本業よりタイミーのほうが働きやすい説
さて今年初の運送会社に行ってきた。
キャンセルが出たらしく、
いつもの女の子が来ていて、
わたしは安心してはしゃいでいた。よかった。
去年の仕事納めの日、
「よいお年を」と言ってくれたドライバーさんは、
一番に「今年もよろしくお願いします」と言ってくれたし、
他のドライバーさん達もみんなじゃないけど、
わたし達が何も言わなくても挨拶してくれる。
「お正月も働いてたんですか?」
と聞いてくる人も何人かいた。わたしは一体どんだけ貧乏な女に見えてるんだろう。
今日はやっぱり月初だから荷物の量が多くて、
ラップ巻きができるものがまだ無いので、
わたしは若い男の子達と荷物の仕分けをしていた。
重たいものは男の子達がいつの間にか分けてくれているし、
素人のわたしがなんとなく積んだ荷物も、
プロ達が崩れにくい積み方に直してくれるので、
わたしは安心して作業ができる。
ここの男の子達には、
「〇〇どこに置きますか?」と緊張せずに聞けるし、
「ちょっと積みすぎちゃいましたかね?」と聞けば、
彼らは「ちょっと積みすぎですね」と笑って直してくれる。
みんな連休明けの夕方で疲れていたところに、
いつもなら考えられない量の荷物が来ていたので、
うんざりしていたけれど、
わたしは楽しくて荷物をどんどん分けていった。
好きな人の工場も人が足りていなかったから、
キャンセルしようか正直迷ったけれど、
やっぱり今日こっちに来てよかったな!
るんるん!
ラップ巻きをしていても、
周りの男の子達は鈍臭いわたしにぶつからないようにすごく気を遣ってくれる。
わたしは男性が巻きにくそうな、
荷物が少なくて低いパレットを巻くようにして、
気を遣うくらいしかできない。
ここは寒いからわたしはかなり厚着して来ているし、
ここの男の子達なら、
別にお尻がぶつかろうが全然気にしないけれど、
もしかしたら彼らはそうではないのかもしれない。
でも10日ぶりの力仕事もラップ巻きも、
いつものようにできてちょっとホッとした。
外に出ると、
いつも几帳面なドライバーさんが挨拶をしてきて、
わたしに伝票を丸々渡してくる。
最初はどうすればいいのかわからなくて困ったけれど、
だんだん何となくだけどわかるようになってきた。
18キロの一斗缶の並べ方を教わった後に、
いつも優しいおじさんが現れて、
「重いのは俺がやるから、
軽いカップ麺のほうやっといで!」
と言ってくれたので、(この人はいつもこうなのだ)
わたしは「いいんですか?ありがとうございます!」と言ってそちらへ向かう。
カップ麺を乗せるパレットが、
わたしの力で降ろせるかどうか、
微妙な高さにあったので、
頑張って降ろそうか止めておこうか悩んでいたら、
司令塔おじさんがフォークリフトでやってきて、
降ろしてくれた。
今のこそめっちゃ王子様やん!!!
とても助かったので、
わたしはきちんとお礼を言う。
なんて働きやすいんだろう。
わたしは別の現場から戻ってきたいつもの女の子に、
「本業よりタイミーの現場のほうがずっと働きやすいよねぇ!!!みんな優しいし!」
と言うと彼女も同意してくれた。
久しぶりの運送会社はどこに行っても楽しくて、
心なしかチャラい男の子も、
いつもよりカッコよく見えた。
なんか彼がすごくスラッとして見えたのは、
年末年始はずっと、
ずんぐりむっくりしている、
わたしの好きな人ばかり見ていたからかもしれない。
時間になったので上がっていいのか悩んでいたら、
几帳面なドライバーさんが司令塔おじさんに聞いてくれて、
いいよと言ってくれた。
事務所で女2人でお喋りしていたら、
元酒屋のおじさんが、
「お正月はデブ活しちゃった」と入ってくるので、
「ここで働いてたら絶対痩せますよ!」
と笑って返事をする。
平和な世界。
いつもの女の子に駅まで送ってもらって帰った。
毎回でもわたしはきちんとお礼を言って、
「気をつけてね!」と言って別れる。
彼女のおかげで、
わたしは1人で冬の夜の流通団地を20分も歩かなくて済んでいるので本当にありがたい。
仕事帰りの好きな人に、
電車でばったり会ったりしないかなぁなんて、
わたしは地味に毎回期待しているので、
彼の工場の最寄り駅に着いたらキョロキョロしてしまうけれど、
今日も彼はいなかった。
もう帰っていますように、
彼がまだ働いていませんようにと願うしかできない。
好きな人は今日、
9日ぶりに工場に来なかったわたしに、気がついただろうか。
「そういえば今日あいつ来ねえな」
と一瞬でも思ってくれたら、
わたしは9連休に9連勤した甲斐があるのだけど、
真相がわかる日は来るのだろうか。
一応私語厳禁の好きな人の工場に行くと、
わたしは無言で黙々と作業しているけれど、
運送会社に来たら、
いつも結構はしゃいでいる。
誰が見ても間違いなく、
いつもの女の子よりもわたしのほうが何倍もやかましいはずだ。
いつか好きな人にも、
わたしのこういうところを見てもらえる日が来たらいいなと思う。
そしてわたしもいつか、
ここの男の人達と話すときみたいに、
緊張しないで自然に好きな人と話せるようになりたい。