誰でもいい男と誰でもよくない女

なんだかずっと気が晴れなくてブルーな気分だ。
生理のせいだろうか。天気のせいだろうか。
どれくらいブルーかというと、
運送会社に行くのに初めて電車に乗り遅れそうになったくらいだ。
わたしのやる気と乗る電車は比例するので、
本業や陰気なパン工場に行くときは普通に1本乗り遅れたりしていたけれど、
運送会社に行くときはこんなことはなかったのに。
わたしはやっぱり落ち込んでいるのだ。
原因はわかってる。


今までタイミーはわたしにとって、
イケメンに会いに行けるアプリだったけれど、
今では寒いところに行くアプリでしかなくなってしまった。



今日も地元は信じられないくらい寒い。
わたしは冷え性でも寒がりでもないけれど、
生理中だからか昨日も今日も家にいてもずっと寒い。
昨夜帰ってきてからも身体があまりにも冷えていて、とても自力で何とかできる気がしなかったので、
母親が作っていった鍋を食べて復活を試みた。
わたしは鍋なんて大嫌いだし、
本当は夜遅くにご飯なんて食べたくないのに。
それでも鍋に頼るしかなかった。
それくらい身体が冷え切っていたのだ。
冬の流通団地、わたし無理かも。


今日も何度もタイミーの通知が来たけれど、
やっぱり好きな人の工場ではなかった。
わたしは土曜の夜は飲み会だから、
朝早くて前髪がぺちゃんこに潰れる食品工場には、
今週末は土日どちらも行けそうにない。
去年行っていた運送会社の近くの倉庫も、
春にしていたティッシュ配りの仕事も、
寒いから無理。
今まであんなにわくわくして見ていた通知に、
最近わたしはうんざりしてきている。
スマホを見る楽しみがすっかり消えてしまった。


なんか今はもう、
世界中の男性達に可愛いとかキレイとか褒められてもダメなんだろうなと思う。



わたしは昔からずっとそんな感じだ。
0か100しかない性格なので、
世界中の男性達に好かれたとしても、
自分が好きな人に好かれなかったら、
もう女としての自分には何の価値もないのだ。
わたしにとっての男性は、
好きな人とその他の人達でしかないのだから。

損な性格だとは思うけれど、
でも女の人って男の人とは違って、
きっとみんなこうなんじゃないのかなと思う。
好きな人に会えない世界なら、
もう誰にも好かれなくてもいいような気がして、
もう何も頑張らなくてもいいんだと少しだけ気が楽になっている自分がいるのも事実だ。


好きな人にはしばらく会えそうにないし、
飲み会が終わったらわたしは地元に1人だし、
バイトはどこに行っても死ぬほど寒いし、
本業も相変わらず出しゃばりババアがやりますやりますと1人でやかましいので見ないようにしている。
毎日そんなんだからか、
今朝も起きたときからずっとわたしはブルーで、
それでも推しのライブビューイングの案内が来ていたので申し込んだ。
今はライブビューイングでも5000円もするのか!


でも年末の日曜の夜に予定が入ったのは地味に嬉しい。


わたしはいつものくせで、
好きな人の工場はその頃にはもう募集が出ていたりするんだろうかと考えてしまってまた気が遠くなった。
1ヶ月半後のわたしが、
一体どこで何をしているのかはわからないけれど、
どうせならこの日もバイトはしないで、
1日好きな服を着て街をうろつこうと思った。
どうせ他に働きたい現場なんてないのだ。


もしかしたらこの前、
珍しく仕事には着ていけない服を買ったから、
こんな予定が入ったのかもしれない。



まるで神様が新しい服を着て行く場所を作ってくれたみたいだ。
今さらミニスカートなんて買ったって、
どこにも履いていくところはないと思っていたのに。
楽しかったまち歩きは終わってしまったけれど、
なんだかんだ来月も2週に渡って推しのライブの予定が入っていて、
まるでわたしに生きろと言っているみたいだ。
推しは学生のときから20年いつもこうなのだ。
わたしが落ち込んでいると、
ツアーの日程が発表されて落ち込んでいる場合じゃなくなったことが一体今まで何回あっただろう。


わたしが33年もこんな残念な人生を生き延びて来れたのは、
間違いなく推しのおかげでもあるのだ。


そんなことを考えながら今日も運送会社に向かった。
今日は珍しく可愛い女性タイミーが来ていたので、
「新人は教えるの面倒だから使いたくない」
といつも言っているチャラい男の子が、
びっちりマンツーマンで教えていた。
そのためわたしは久しぶりに1人で快適に作業することができた。
いつもこうなら本当に楽なのに!
いつも彼があんなふうに丁寧に他のタイミーの面倒を見てくれたら、
面倒なのがわたしに張り付いてこないし、
リピーターも増えてみんな楽になりそうなのにな。
きっとチャラい男の子は、
今日は若くて可愛い女性タイミーに夢中で、
わたしが他のドライバーさんの荷造りをしたついでに彼の荷物も作っておいたことには気づかないんだろうけど。


わたしの好きな人がああいう男じゃなくてよかったとは思う。


いやわかんないけど。
もしかしたら彼も若くて可愛いタイミーが来たら、
いつもより話しかけたりしてたのかもしれないけど。
でももうそんなこと確かめる術も無いのだ。


誰でもいい人はいいよな。(ため息)


わたしもあんなふうにちょっとカッコいい男なら誰でもいいような軽い女だったら、
会えない男にいつまでも固執しなくて済むのだろうか。
いろんな人に興味を持てる性格だったら、
こんな独りよがりの片想いばかりじゃなくて、
きっといろんな経験を積めるんだろうな。 
そのほうが絶対人生楽しいに決まってる。
羨ましい。

わたしは一体いつになったら、
今好きな人がどうでもよくなるんだろう。(遠い目)


昨日わたしはいつもの女の子に、
「イケメン来ないかな〜」なんてまた言ってたけど、
本当はどんないい男が来たって、
好きな人よりイケメンに見えるはずがないのだ。
そんなわたしの性格を知っているのは、
きっとうちの母親くらいだろうけど。
よその人が見たら、
きっとわたしもイケメンなら誰でもいいような馬鹿な女に見えているに違いない。
誰もわたしのことなんかわかってくれるはずがないのだ。わかってる。

あと運送会社で一番話しやすい新人の男の子が、
今月で辞めてしまうらしくてがっかりした。
わざわざ教えてくれてありがたいけれど。
話せる相手がまた1人減ってしまう。つまらない。
わたしの好きな人も次行ったとき辞めていたらどうしようと思うと血の気が引く。


こんなふうに毎日適当に過ごしていても、
確実に時は流れていて状況は日々変わっているのだ。
変わらないのはわたしの好きな人への執着くらいなのかもしれない。