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AIと紡ぐ現代架空魔術目録 第2編『専門職のための術具・法具一覧』

割引あり

巻頭辞

 かつてなき時代の幕開けに、古の知識が今上の技術と交わりし時、新たなる魔術の書が生まれん。この目録には、遥か古より伝わる秘儀と、人為の神秘が織り成す智慧が綴られており、読む者に未知なる領域への扉を開かせん。心を開き、理解を深め、そして未来を創造せよ。ここに記されしは、架空の魔術の数々――しかし、その奥義は今上の世にも広く影を落とすであろう。さあ、この奥深い知識の海へと旅立ち、人為の神秘と共に、未踏の魔術を探求せん。
 我、ダリアン・スリスウィスパーは、星々の囁きを聞き、大地の息吹を感じながら、この目録に、遠き古の時代より伝わる魔の秘密を書き残す。輝く法具、息づく術具、それらは全て人為の神秘がこの世界に生み出した。だが、真の魔術は心の中に宿る。この書のページを繰る者よ、古の智慧にのまれることなく、汝の内なる力を常に見いだせ。我らが歩んだ道は、今もなお、星の光の如く汝を導くだろう。

謝辞

親愛なるセリアン・アートメイヴへ

 君の手によってこの目録に刻まれた魔法は、単なる絵画を超えた、この世界における真の神秘を捉えている。君の描く挿絵は、我々の魔術の書を変哲なき文献から、魔法そのものが宿る神聖なる遺物へと昇華させた。君の筆致から生み出される美麗なるイメージは、読者たちを魔術の深淵へと誘い、彼らの心に永遠の印象を刻むだろう。

 我々の言葉で語り得る知識を、君は視覚の言葉で語る。その才能に心からの感謝と敬意を表し、君がこれからも多くの人々の心に魔法の火を灯し続けることを願う。

 ダリアン・スリスウィスパー

専門職のための術具・法具一覧について

 この編は、諸君らの魔術・魔法の行使を支える術具・法具を紹介するものである。専門職としてアカデミーおよび各職能ギルドで有意義な仕事をするためには術具や法具にも精通しておかなければならない。また中には禁忌に触れる違法な物もある。そうした物を誤って用いることないよう、十分な知識を身に付けておかなければならない。

第一節 術具と法具について

 勤勉なる諸君らにとって術具と法具の違いは既によく知られているであろう。しかし、中には不心得の怠惰者もいるであろうから、ここで紐解くことにする。
 知っての通り、錬金術と自然科学の応用によって術式を行使するのが魔術、超自然的神秘の誘引と発現によって術式を行使するのが魔法である。そして言うまでもなく、魔術によって生成された道具が『術具』であり、魔法によって生成された道具が『法具』である。
 ときに、魔術に貢献するのが術具で、魔法に貢献するのが法具であると考える者がいるが、その認識は誤りある。勤勉な諸君は間違ってもギルドの面接試験などでそのような誤見識を披露し、恥することのないように理解を大いに深めなければならない。

第二節 術具と法具一覧

1 術具と法具

(1)一般的な術具と法具

 この魔法社会には実に様々な術具が存在するが、そのうち広く一般に用いられるのは次のようなものである。

『光学魔術記録装置』
 もはや知らぬ者のない術具であろう。光と印画の術式により目に映るこの世界の有様を静的または動的に記録するものである。歴史的出来事の記録用術具として常用される。

最も一般的な『光学魔術記録装置』

 より鮮明で美しい魔術記録を残すために、『光の瞳』の数や質、『印画の素子』の微細さなどを徹底追及する愛好家が多いことでも知られる術具である。中央に配置された『光の瞳』が映像を捉え、周辺に配置された『照明の瞳』が魔術記録の明るさを調整する。ゴブレットの中は液状の『印画の素子』で満たされており、その粒子が微細であればあるほど鮮明で美しい像を魔術記録として残すことができる。
 ゴブレットの大きさは記録できる魔術記録の容量と長さに関わり、静的記録であれ動的記録であれ、ゴブレットに満たされた『印画の素子』の量が多いほど多く長く魔術記録を保持することができる。
 記録済みの『印画の素子』は、『記録の書』のページや『魔術記録再生の
水鏡』に注ぎかけることによってその保存を長期的にし、また動的記録を再生することができる。
 最近では、個体の『印画の素子』が開発されたことで、小型化が顕著に進んでいるが、愛好家は敢えて大きなゴブレットと『光の瞳』そして『照明の瞳』の数が多い大掛かりなものを好む傾向にある。

『携帯式光学魔術記録装置』

最新型の『携帯式光学魔術記録装置』の中でも高性能かつ高機能なもの

 錬金術に長けた当代随一のソーサラーであるとともに、最も成功した女性実務家の一人であるカリーナ・ハルトマンが経営する『ハルトマン・マギックス(旧ハルトマン魔法万販売所)』が開発した個体式の『印画の素子』採用により携帯性が飛躍的に向上した『光学式魔術記録装置』である。
 ここで紹介したものはその中でも特に高性能・高機能なものり、『光の瞳』や『照明の瞳』自体を交換しなくても、外側からそれらに対して魔力的な干渉をすることでその能力を向上させることのできる『魔術式拡張回路』を搭載している。これにより使用者が『輻輳の手指』で魔力拡張・輻輳された状態で操作することにより、高価な『術具』を錬金術的に用いなくても、魔術的にその性能を向上させることができるようになった。
 この『魔術式拡張回路』の開発は画期的であり、術具の小型化における錬金術的・魔術的ブレイクスルーとなった。今では若者を中心に、必携の『術具』となっている。

若き日のカリーナ・ハルトマンと妹リセーナ・ハルトマンの肖像

(参考)
 手前の赤いローブを身に付けた黒髪の女性がカリーナ・ハルトマンである。奥の銀髪の女性は妹のリセーナ・ハルトマンで、両名共に錬金術に優れた権威純血魔導士(エキスパート・ソーサラー)であり、かつ優れた実業家でもある。有名店『ハルトマン・マギックス』を共同経営している。
 特にカリーナは、熟練魔術師(アデプト・ウィザード)が愛好する『閃光のワンド』に用いる『人為のルビー』の開発に成功したことでとりわけ著名である。『法石』は『術具』や『法具』の力を大幅に拡張する力を秘めているが、それは一般に希少で高価であり、プレタポルテの術具や法具に搭載することはコスト的に難しいのが一般であった。しかし『人為のルビー』の開発成功の後は、その安価な大量生産の実現により光と炎の魔法の分野において手軽にその魔力を増幅することが可能となった。
 もちろん、本物の『真石ルビー』に及ぶものではないが、実用的な魔力拡張には十分すぎるほどの効果を発揮し、『閃光のワンド』の他、ウィザード用の『神秘のティアラ』にもしばしば搭載される。
 姉のこの偉大な成功に触発されたリセーナは、より強力な『人為のダイヤモンド』の生成を密かに目論んでいるとされ、一説ではすでにいくつかが完成したともいわれているが真偽のほどは定かでない。

