


でもあと残り時間はあと2時間になった。生きろ俺。
そんなことを考えていたら優しい眼鏡男子が突然、


「お2人ともまた来てくださいね!

仕事早いので!」


と声をかけてきた。
たしかに今日一緒に働いてる若い女の子は、
わたしよりもずっと仕事が早いので、
たぶんわたしよりも働いている。
わたしは彼女と違ってただの鈍臭いおばちゃんだけどわたしもいいの?お世辞?


今まで仕事の指示しか出してこなかった眼鏡男子は話し出した。

ここは1年半前からタイミーを取るようになったのだけど、
2週間に1回くらいは変な人が来るのだと言う。


変な人はここに来たときから大体もう変だそうだ。
言ったことを言った通りにできない人が、
性別関係なく定期的にいるらしい。 
おじさんだけじゃないのか!
そもそも時間にやってこなかったり、
黙って立っているだけだったり、
1人でずっとぶつぶつ言ってる人や、
休憩を勝手に30分多く取った人までいたらしい。


そういえば眼鏡男子は作業を教える度に、
「1回ちょっとやってみてください」と言って、
わたし達の作業を確認していた。
彼はそうやって今日のタイミーが大丈夫な人かどうか確認していたようで、
「ずっと見てたけどお2人は大丈夫!仕事早いし!」
ととても褒めてくれて、名前までチェックされた。
その日だけのタイミーでも、
きちんと仕事ぶりを見てくれる人もいるんだなと思った。
彼が言うには、
変な人が来るとずっと見ていないといけないから、
自分の作業ができないらしい。
そしてレビューが見たいから働かないのにタイミーのアプリをスマホに入れたと話していた。
そんな人もいるのか!


わたしの好きな人もこんなふうにタイミーのことを見ているのかなと思う。


彼はどんどんタイミーと接触しなくなっているから、
きっと嫌な人がいたんだと思う。言わないけれど。
わ、わたしじゃありませんように!
夏くらいからあの工場の他の人も、
知ってるタイミーばかりだと嬉しそうだったし、
昨日行った感じの悪いスーパーも、
なんだかんだ毎週行っているからか、
初回は鬼のように冷たかったチーフのおばちゃんが、
最近は挨拶してくれるようになった。


わたしは眼鏡男子に、
「普通工場で働いてたら知らない人に会わなくて済むのに、毎日知らないタイミーの相手するのストレスじゃないですか?」と聞いてみた。
彼は「ストレスです!」と即答した。
やっぱりそうだよなぁ。

きっと接客とかが嫌で工場に勤めているのに、
毎日知らない人の面倒を見るなんて予定外だろう。


たぶんわたしの好きな人も嫌なんだろうなと思った。
工場勤めでも毎日知らない人の世話をしなきゃいけないなんてコミュ障には厳しい時代だ。


その後も他の部署の話や変なタイミーの話で盛り上がった。
前にいた優しいお兄さん?おじさん?はもうここにはいないらしい。
タイミーの女の子は就職が決まっている大学生で、
眼鏡男子は高卒で電車で通っているそうだ。


ここはわりと大手のきちんとした会社だし、
眼鏡男子もキビキビ働いてまっすぐ目を見てハキハキと話すとても感じの良い好青年で、
たぶん端から見たらわたしの好きな人よりもずっといい男なんだと思う。頭ではわかってる!
でもあの彼でも高卒なら、
好きな人もきっと高卒に違いない。


眼鏡男子はわたし達が帰るまでしつこいくらい
「また来てくださいね!」と言ってきて、
「次来たらここにエプロンあるから!」
と教えてくれた。

よっぽど変なタイミーが嫌なんだろう。


わたしも運送会社で知らないタイミーと2人になるのめちゃくちゃ嫌だから気持ちはよーくわかる。
ここも1人か2人しか来ないから逃げられないしな。
(眼鏡男子曰く1人とかしか募集が出ないから、
1人で働けると思ってやばい奴が来るらしい)

冬は室温1℃の中で凍った肉を混ぜなければならないと聞いてわたしはゾッとしたけれど、
好きな人の工場の募集が出なくなったら仕方ない。


わたしも「◯さんは土日はいつもいますか?」
と確認しておこうと思って一応聞いたら、
「いたりいなかったりします」と言われた。

ここもシフト制か…。


でも他の人も優しいらしい。
朝は早いし弁当作らなきゃいけないし髪もぐちゃぐちゃになるし寒くて死にそうだけど、
この現場はやっぱり悪くないぞと思って帰った。