アラサーは頼むから普通に好きな人と会えるようになりたい
本業はまた10分残業になった。
うちの会社は高卒で入った女の子が大事に大事に育てられているのだけど、(わたし達はただの取り巻き)
会社に期待されている彼女は東京で研修があるため、
その間の仕事をわたしと出しゃばりババアに任せたいと言うので、
出しゃばりババアはまたやったことない作業をやりますやりますとめちゃくちゃ張り切っていた。
わたしはいつもの作業があるので、
他の社員さんに任せてくれるならそちらにお願いしますと言った。(全く噛み合わない2人)
あいつと同じテンションで仕事すると思われるの無理すぎる。やだなー。
彼女は一緒に帰ろうとしていたけれど、
わたしは生理が来てしまい、
お手洗いに時間がかかりそうだったので、
先に帰ってもらった。
なんで自分の会社って、
いつもタイミーで会う人達みたいに仲良くならないんだろう。謎。
王子様が働く街に移動した。
今日は彼がポジションを確認していたくらいだから間違いなくいる。ひゃっほう!!!!!!!
わたしは緊張でご飯なんてとても食べられないから、そのまま工場へ行った。
今日も勤務前に休憩室で会えるかもしれないし、
彼はまたそのまま帰ってしまうかもしれない。
わたしはお手洗いの個室の中でハラハラしていた。
仕事前の一瞬を逃してしまったら、
今日わたしがここに来た意味はないのだ。
ゔぅ…またお腹がゴロゴロしている。山根くんだ。
祈るようにお手洗いから出ると、
王子様がこちらに向かってきた。
彼もお手洗いに行くところだったみたいだ。
今日は珍しくちゃんと帽子をかぶっている。
わたしが「お疲れ様です」と言うと、
彼は今日はぼそっと「おつかれ」と言ってくれた。
はっ!今日は普通に返ってきた!!!!!!!
今日は普通の人じゃん!!!!!
わたしは超わかりやすい女だから、
やっぱりマスクはしておいたほうがいいのか。
そして帽子をかぶっていてもカッコいい。
目が合っていたかどうかは今日もまた記憶にない。
彼がお手洗いから出てくるのを見計らって、
わたしはロッカールームから出る。
(このときの後ろ姿は誰にも見られたくない)
彼はわたしの前を歩き、
自販機の前にいた彼より背の低そうな男性社員に、
「順調?」と笑いかけて作業場に戻っていった。
今日は機嫌が良いのかもしれない。
なんか良いことあったのかな。
わたしもご機嫌で休憩室に入ると、
今日はクソ女が案内していた。最悪だ。
いつもわたしと彼を引き離すクソゴミ女。
頼むからこいつと仕事のできないおじさんはタイミーと接点のないところに行ってほしい。大嫌いだ。
今日は同担の女の子も来ていたのでお喋りしていた。
彼の話はしなかったけれど。
掲示板には明日のポジションがもう貼ってあって、
彼は明日は休みらしい。
明日は夜の募集がないからわたしも来ないし、
次の土曜日は期待できそうだ。
それだけでもニヤけてしまう。
しかし移動が始まったところで、
クソゴミ女は同担の女の子とわたし目がけて
「3階で」と指示した。
今日は彼がいるのに!!!!!!!!!!お前マジで死ねや。わたしは無言で頷いて3階に行った。
こんな顔をされても、
こいつは学習せずにまたきっとこうやって声をかけてくるのだ。馬鹿なの?お前も障害者なの?だから1回死んでくれ。(2回目)
同担の女の子に「やられたね」と言ったけれど、
彼女は暑さのほうが心配のようで、
あまり気にしてないみたいだった。
わたしはやっぱりさっき彼に挨拶ができてよかったと心の底からホッとしていた。
せっかくここに来ても、
あのクソゴミ女にチャンスを潰されたらたまったもんじゃない。天敵よ、頼むから今夜にでも死んでくれ。(3回目)
悔しいけどまだ土曜日がある。
大丈夫、さっき挨拶返してくれたし、
今日はそれで元が取れた。
そう言い聞かせながら作業していると、
数メートル後方を彼が歩いていくのが見えた。
なぜか彼もこっちを見ていたような気がする。
…あれ?帰るの?
あのリラックスした感じの歩き方や雰囲気からして、
彼はきっと帰るところに違いない。
だんだんそういうのがわかってきた。
なんだ今日は1階に行けてもダメだったのか。
わたし別に仕事しなくても仕事前にあの辺ウロウロするだけでいいんじゃね…?上限…。
そしてなぜ上がる10分前に、
わざわざ1階から3階まで上ってお手洗いにだけ来たんだろう?謎。
もしかして今日もあの時間わたしがいると思った?
そんなまさかね!!!!!!!!!!
おばちゃんは騙されませんよあっはっは!
今日もそんな考え事をしながら働いて帰ってきた。
今日のパートさん達は優しかった。よかった。
今日はタイミーの人も見たことある人がいっぱいいてホッとした。来てよかった。
そしてやっぱり彼は先に帰っていた。
急いで帰る同担の女の子に慌てて付いて行って工場を出たら、
久しぶりに春に手を握ってきた気持ち悪い男がいた。
数メートル先からお疲れ様ですと声をかけられ、
わたし達が通り過ぎた後なのに、
また1人で「あ!」とか言っていて、
わたしはまたとてつもない恐怖を感じた。
わたしが最近障害者っぽい男性が怖くてたまらないのはきっとこいつのせいだ。
最近あいつはいなかったから油断していたけれど、
土曜日はやっぱり母親に電話しながら来よう。
あれでもおかん仕事だったかもな…やべえ。
同担の女の子はわたしと別の電車に乗るので、
「あまり長居しないほうがいいね」と言われて、
工場の前で別れた。
わたしは近くのお店のロッカーに荷物を預けていたのでそれを取りに行った後、
駅や電車であいつと出くわしてしまったらどうしようとまた恐怖を感じていた。
あいつとは絶対に一緒に帰りたくない。
最寄り駅も言いたくないし、
電車で並んで座るのも嫌だ。
でも今日のあの感じだと、
会ったら絶対に話しかけてくるだろう。怖すぎる。
とりあえずあいつがいないか通行人を1人1人確認し、
駅のホームにもあいつがいないか確認してから、
できるだけ奥のほうで電車を待った。
頼むから電車早く来て!!!
マジでこわい!!!
やっと乗れた電車の中でこれを書いていたら、
わたしは家とは逆方向の電車に乗ってしまったことに気がついた。しかも5駅も進んでから。遅っ。
またあいつと出くわさないように、
一番端っこの車両に乗って戻った。
行く先も見ないで乗るなんて、
どんだけビビってたんだろうわたし。
工場の最寄り駅から同じ車両に乗ってきたのはスーツのおじさん1人だけで、わたしは心底ホッとした。
土曜日の朝に行ったら、
頼むから駅で好きな人と出くわさないかなと、
いろんな意味で思うのだ。
わたしはきっと、
「ここの階段1人で歩きたくないんですぅ!!!」
と引きつった顔で言って、
また彼に変な女だと思われるに違いないけれど、
彼といればあいつは絶対に何もしてこないはずだ。
頼むよ王子様。
いやもう1人じゃないならタイミーの人でもいい。
怖すぎる。あいつと2人にはなりたくない。
わたしはただただ好きな人に会いたいだけなのに、
どうしていつもこんないくつもの難関を越えていかなければならないんだろう。
普通に連絡して普通に好きな人に会える女性達が、
心の底から羨ましくてたまらない。
わたしは一体どこで人生間違ってしまったんだろう。