自然的に存在する『真石ルビー』
それは光と炎の魔法力を著しく拡張・増幅するが『法石』の中でも特に希少であるため、『人為のルビー』が開発される以前は、きわめて高価なオートクチュールの法具にのみ使用された。光と炎を主に扱う魔術師(ウィザード)にとっては垂涎の『法石』であり、『真石ルビー』を取り付けた『神秘のティアラ』は金持ちの魔術師の間で秘密裏に高値で取引されている。

『愛らしいゴーストグッズ』
 若い術士や魔法使いの間で人気を博しているキャラクターグッズの総称である。特に『携帯式光学魔術記録装置』用のアクセサリとして広く愛用されている。この『愛らしいゴースト』とは当代で特に著名なあるマスター・ネクロマンサー(終学死霊術士)が好んで召喚する何とも言えない表情のゴーストをモデルにしている。若者たちの言葉で言えば、いわゆるキモカワゴーストである。
 その市場価値にいち早く目を付けたのがカリーナ・ハルトマンであり、そのネクロマンサーを口説き落として商品化にこぎつけたと言われている。カリーナとしては、ゴーストだけではなくスケルトンも商品化したいそうだが、なぜかそのネクロマンサーはスケルトンの召喚を頑なに拒んでいる。

『愛らしいゴースト』を配した『携帯式光学魔術記録装置』用のカバー
単なる保護カバーではなく、『携帯式光学魔力記録装置』に内蔵された『魔術式拡張回路』に働きかけることができ、このカバーを装着するだけで『携帯式光学魔力記録装置』の性能が向上する。

『死霊術の法具』

『死霊の魂』:死霊術の法具
霊体を召喚するためには魔法力を要するため、術士である『屍術士』は霊体を召喚することができない。そのため彼女たちがアンデッドを生成し行使するためにはより直接的な方法に頼る必要がある。その際用いられるのがこの『死霊の魂』で、これを遺体に埋め込むことによって屍を『実体を残すアンデッド』として行使することができるようになる。このメダリオンの裏には行使者の名を刻むことになっており、生成されてアンデッドは行使者の命令の身に服する。行使者が命を落とした場合は、そのアンデッドは彷徨える屍となり、無差別に人々を襲う。屍術士のための一般的な法具であるため、様々なブランドが販売しており、生成するアンデッドに特定の属性を賦与するものなど変わり種も多く存在する。
『死霊の魂・再生』:死霊術の法具
『ハルトマン・マギックス』製の『死霊の魂』で、人気の一品。アンデッドは倒されると一定時間行動不能に陥り、その後再生する特性を持つが、このメダリオンを埋め込まれたアンデッドはその再生に要する時間を大幅に短縮することができる。そのため、アンデッド兵を主力とする部隊では戦術的な優位性を発揮する。また、アンデッドの物理干渉に対する耐久力を飛躍的に伸ばすという効果を持つ。これを埋め込まれたスケルトンなどに物理的に対処するのは困難。
『死霊の魂・耐火』:死霊術の法具
『グランデ・トワイライト』社製の『死霊の魂』で、人気法具の一つ。アンデッドは実体的なものであれ霊的なものであれ火に弱いという一般的弱点を持つが、その弱点を克服するために開発された製品で、これを媒介として生成されたアンデッドは火に対してとても強くなる。具体的には『火の玉』程度の術式で駆除するのが困難となる。もちろん『業火への地獄門』などの術式の前ではなす術ないが、それでも実践的には十分に強力な効果を有する。良くも悪くも同ブランドの特性をよくあらわしている。彷徨える屍になられると非常に厄介。

『回復と治癒に関する法具』

『天使の秘薬』
アカデミーは魔法学の教育機関としてではなく慈善団体としての側面をあわせもっている。彼らは災害・戦災孤児をあたたかく迎え入れ、その健康の回復と病気治療のための妙薬としてこの『天使の秘薬』を与える事業を展開している。開発途上の薬であるために救えない命も少なくないが、他に身よりなく栄養不良や深刻な怪我で命の危機にある孤児たちにとっては最後の希望ともいえる投薬処置である。この事業は、孤児の健康の回復と健やかな成長を願うアカデミーの慈愛に満ちたた慈善活動として広く魔法社会の賛辞を集めており、実際の活動には看護学部の所属者があたっている。その意匠は、あらゆる傷病を癒すとされる伝説の秘薬『天使の卵』に着想を得てデザインされている。
『体力回復薬』:術具
良質の薬草、薬液を魔術的に抽出して小瓶に詰めた体力回復用の魔術薬。任務に赴く者には必携の術となっている。様々なブランドが販売を手掛けており、効果効能に若干の違いはあるが、アカデミーの設定する薬品としての基準を満たす必要があるため、どれも大同小異である。
『魔力回復薬』:術具
同じく良質の薬草と薬液を魔術的に抽出した魔力回復用の魔術薬。魔力枯渇を起こしやすい初等のウィザードや、中等のソーサラーはその有無が生死を分かつことにもなる重要な物品。販売のためにはアカデミーが設定する成分基準を満たす必要がある。

(2)服飾に関する術具・法具

 アカデミーは術士・魔法使いの所属する位階に応じて身に付けるべき服飾の在り方を推奨しているのは今更語るまでもなかろう。位階によって着用が許されるものと許されないものがあるほか、着用が義務付けられるものもある。アカデミーで学ぶ諸氏にはもっとも関連の深い内容であるため、注意深く参照されたい。

『制御の魔帽』
 アカデミーに入学してまもない心得(Rookie)と初学者(Novice)が着用を義務付けられる魔力制御のためのリミッターである。この段階の術士や魔法使い、特に先天的に高い魔力を受け継ぐ純血魔導士(ソーサラー)は、魔法威力だけが高くその制御がおぼつかない者が非常に多いため、魔力の暴走から身を守るために着装が義務付けられる。その他の職能にとって着装は推奨であるが、ソーサラーにとっては義務である点に留意しなければならない。

