アラサー、好きな人の悪口を聞いてしまう

2時間の仕事を終えて帰っている。
今日の案内役はクソ女だったため、
やっぱり彼のいない階にご指名を食らってしまったので、
もし今日彼がいても泣いてたかもしれない。
 

お盆休みだからか不慣れなタイミーの人が多く、
彼のいない階に着いても誰に指示を貰ったら良いのかみんなわからないみたいだった。
ここは見るからに怖そうな顔のおばちゃんが仕切っているのを知っているわたしは、
彼女に「タイミー3人来たんですけど、どこに入ったらいいですか?」と聞いて持ち場に入った。
クソ暑い工場で熱いタオルをひたすら機械に入れる。
隣の外国人の女の子は優しかったけれど、
やっぱり暑くて辛かった。
明日もきっと彼はいないんだろうな。

この階に初めて来たのは去年の12月だ。
好きな人が休憩のとき新しいパートさんと一緒にわたしも3階に行ってと言ったので、
「初めてなんです」と言うと、
彼は「早めに行って教えてもらって」と少し早めにわたし達を移動させたら、
例の怖い顔のおばちゃんに「こんなに早く来るなんて聞いてないけど」といきなり睨まれたのだ。
「ここ怖いしやだよぉ早く帰りたいよぉ」と思いながら作業していたら、
お昼休み中のはずの彼が飲み物を片手に様子を見に来てくれて、
「大丈夫?」と声をかけてくれたので、
わたしは満面の笑みで「大丈夫です!!!」と返してその後はめちゃくちゃご機嫌で仕事をした。 
その日の帰りも超ご機嫌だったので、
わたしは工場の近くのお店で家族にマフィンを買って帰ったけれど、
母親に味の感想を聞いても、
「あんたがうるさすぎて食べるのに集中できない」と文句を言われた記憶がある。

だからここに来るといつも、
休憩中のいつもより少し気の緩んだ彼が、
学校の先生が適当に見回りに来るみたいに、
飲み物を片手に持って「大丈夫?」と言ってくる姿を思い出す。
あのときの彼も最高にカッコよかったな。(残像)

それにしてもわたしが張り切ってガンガン仕事を入れると決まって彼は休みだなとか、
わたしって一生こうやって好きな人と仲良くなれないまま死ぬんだろうなとか、
同担の女の子が来ないとき彼も休みだからやっぱり付き合ってんのかなとか、
彼が一言「俺いないよ」と言ってくれればこんなに悩まなくて済むことなのになとか、
もし本当に四十九日でいないんなら地元遠いのかなとか、
お盆だから地元で知り合いと再会して付き合っちゃったりとかしたらどうしようとか、
いろんなことを考えながら作業した。


昨夜寝る前ふと思ったのだけど、

わたしは結婚したいわけでも彼氏が欲しいわけでもない。
わたしが欲しいのは彼なのだ。


あの人じゃないならわたしは別に男の人なんていらないと思っているのに気づいて、
これじゃ大学生のときと変わんないなと思った。
あのときはそれで上手くいったけれど、
おばさんになったらどうにもならないこともあるのだ。
でもわたしは他の男なんかいらない。
こんなんだから11年も彼氏いないんだろうな。
納得。

最近仲良くなったタイミーさんと一緒に帰った。
今日は1人でいたら落ち込みそうだから、
話せる人がいてよかったと思う。感謝。

彼女は今日はキツいポジションだったらしい。
あそこ軽いもの来ないからキツいですよねなんて話しながら帰った。
いつもいる社員の人達の話になって、
わたしが仕事のできないおじさんの悪口を言っていたら、
彼女は「あの背の小さい男の人が苦手」と言った。
彼のことだ。なんで???
彼は仕事ができるしタイミーもよく見てるから、
おばさん受けは良いはずなのに。
話を聞いたら、
彼女が初めて来たとき彼は仕事を教えるのが雑で、
しかも急かしてきたという。
え?!雑な説明はなんとなくわかるけど、あの優しい彼が初心者を急かす?!信じられない…
そんな大変な日だったんだろうか。
わたしは思わず彼に同情してしまう。


彼女は「しかも初対面からタメ口で、なんか上からだし馴れ馴れしいし、あの人は絶対にまともな教育を受けていない人だと思う!」と言った。


…ごめんわかるわ。
わたしも彼の第一印象はそんな感じだ。
みんな思うことは同じなのか。
「明らかにこっちのほうが年上なのに、友達みたいにそれやってって言ってきますよね!」
と思わず笑ってしまった。
「でもあの人は優しいしいい人ですよ!」ともちろんフォローする。好きな人だもの。
「この前わたしが作業してるとき冷風扇こっちに向けてくれましたよ!」と言うと、
「好かれてるんじゃないですか?」と言われてわたしはちょっと嬉しくなってしまったけれど、
彼女は信じられない様子だった。
いい人なのにな。彼を嫌がる人もいるのか。 


「絶対にまともな教育を受けていない人だと思う!」


がツボってしまって、
わたしは1人になってからも笑いが止まらない。
彼女は2回も言っていた。
「他の仕事したことないんじゃないか」とか、
「他の仕事は絶対にできないと思う」とまで、
それはそれはクソミソに言っていた。
おもしろすぎる。
わたしが彼に1年以上片想いしていて、
彼に会いにここに来ているなんて、
彼女は夢にも思っていないだろう。

そんなことを彼女に言ったら全力で止められそうだ。
可笑しい。やっぱ今日来てよかったかも。
明日も明後日も彼はいないだろうけど彼女はいる。
もしかしたら神様がわたしに会わせたいのは彼ではなく彼女なのかもしれない。