わたしの顔は弱い

この前バイト帰りに電車に乗っていたら、

他の席も空いているのに、
わたしの隣を目がけておじさんが座ってきた。


なんなの?気持ちわりい!!!!!
隣に来たおじさんはかなり酒臭く、
1人で何か言っている。
「あっちに行け」と聞こえたけれど、
わたしに言っているのか独り言なのかわからない。

バイト帰りで疲れていたし、
大きい駅まで2駅なのできっとそこで降りるだろうと思い、
わたしはそのまま座っていることにした。
おじさんはスマホを見て1人でなぜか怒鳴っている。 
向かいの席の女性も怪訝な顔をしていて、
やっぱりちょっとやばい奴のようだ。
わたしは念のため非常事態のときに押すスイッチの場所を目で確認した。
おじさんは突然立ち上がってウロウロしだした。
頼むからそのまま降りてくれやと思うけれど、
やっぱり次の小さい駅では降りてくれない。
でもここでウロウロするくらいだから、
きっと次の駅では降りるだろう。
大きい駅に着くと、
わたしの予想通りおじさんは降りていった。
降りるときに「あいつ根性あるわ」と聞こえたので、
やっぱりさっきの「あっちに行け」はわたしに言っていたのかもしれないと思った。


わたしの想像だけど、
あのおじさんはきっとわたしのような地味で大人しそうな女を狙って隣に座っては独り言を言い、
女が去っていったら自分の勝ちだと思うような、
そんなことでしか優越感を感じられない、
小さい小さいおじさんなのではないだろうか。
絶対相手を見てやってるのが何よりも腹立つ。
もしわたしが派手なギャルだったらきっと隣には来ないはずだ。
しかし女が逃げていくので満足できなくなったら、
いつか刃物とかを持ち込みそうな気がするのはわたしだけだろうか。

ああいうのマジで公共の場に現れないようにしてほしいよ!!!



次の日電車で普通の男の人が隣に座ってきただけで、
わたしは無意識にゾワッとしてしまった。
そのうち気にならなくなるとは思うけど、
今日もまだ自分に妙に近寄ってくる人が、
なんか顔を覗き込んで来るような気がして、
正直怖くて怖くて仕方ない。


わたしは道聞かれ顔だ。





この前も立ち止まってスマホを見ていただけなのに、
全く知らないおばちゃんに、
「ねーえ、〇〇駅ってどっち?」と聞かれた。
歩いていただけなのに、
全く知らない観光客のおばちゃんに、
「美味しいラーメン屋さん知らない?」
と突然聞かれたこともある。 
もっとラーメン食ってそうな人に聞けよと思うけれど、
たまたま目の前を暇そうに歩いてた無害そうな女に聞いてみたんだろう。


今日タイミーで行ってきた食品工場では、
休憩中にウトウトしていたら、
隣のテーブルも1列空いていたのに、
知らないおばちゃんが突然わたしの目の前にカバンをドンと置き、
おそらく同じレーンで働いている人達がなだれ込んできた。
普通休憩室で疲れて伸びている人の真向かいの席に座るだろうか。
他にも空いている席があるのに。
しかもあのババアは嫌がらせのように、
寝かかっていたわたしの目の前に、
底のついた硬そうなカバンを音を立てて置いたのだ。


あれは間違いなくタイミーへの嫌がらせだと思う。



一緒に作業をしているタイミーにはできないけれど、
違う部署にいるタイミーになら嫌がらせの1つくらいしても良いと思うのだろうか。
きっとタイミーだからやられたんだろうなと思う。
見下しているから平気でそういうことができるのだ。
これだから食品工場のババアは嫌いなのだ。陰湿。


わたしは高校時代も陰キャぼっちだったので、
お昼休みとかに近くの席の陽キャの周りに人が集まってくると、
奴らはわたしに何も言わずに勝手にわたしの机に座り始めたりした。
わたしのことなんか見えちゃいないという感じで、
本当に失礼すぎて腹が立った。
「たいして可愛くもないくせに調子に乗ってんじゃねえぞブス」
といつも心の中で言っていた。
(だってホントに可愛くないんだもん!)
なんかそれを思い出した。
わたしは高校生のときから何にも変わっていない。
ただわたしも相手もおばさんになっただけだ。


今日2社目の陰気なパン工場に行くとき、
わたしはいつも一駅手前で降りて、
好きな人が働く工場の近くを通るようにしている。
運命が味方してくれれば、
偶然彼に会えたりするのかもしれないけれど、
わたしの人生にそんなことは起こらない。

だから今日はすっぴんに眼鏡だけど、
平気で工場の近くを歩いてきた。
駅の入口で彼の工場のパートさんとすれ違った。
パートさんもこんな早くに帰っているのか、
そりゃタイミーの募集も出ないわけだよと思った。


働いてるだけで柳楽優弥に会える人はいいよねと思う。

(※好きな人は柳楽優弥に似ている)


わたしは働いても働いても柳楽優弥には会えないから来週ちょっと推しに会いに行ってきます。
また7、8万かかるのでこれから死ぬ気で働きます。
彼のいないところで。


彼も今日出勤しているんだろうか。
後始末をして退勤するんだろうか。
いつも願うように見ていた靴箱を思い出した。
今日もあそこに水色のCONVERSEの外靴がまだあるんだろうか。
新人のパートさんにデレていたりするんだろうか。
もう何もわからない。

わたしはいつまたあそこに行けるんだろう。



なんかもうこのまま彼には会えなくなりそうな気もする。
本当はどの会社もタイミーなんかより直接雇用の人でシフトを埋められたら良いに決まってる。
誰だっていちいち教えなくても仕事をしてくれる人のほうが良いに決まってる。
わたしだって瞬殺の彼の工場の募集を血眼で待って、
入れるかどうか彼がいるかどうかに一喜一憂せずに、
今のままどの会社にもこだわらず上限も気にせずに、なんとなくバイトをしているほうが正直言って楽だ。
そしてわたしにはチケットを買えば会いに行ける、
頼もしい20年来の推しもいる。

このまま楽になるのも悪くないのかもしれない。