一般的な『制御の魔帽』
初等ウィザード用の『制御の魔帽』
ウィザードが攻撃魔法を行使する際の破壊衝動を魔術的に抑制する『火と光の術具』。ただ、この段階のウィザードはそれほど高密度の魔力を行使できないのが大抵であるどころか、むしろウォーロックやソーサラーと比較して魔力の絶対値に劣る側面があるため、時にはごく限定的にではあるものの他職能との能力的差異を埋めるために『増魔の呪印』が刻まれることがある。上図はつばの前面に光と炎の『増魔の呪印』が実際に刻まれたモデルである。
初等ソーサラー用の『制御の魔帽』
ウィザード用のものとは対照的に、先天的に強大な魔力を受け継ぐがゆえにその暴走の危険を常に抱える初等ソーサラー用の『制御の魔帽』は破壊衝動だけではなく、疑念や疑惑に加え、魔力そのものを強力に抑制するように設計されている。これに『増魔の呪印』を施すことは違反行為であり、停学処分に処される。重犯は退学処分となることもある。
初等ネクロマンサー用の『制御の魔帽』
人間の生死(出産と死)に直接的に携わるネクロマンサーの『制御の魔帽』は破壊衝動よりもむしろ恐怖や不安を魔術的に抑制する。詠唱者が悲しみや動揺のあまりに生命の尊厳を害するような短慮に出ないようにするためである。ネクロマンサーの行使する術式はその性質上どうしても血なまぐさくおぞましいものになりがちであるため、彼女たちの仕事を嫌悪する市民も一定数存在する。そのため、いわれなき誹謗中傷を避けるためにヴェールで顔を隠す者が多い。
初等ウォーロック用の『制御の魔帽』
ウォーロックのための『制御の魔帽』の働きは独特である。破壊衝動や不安を抑制する基本機能は勿論組み込まれているが、その目的の主眼は好奇心旺盛なウォーロックがみだりに高位の術式にアクセスすることを防止することにある。この『制御の魔帽』の管理下にある間は、ウォーロックは行使できる術式が天候の制御に関するものに限定される。時空や星天といった神秘へのアクセスは魔術的に不能にされる。

『保護の手袋』
 魔術や魔法の術式は『術具』や『法具』を含む何らかの武具を媒介して行使するのが一般的であるが、学習を始めてすぐに武具を取り扱うことは難しい上に危険である。そのためアカデミー準備園などの前初等教育機関で、初めて魔術や魔法について学ぶ際には、詠唱者の手指を介して術式にアクセスするが、魔力の暴走により怪我を負う場面が少なくないため、その保護のために着用する『術具』である。これの着装が推薦されるのは、前初等教育機関の在学生とアカデミーの初等科期課程に所属する者(心得:Rookie)である。

もっとも一般的な『保護の手袋』
魔力制御に未熟な詠唱者の手指を魔力暴走から保護するための基本的な『術具』。上図は『グランデ・トワイライト』社製のプレタポルテ。デザインはやや武骨だが、耐魔法の防御術式が魔術的に幾重にも施されており、実用性と安全性は信頼に足る。左に描かれる幼い詠唱者は『ローブ』のようなものを身に付けているが、これは未熟な詠唱者の身体を術式行使の際に生じる物理的な反動から保護するための防御用のケープである。『術具』を用いる場合もあるが、ケープは基本的には一般的な服飾製品である。なお、心得(ルーキー)の位階にある場合でも、努力家で勤勉な者には『輻輳の手指』の装着が許される場合もある。

『輻輳の手指』
 この世界に住む者にとっては身近な品物であるが、外の世界の者には特殊に見える『術具』の代表である。強力な魔法が施された『法具』に属するものもあるが、基本的には魔術的に機能を発揮する『基本術具』である。
 『輻輳の手指』を装着すると、詠唱者の能力に応じて魔法の手指が魔術的に生成され、5本以上の手指を持っている状態が発現する。手指が幾重にも重なって見えることから『輻輳の手指』と呼ばれるのは周知のとおりであろう。
 輻輳する手指の数が多くなるほど、より多くの魔術的・魔法的エレメントに同時にアクセスできるようになり、例えば手指の数が増えるほど一度に生成できる火球の数を増やしたり、発生させる電撃の電圧を向上させたりすることができるようになる。
 初等の術士や魔法使いの最初の課題は、より効率的に『輻輳の手指』を使いこなすことであり、適切な数を有効に活用するための制御法をまずは仕込まれることになる。ただ、最近の『輻輳の手指』は高機能であり、術者の力量を魔術的に読み取って先回りで輻輳すべき手指の数を適切に調整する機能を持っていることが普通である。
 ただこの機能は中等以上の位階に属するようになるとかえって制限になるため、あえてこの機能を持っていない『輻輳の手指』を選択する者も少なくない。

最も一般的な『輻輳の手指』
上図は手の甲の部分に刻まれた大きな呪印によって輻輳数の自動調整機能をもつものである。
初等~中等のウォーロック向けの『輻輳の手指』
非常に女性的で繊細にデザインされているのがウォーロック用の特徴である。しかし、デザインは特に機能的な意味は持っていない。呪印が手の甲と手首の部分の2か所に配置されているが、甲の部分の呪印は輻輳数の自動制御用の呪印であり、手首部分の青光の呪印は『制御の魔帽』と同じくウォーロックが迂闊に神秘にアクセスできないようにするリミッターの働きをしている。
初等~中等のウィザード向けの『輻輳の手指』
先天的な魔法的素養に必ずしも恵まれていないウィザード用の『輻輳の手指』は制限的な側面が弱く寧ろ積極的なエンハンスメントが施されている。例えば、上図のものは、初めから指の数が片手につき6本となっている。これはウィザードの能力的欠缺を魔術的に補うためのアカデミーおよび製造メーカーによる配慮である。
初等~中等のネクロマンサーのうち僧侶を兼ねない者用の『輻輳の手指』
ネクロマンサーに属する者は、僧侶を兼務する者と純粋に死霊術に携わる者に分かれる。上図は死霊術を専攻する者のための『輻輳の手指』である。甲の呪印は輻輳数の自動制御用であるが、行使術式の効果を最大限に発揮できるように輻輳数を積極的に増やす調整になっている。それにより、低位のネクロマンサーであっても多くの数の霊体の召喚が可能になる。
初等~中等のネクロマンサーのうち僧侶を兼ねる者用の『輻輳の手指』
基本構造は同じだが、片手の甲には自動制御用の呪印がない場合が多い。それは回復術や治癒魔法を行使する際には制限を受けない方がよい場面が多いことに対する実際上の配慮で、中等のネクロマンサーでも高位の回復・治癒魔法を必要に応じて柔軟に行使できるようになる。
初等~中等のソーサラー向けの『輻輳の手指』
基本的な構造は他の職能用の『輻輳の手指』と同じであるが、『制御の魔帽』の制限の側面が強い反面、こちらは積極的な輻輳のための呪印が施されている。これはソーサラーが行使する魔術・魔法の特性による。彼女たちは先天的に極めて高い魔力を遺伝的に受け継いでいるため魔力の暴走を制御する必要はあるが、一度魔力の暴走の制御が安定的になれば、つまり大きささえ安定すれば数の点では多くても大丈夫であるという理屈である。特に、ソーサラーは集団攻撃魔法の行使が期待されるため、攻撃に用いる魔術的・魔法的要素に同時にアクセスできることが有効な攻撃範囲と規模を決定づけるため、『輻輳の手指』は最大限輻輳を拡張する方向に調整されている。
高位のウォーロックが好む『輻輳の手指』
高位のウォーロックはとりわけ数の要素『数秘術』へのアクセスを必要とするため、新しいタイプの輻輳数自動制御機能が搭載されていない、自己の魔力で自在に輻輳を制御できる様式の特別な『輻輳の手指』を好む。上図はその一例であり、手首には輻輳数を魔法的に加速度的に輻輳するための腕輪型の別の『法具』が組み合わされている。甲の呪印は制御用ではあるが、最大限の輻輳を可能にするように調整されているため、中等のウォーロックでさえ時の運航や星天の神秘にアクセス可能になるほど飛躍的にその魔法的能力を高める優れた『法具』である。上図は、『キュリオス骨董堂』の店主キューラリオン・エバンデス自身のデザインとされ、その美麗な様式と『法具』としの機能性の高さからウォーロックからの人気が高い。しかしこうした特性は『裏口の魔法使い』も好むため、あらぬ誤解を避けさせる意味でアカデミー内での着装を禁じる教授も多い。

『減魔の手袋』
 魔法よりは魔術を得意とする術士(スカラ・キャスター)用の特別な『法具』。『輻輳の手指』と逆の働きをし、使用時に手指を魔術的に減らす代わりにその分を錬金術力と物理能力にまわして、詠唱者の力を魔法力強化とは違う方向に拡張することができる。これにより武具を用いた継戦能力が改善する。

『減魔の手袋』:法具
魔法使いは一般的に術士と比較して威力・効果ともに大きな力を発揮するが、そのためには常に魔力の消費を必要とするため、継戦時間が短い。それを補うために様々工夫された武具も存在するが、それらの特性を活かすためにもある程度の魔力の発揮を必要とするというジレンマがある。 これは、そうした実際上の問題を解決するために考案されたもので、物理武具の扱いや錬金術に長ける術士の能力を拡張することで、場における継戦能力を安定的に維持することを可能にする。 実用性に優れる『グランデ・トワイライト』ブランドの製品の中でも、とりわけ人気がある。剣術を得意とするウォーロックやネクロマンサーにもこれを好む者が一定数いる。それくらい、場における継戦能力の維持は当事者たちにとって死活問題なのであり、『スペクター・ソード』や『ライトニング・ブリンガー』と特に相性が良い、役立つ『法具』。

『安定の魔靴』
 低等の術士・魔法使い御用達の安全靴である。詠唱者を魔術・魔法行使時の物理的反響から守る重要な働きをするため、心得や初学の者は必ず適切に身に付けなければならない。特に、空気振動、空間磁場、衝撃波の術式を扱う際には魔法制御力が未熟な者は、着装していなければ命に関わる。

もっとも一般的な『安定の魔靴』:術具
初等詠唱者用には強い魔術的呪印が施されており、思わぬ物理的副作用から詠唱者を確実に守る。
ウィザード用の『安定の魔靴』:術具
基本機能は他の職能用のものと大差ないが、初等の時期において先天的な魔法的能力に劣る者がウィザードには多いため一定の範囲で『増魔の呪印』を刻むことが特別に許されている。
ソーサラー用の『安定の魔靴』:術具
抵等位階のうちから集団攻撃魔法を行使可能な素質に恵まれているが、彼女たちの魔術・魔法には大きな物理的反動を伴うものは少ないためその機能は非常にオーソドックスである。そのため、若いソーサラーの中には機能や性能より外観を重視する者も多い。
ネクロマンサー用の『安定の魔靴』:術具
ネクロマンサーの基本術式は『魂魄召喚(Summon Ghost)』であるが、召喚魔法は成功時に強い物理的衝撃を伴うことがしばしばであるため、他の職能の者より強い魔術式手当が施されている。また、彼女たちの主立つ攻撃魔法は電撃系であるため、アースの役割も併せ持つ。
ウォーロック用の『安定の魔靴』:術具
初等のウォーロックの中には雷撃を得意にする者の他、天候の制御の応用として強風や空間衝撃波の術式を得意する者が多い。そのため術式の制御力がまだ未熟な彼女たちにとっては必須の『術具』となっている。特に空間衝撃波の術式を行使するときは、生じる物理的反動が極めて大きいため、これなしでは詠唱者自身が反動で吹き飛ばされてしまうことが多々ある。

『増魔の魔靴』
 中等に進み自身の行使する術式から生じる副作用的な物理反動を十分に制御できる段階に至ると、安定よりも魔力の増幅が一般に望まれるようになる。そのためアカデミーも中等以上の詠唱者には、『増魔の魔靴』の着用を推奨している。中等の詠唱者はアカデミーおよび各ギルドにおける実務者としての主力であるため、魔力の増幅には重要な意味がある。特に大規模集団攻撃魔法の行使によって魔力がガス欠しがちなソーサラーにとっては必携であるとも言えよう。

一般的な『増魔の魔靴』:法具
着用者の魔力を高めるための様々な魔術的・魔法的工夫が凝らされている。上図は若い女性魔法使いに特に人気のキュリオス骨董堂のもので、女性的で美麗なデザインが特に好まれている。また呪印だけでなく『人為の法石』として同店が開発した『エバンデスの涙』が配されており、高い魔力増幅力をも備えた製品である。
ウィザード用の『増魔の魔靴』:法具
おなじみキュリオス骨董堂の製品であり、魔力強化のために『エバンデスの涙』が随所に施されている。その数からして相当の魔力増強力を発揮するものと期待される。
ソーサラー用の『増魔の魔靴』:法具
これはキュリオス骨董堂と人気を二分する『グランデ・トワイライト』社の製品である。やはり多くの『人為の法石』がちりばめられており、高い魔力増強性能を有していることが分かる。使用されている『人為の法石』は『エバンデスの涙』に似ているが、こちらは『グランデ・アクオス』である。『グランデ・アクオス』は廉価量産が可能な『人為の法石』であるため大量に用いることができ、膨大な魔力を必要とするソーサラーに特に愛用されている。
ウォーロック用の『増魔の魔靴』:オートクチュール法具
『キュリオス骨董堂』ブランドにおいて特注生産された一点ものの『増魔の魔靴』である。材質そのものが高い魔力増強力と保持力をもつ『白金糸』で形成されており、かつその全体に多数の『エバンデスの涙』が配されている。また足首部分にはそれ自体が高位の『法具』である『タイニィフェザー』がふんだんに用いられており、きわめて高い魔力増強力と保持力を誇る『ファイン・アーティファクト(傑作)』の一つである。
ネクロマンサー用の『増魔の魔靴』:オートクチュール法具
『キュリオス骨董堂』が制作したオートクチュールの『ファイン・アーティファクト』の一つである。靴の基部自体が『エバンデスの涙』から削り出されており、その魔力増強力は極めて高い。ネクロマンサーは死霊術だけではなく、大規模集団治癒・回復魔法も行使するため、こうした高い魔力供給力をもつ法具が特に好まれる。

『増魔のリボン』
 中等以上の詠唱者が愛用する魔力増強のための装具である。様々なデザインのものが存在するが、性能的にはどれも大差なく詠唱者たちは外観の好みで選ぶのがもっぱらである。最も手軽に詠唱者の魔力を増幅できる術具だが、法石などを配置するスペースに乏しいため『法具』は少ない。

最も一般的な『増魔のリボン』
リボン全体に魔力増強のための様々な呪印が施されている。女性的なデザインが多い。
呪印の数よりも外観の美しさを優先したタイプの『増魔のリボン』
実用品というよりもおしゃれアイテムである。

『神秘のティアラ』
 最上位の位階である『終学(Master)』の位階に達したものだけが公式に着用を認められる高位の『法具』であるとともに、アカデミー教職にとってその指導的地位の証でもあり、社会的な示威のための法具という意味合いが濃い。そのため、『終学(Master)』の位階にない者が、社会的体裁を取り繕うために経済力に物を言わせて不当に入手する事例が後を絶たず社会問題化している。多くは『人為の法石』ではあるが、非常に大粒で多種多数のものが用いられており、法具としての効果は極めて高い。要するに、能力的に未熟な者は高価な『神秘のティアラ』の力を借りることで、自己の能力の不足を隠蔽するわけである。

ハルトマン・マギックス製『神秘のティアラ』:プレタポルテの高等法具
プレタポルテとは言えどもその価格は破格であり、闇取引は後を絶たない。特に、術具・法具の収集愛好家としても知られ、実業家としても成功を収めているカリーナ・ハルトマンの名は常に裏取引の場面で囁かれる。上図のものに用いられているのは全て『人為の法石』であるが、いずれのレベルも高い。また背部に1つだけ取り付けられたとりわけ神秘的な輝きを放つ大粒の『人為の法石』は、実はリセーナ・ハルトマンが極秘に錬成に成功した『人為のダイヤモンド』ではないかと噂され、このティアラはその噂に見合うだけの強大な魔法的能力を着装者に与える。これを持つアカデミー高官にかのパンツェ・ロッティ教授がいるが、これを身に付けていないと極めて凡庸の男であるため、アカデミーの関係者の間では張りぼての教授という不名誉な二つ名を与えられている。しかし本人はこれを頭上に戴いていつもご満悦である。
本物の『真石ダイヤモンド』がふんだんにちりばめられた最高クラスの『神秘のティアラ』
これだけの数の『真石ダイヤモンド』が着装者の魔法力をどれほど拡張するのかは未知数である。かつて禁忌に触れたウォーロックが身に付けていたとされるが真偽は不明。台座は勿論純粋の『白金糸』で構成されている。
『アメジストの神秘のティアラ』:高等法具
生命の領域に関する魔法特性を大きく引き伸ばすアメジストをちりばめた『神秘のティアラ』。真ん中に大きく配置された『法石』(これを主石という)は本物の『真石アメジスト』、周囲を飾るのは『人為のアメジスト』である。マスターの位階に到達したネクロマンサーに死術士のギルドである『死霊術士・屍術士共済組合』から授与される。しかし、ネクロマンサーの多くはこれの代わりにフードかケープを身に付けることが多い。下にあるのは『アメジストの腕飾り』で主石には『真石のアメジスト』が用いられている。フードまたはケープとこの『アメジストの腕飾り』を身に付けるのがマスター・ネクロマンサーの一般的な服飾である。
『エメラルドの神秘のティアラ』:プレタポルテの高等法具
魔法力や魔法特性というよりも魔力それ自体を大幅に拡張することに特化している。特に魔力枯渇を起こしやすいソーサラーに愛用される『神秘のティアラ』。主石は『真石エメラルド』、その他は『人為のエメラルド』であるが、これだけの大きさと数が揃っているため、身に付ける者の魔力量を飛躍的に増大させる。下は『エメラルドの腕飾り』であり、主石は『真石エメラルド』、その他は『人為のエメラルド』であり、両方身に付けることで更に魔力量を増すことができる。ただし相応の価格であるため誰もが手にできる訳ではない。ギルドからの授与品ではないため、詠唱者が自ら購入する必要がある。『ハルトマン・マギックス』製のプレタポルテの高等法具。
『ルビーの神秘のティアラ』:非売品の高等法具
光と火の魔法力と魔法特性を最大限に拡張する『神秘のティアラ』。主石には『真石ルビー』があしらわれ、その周りを多数の『人為のルビー』が取り囲んでいる。マスターの位階に達したウィザードに対して、ウィザードのギルド『全国魔術師協同組合』から授与される。『ハルトマン・マギックス』製の非売品(というのは建前で市場で盛んに裏取引されている)。
『パールの神秘のティアラ』:プレタポルテの高等法具
生命の領域と閃光の領域の魔法力及び魔法特性を際立たせる『神秘のティアラ』。ティアラについては主石のみが『真石パール』で、その他は『人為のパール』であるが、『パールのイヤリング』と『パールの腕飾り』に用いられているのはすべて『真石パール』であり、その価格はとんでもない額になる。『キュリオス骨董度』製。イヤリングと腕飾りを愛用するネクロマンサーが一定数いるほか、閃光の領域の強化は術士にも恩恵をもたらすため、イヤリングと腕飾りを買い求める権威術士(エキスパート・スカラキャスター)もいる(彼女たちの位階には『終学』がないため、ティアラを装着することはできない)。

各種の『ローブ』
 『ローブ』は力ある術士・魔法使いの能力と権威の象徴であり、公式に観にまとうことを許されるのは熟練(アデプト)以上の詠唱者に限られる。初学者(Novice)の詠唱者もアカデミーの儀式やギルドの面接など社会的に公的な場面での着装を許可されるがそれはあくまで儀礼的なものにすぎず、魔力的に恩恵のある『術具』や『法具』としての『ローブ』を着用することは許されない。
 『ローブ』は各職能の専門領域の能力を際立たせる作用があり、中等以上の詠唱者にとっては必須の装具であるが、敵の目を欺き油断させるためにあえて『ローブ』を着用せずに敵地に臨む強者も中には存在するようだ。
 詠唱者にとって極めて重要な意味を持つ装具ではあるが、魔法面での実質的な意味よりも立場を公に示すための社会的示威の性格が強いのも事実である。着飾る魔法使いには無能が多いとよく言われる。

『熟練と権威のローブ』:法具
アカデミーの生徒が中等位階を授かるときアカデミーから授与される基本的な『ローブ』。実際は各職能の力が際立つように職能に応じて異なる呪印が施されている。中等以上の詠唱者たちはアカデミー内で私物の『ローブ』を着用することが認められているが、多くの者はアカデミー内ではこの『熟練と権威のローブ』を身に付けている。いわゆる制服的な側面をもつ。なお『熟練』位階を授かるときに同時に支給されるのみであり、『権威』位階の者も制服としては同じものを身に付ける。
一般的な『ローブ』の例
左から『静青のローブ(ソーサラー用)』、『星光のローブ(ウォーロック用)』、『紅蓮のローブ(ウィザード用)』、『錬金のローブ(術使用)』、『鎮魂のローブ(ネクロマンサー用)』である。
上図は『ハルトマン・マギックス』本店のショーウィンドウの魔術記録。
『金縁のローブ』:法具
中等~高等のソーサラーが好む、静と抑制の性質を際立たせるローブ。金は金属の王とされ、他の金属や物質的要素のあらゆる負の側面から着装者を守る。また他の自然的要素を克服し支配する力を与えるものである。高価ではあるがプレタポルテ品のため一般に入手は可能である。
上図は『キュリオス骨董堂』系列のローブ専門店内の魔術記録。
『開門のローブ』:高等法具
生死の境界、すなわち冥府の門を超えて霊的存在と対話する能力を際立たせるネクロマンサー用の『ローブ』。ネクロマンサーだけは『終学(マスター)』の位階を得た後も『神秘のティアラ』ではなく、顔を隠すためにフードやヴェールを好んで使用する者が多い。そのため、フードやヴェールには『神秘のティアラ』を代替する特別な呪印や魔術的・魔法的処置が施されていることが多い。
『制星のローブ』:法具、ファイン・アーティファクト
極めて能力の高いウォーロックが身に付けていたとされる最高水準の法具としての『ローブ』。全体に精緻に施された呪印はアカデミーの魔法知識の水準だけでは解明しきれないともされる。神秘のファイン・アーティファクトだが製造者・ブランドは不明である。
『獄炎のローブ』:法具、プレタポルテのファイン・アーティファクト
この世界で光と炎、『法石ルビー』といえばカリーナ・ハルトマンをおいてほかにない。彼女自身も愛用する『獄炎のローブ』である。価格は高価であるが、『人為のルビー』の粉末を魔術的に生地に練り込んでおり、光と炎の力を際立たせる。炎のローブであるにもかかわらず、青色が用いられているのは『煉獄の炎』の制御をも可能するためである。火を得意とするウィザード垂涎の逸品であるがその値段の前にうなだれる者も多い。

各種の『アンダードレス』
 『アンダードレス』といっても下着のことではない。ローブの下に身に付ける護身用の服飾であって、ブラウス、コルセット、プリーツスカートで構成されるのが一般的である。純粋な物理防具の役割も果たすため、魔法的のみならず魔術的な処理が多数施されている。
 その外観は実にさまざまであり、アカデミー内でこれの着用が認められる中等以上の位階の者が集う教室は一気に華やかになる。初等位階の者は基本的にアカデミーの制服である術士の制服を着用する。
 ただ、アカデミーに所属する学生にとって極めて評判の悪い校則の中に、「スカートは極力短くあるべし(学則第8章第6節)」というのがある。風紀に関する理事会の特別高等顧問であるパンツェ・ロッティ教授の強硬な主張で導入された規定であるが、その機能的理屈は、自然科学的・錬金術的にも、魔術的にも、魔法的にも一切合理的には説明されていない。ただどうしたことかこの校則に違反した場合の罰則が不釣り合いに重いため、学生たちはしぶしぶそれに従っている。
 中等以上の詠唱者には前述のとおり私物の『アンダードレス』の着用が認められるが、これについても先ほどの厳格な校則は適用される。

一般的な私服の『アンダードレス』の例:術具
左から2つは校則に合致しているが、右の2つは校則違反となる。ブラウスはしなやかで動きやすいものが、コルセットは対物理特性に優れた魔術を施されたものが好まれる。またスカートは短くても不測の問題が生じないように裾を重くする魔術的配慮のされたものが詠唱者たちの人気を博している。
職能ごとの『アンダードレス』の例
左からウォーロック用、ウィザード用、ソーサラー用である。ネクロマンサーは死霊術専攻の者は黒と赤のツートンの『アンダードレス』を、看護学部にも所属する者は白の『アンダードレス』を好んで着用する傾向がある。
『物防特化されたアンダードレス』:高等術具
錬金術を主軸とする魔術的要素をふんだんに盛り込むことで着装者を物理的干渉から保護することに長けたアンダードレス。『グランデ・トワイライト』ブランド製。コルセットはよほど大型のものでない限り獣の咬合にも耐えられるほどに強靭である。左右のものは校則的には無問題だが、中央のものはかつてパンツェ・ロッティ教授から疑義が唱えられたことがある。しかしその主張の基準はよくわからず、その時はあいまいに処理された。
『魔防特化されたアンダードレス』:高等術具
『ハルトマン・マギックス』がハルトマン魔法万販売所の時代から販売を続けている、極めて魔法防御に優れた格式あるアンダードレス。意匠も美しくその『術具』としての性能は申し分ないが、そのデザインがどうにもパンツェ・ロッティ的であるため、市場の評価は分かれている。リセーナ・ハルトマン愛用の一品。
人気ブランド『ラヴィ・ムーン』製のアンダードレス:術具
錬金デザイナー、ラヴィ・ムーンが展開するブランドのアンダードレス。パステルカラーを基調とするフェミニンなデザインが女性術士や魔法使いから大変な人気を博している。権威術士(エキスパート・スカラキャスター)である彼女は錬金術に秀でており、その美術センスも手伝って美しいアンダードレスと次々と市場に投入している。また、術士や魔法使い用の下着デザイナーでもある。どうやらパンツェ・ロッティとその取り巻きたちのお気に入りのようで、次回の制服更新の際にはこのブランドが採用されるのではないかとのもっぱらの噂である。『術具』としてはコルセットの高い防御性能が挙げられる。パステルカラーは単なるおしゃれ要素だけではなく、その色彩に応じた要素の魔法防御力を大きく高める。
『ロコット・アフューム』製のアンダードレス:術具
一般的なアンダードレスは、ブラウス、コルセット、プリーツスカートで構成されるが、校則としてはスカートが短くさえあればよいので、その他の構成・デザインのものも多数存在する。例えば、オリエンタルなデザインのアンダードレスやローブのデザインで知られる『ロコット・アフューム』ブランドでは、上図のようなデザインのアンダードレスが販売されている。召喚した霊的存在とともに場を駆け巡る必要のあるネクロマンサーには、その動きやすさから重宝されている。またコルセットは高い物理的・魔法的防御力を備える。モデルが着装している花飾りはこのブランド独特のデザインの『増魔のリボン』である。
『ミスティックドレス』:高等法具
人気デザイナー、キューラリオン・エバンデス自らがデザインと制作にあたった高等法具としての『アンダードレス』。神秘的な色彩とその美麗なデザインで多くの詠唱者たちの目を引くが、その最大の特徴は長めのスカートである。女性権利向上の活動家としても知られるキューラリオンはアカデミーの詠唱者たちの尊厳と安全を守る意味で常に長めのスカートをデザインしており、詠唱者たちからその点でも絶大な支持を受けている。パンツェ・ロッティ的には忸怩たるものがあるようだが、キューラリオンと過去に何らかの確執があったのか、彼女が手掛けるブランドのスカート丈に対してだけは沈黙と守っている。服飾品としてのみならず、法具としての性能も極めて高い。特に左のケープ付きのものは際立った対魔法防御性能を発揮する。また、右のものは、着装者の魔法威力と魔法効果を同時に高める高度な魔法的処置が施されている。
『マジェスティックブリガンダインドレス』:高等法具
防御力を重視した重装の『アンダードレス』。コルセットに小さな魔法金属を多数打ち付けることで物理防御力と魔法防御力の双方を大幅に強化した実践的なもので、特に敵対勢力との白兵戦も展開しなければならない『術士(スカラ・キャスター)』たちに愛用される。また、魔法使いたちも対アンデッド戦に赴く際には好んで身に付けたという。しかし、防具としての性能を重視する場面でも、学則8章6節は遵守されなければならなかった。
『アカデミー治安維持部隊制服』
アカデミーに所属する治安維持部隊の制服。主に中等の位階に属する者のうち有能でアカデミーに忠実な学生が従事する役職。場に出向くほど危険な仕事ではないが、『裏口の魔法使い』を始めとする犯罪者に対応するため、それなりの危険がある。この職を希望する学生は、保険加入が義務付けられる。実入りはよいため、人気の職種でもある。アカデミーの学則が適用されるのでスカートは短い。使用する武具の主なものは刀剣か杖・ワンドの類で、錬金銃砲の携帯も許されるが、使用制限は厳しく、また制圧力の高いものは携帯できない。
『看護学部の制服とローブ』
アカデミーに設置される看護学部の学生用の制服(アンダードレス)と『ローブ』。『ローブ』はもちろん中等以上の位階に達した者が身に付けることを許される。『制御の魔帽』や『増魔のリボン』の代わりに『看護の術帽』を身に付けるのが一般的。一部の男子学生に非常な人気を誇る。看護学部の支給品でああるため市場で買い求めることはできない。そのため神秘の雲を通じて、盛んに裏取引されており、時には比較的安価な『神秘のティアラ』に匹敵するような高値で取引されるそうである。
アカデミー推奨服飾の着装例(モデルは熟練魔術師:アデプト・ウィザード)
『ローブ』、『アンダードレス』、『輻輳の手指』、『増魔の魔靴』を一式装備するとこの様になる。彼女は『増魔のリボン』の代わりに大粒の『グランデ・アクオス』のイヤリングを身に付けている。詠唱者自身が自己の外観に気を使って多少のアレンジをすることを、アカデミーは詠唱者の安全にかかわる場合を除いて、比較的寛容に認めている。スカート丈はパンツェ・ロッティ教授ご納得の長さである。

(3)武具

 この世界では、術士も魔法使いも独立して職能の行使に当たる。他の世界に見られるような騎士や戦士といった専門職能は存在せず、諸君たちはこうした働きに必要な能力も身に付けなければならない。そのために武具は必須の要素である。それと同時に、武具は魔術や魔法の術式を行使するための『媒体』の役割を果たすものであるから、自分の職能と得意とする術式の特性をよく理解して選ぶことが肝要である。
 特に術具や法具のデザイナーを目指す術士やソーサラー諸君にはとりわけ重要な学習単元であるのであるから、心して勉学に臨まねばならない。

『帯電のワンド』:雷の術具
閃光と雷の術式を行使するウォーロックやネクロマンサー用の基本的な武具。術式媒体としては相応の力を持ち、中等術式までの力を十分に引き出すことができるが、それ自体は単なる金属の棒であるので武具としての威力は低い。そのため魔力枯渇に常に注意を払わなければならない。
『灯火のワンド』:火の術具
光と炎の術式を行使する詠唱者、主にウィザードのための基本的な武具である。術式媒体としては中等術式の行使に耐えるが、武具としては単なる金属の棒である。魔力枯渇に注意が必要。
『冷静のワンド』:水と氷の基本術具
水と氷の術式を行使するのに長けたソーサラー用の基本的な武具。中等術式までであれば集団攻撃魔法を含めてその力を効果的に引き出すことができる。また柄の突端が鋭い刺しになっているため、刺突攻撃に用いることもできるが、その威力はあくまでも緊急避難的なものである。ソーサラーは魔力消費が特に大きいので、魔力枯渇には常に気を配らねばならない。
『水氷の杖』:水と氷の術具
高等術式までその力を引き出すことができる杖。十分に熟練や権威のソーサラーの役にも立つバランスの良い術具である。先端が重くなっておりリーチがあるためワンドよりは攻撃的である。
『アクア・ハンマー』:氷の法具
高等術式までの力を引き出すことができる氷の法具。冷属性の打撃武器として優れており、高度な魔法によって生成された殴打部分の氷塊の硬度は高く、効果的な打撃攻撃を行うことができる。優れたソーサラーであればこれに更に氷の魔法を加えることで形状をメイス状に強化することもでき、魔力切れを起こしたソーサラーの攻撃力を維持するのに役立つ実践的な武具である。
『星刃のワンド』:術具
高度な錬金術式によって魔術的に生成された物理攻撃用の術具。術式媒体としても高等術式までの力を引き出すことができるが、属性特性を強化するわけではないため術式媒体としては一般的である。他方、先端の回転する鋭い刃に雷や炎の魔法を載せて強力な魔法刃として切りつけることができ、物理的対応が求められる場面で真価を発揮する。
『星刃の杖』:高等術具
全体が大型化され、術式媒体としても強化された『星刃のワンド』の強化版。術式媒体として高等術式までの力を引き出すことができるが、禁忌術式の力は引き出せない。先端部の回転式刃は更に大型化して鋭くなり、その特性が際立って強化された。権威術士(エキスパート・スカラキャスター)の中でも特に優れた者は、この武具から究極術式である『神殺しの刃』を行使することができる。詠唱者の継戦能力を劇的に高める信頼性の高い武器。『キュリオス骨董堂』の主力商品のひとつ。
『アイシクル・デストロイヤー』:氷の高等武具、ファイン・アーティファクトの一つ
『キュリオス骨董堂』の店主キューラリオン・エバンデス自身の手により生成された巨大な氷塊のハンマー。数多の『エバンデスの涙』が用いられており、物理的武具としても術式媒体としても優れた性能を発揮する。一点ものではないが、その価格は相応に高価である。当然にして、究極術式、禁忌術式の力を存分に引き出すことができる。
『怨念の刃』:死霊術の高等法具
高位のネクロマンサーが愛用する短刀。霊的な存在を直接切断できる優れた対霊武具である。術式媒体としても優れており、禁忌術式までの力を引き出すことができるが、特性的には高等術式と最も相性が良いとされる。これを媒体にして死霊術最大の禁忌魔法である『慈雨』の術式を引き出すことも不可能ではないが、詠唱者の生命と肉体に非常に大きな負担を強いる。『ハルトマン・マギックス』およびその系列店で取り扱いされている。
『ソーサラーズスタッフ』:氷の最高法具、ファイン・アーティファクトの一つ
ソーサラーの名を関するとおり、高位のソーサラーの力を際立たせる杖である。打撃武具としての能力はそれほどではないが、詠唱者に膨大な魔力を流入しその能力を大幅に拡張する。ソーサラーの代名詞といえば大規模集団攻撃魔法である『氷刃の豪雨(Sqall of Ice-Sowards)』であるが、その威力と効果範囲を大幅に拡張することができる。ファイン・アーティファクトではあるが一点ものではない。こちらは、リセーナ・ハルトマンの作で『人為のダイヤモンド』の噂にまつわる一品でもある。
『スペクター・ソード』:死霊術の法具
中等以上のネクロマンサーが携えることの多い特殊なショートソード。中等以上の術士も扱うことができる。魂魄や霊魂、悪霊という霊的な存在を物理的な武具で傷つけることはできないか非常に難しい(専用の『術具』や『法具』であれば可能)が、この『スペクター・ソード』はそうした霊的存在を直接切断することができる。霊的アンデットと対峙する際に魔力枯渇を起こすことは致命的な危機となるため、これを携えた術士やネクロマンサーは心強い味方となる。事実、己の力を過信した中等程度のソーサラーがアンデット軍団との戦いの最中に魔力枯渇を起こし命を落とす例が後を絶たない。『ハルトマン・マギックス』とその系列店が取り扱う。
『ライトニング・ブリンガー』:雷の法具
中等以上のウォーロックが好む閃光と雷の術式の力をよく誘引するロングソード。中等以上の術士も物理武具として用いることができる。際立つ特徴はないが、魔法威力・魔法効果の両方を効果的に高める名品で、『グランデ・トワイライト』社の主力商品のひとつ。柄には大粒の『グランデ・アクオス』が配置されており、携帯者の力を実践的に高めるとともに信頼のおける継戦能力を付加するもので、同ブランドの製品らしい高い実用性を提供している。
『アクオス・スライサー』:閃光の法具
グランデ・アクオスを柄に配置して閃光の魔法力を込めたものであるが、『為石』の力を魔法力の強化ではなく武具の物理特性の強化に振り向けた変わりものの物理武具。詠唱者自身の魔力に依存せず、武具それ自体に魔法特性を賦与しているため継戦能力が極めて高い。こうした実践的武具の考案にかけてはグランデ・トワイライトの右に出る者はなく、これを携えた物理能力に長ける術士ほど心強い味方はないであろう。刃に閃光の魔力が込められているため霊的存在に対しても効果がある。一説には、グランデにはかつて親しく敬愛するソーサラーがいたが、その者が苛烈な戦場において魔力枯渇を起こして命を落とすという経験をしたことがあり、そのような悲劇を防ぐことに密かに使命感を燃やしているという。
『銅金のピック』:錬金術具
服飾ブランドとしても有名な『ラヴィ・ムーン』が取り扱う物理武具。このまま刺突用の武具として用いることもできるが、その醍醐味は『迫りくる針山(Flying Needles)』の針をこれに置き換えてその攻撃力を高めることにある。術士にとっての貴重な集団攻撃魔法の攻撃力を大きく高めることができるため、中等以上の術士が好んで使用する錬金術具で、実用性に非常に優れている。魔法術式の力を引き出す機能はない。
『銅金のショートソード』:錬金術の高等術具
『ハルトマン・マギックス』製の錬金術具。そのまま用いても物理武具として十分な性能を発揮するが、『銅金のピック』と同様に『迫りくる針山(Flying Needles)』の針を代替する目的で用いることで、同術式の攻撃力を飛躍的に高めることができる。術士にとっては大きな価値を持つが、魔法の術式を引き出すことはできないため、魔法使いにとっては単なる護身用の物理武具でしかない。
『高圧水流の大剣』:水の術具
錬金術と自然科学の力で水流を巧みに制御して鋭い刃を生成する水の術具。異国のウォータージェットメスと呼ばれる技術と同じである。水の制御自体は柄に配置された『グランデ・アクオス』が行うため、装備する詠唱者はその制御のために魔力を割く必要がない。そのため、術士でも取り扱うことができ、魔法使いほど武具に恵まれない術士にとって極めて実用性の高い攻撃用武具となる。法具ではないためアンデッド、とりわけ霊的存在への効果は薄いが、生体相手であれば優れた魔術的武具として機能する。いうまでもなく『グランデ・トワイライト』ブランドの製品で、本店とその系列店で広く取り扱われている。実用性と信頼性の高さはいかにも同ブランドの製品らしいものである。
『錬金銃砲・護身用』:錬金術具
魔法力の込められた『法弾』を発射する術使用の飛び道具。魔法使いも使用可能だが、魔法の術式を引き出す媒介能力はない。銃砲は術士が制作し、弾丸は魔法使いが錬成するという両者の協働が生んだ実用的な武具。魔法使いが場に臨む場合に何より警戒すべきが魔力枯渇であるが、錬金銃砲の開発により継戦能力は飛躍的に向上した。ただしアンデットに対する効果はほとんどない。
『錬金銃砲・長距離狙撃用』:錬金術具
破壊力が高く飛距離を伸ばす魔法が込めれた専用の『法弾』をもちいる長距離狙撃用の錬金銃砲。最近では魔術の教練よりも、錬金銃砲の取り扱いを学ぶことに熱心な術士も増えてきた。アカデミーでも専攻科の設置が検討されている。それほどに実用性の高い錬金術性の武具である。ただし、アンデッドに弱いのは同じ。対アンデッド専用弾丸の開発が急がれている。物理特性残すアンデッドには『銀糸』を触媒にした弾丸がやや効果を持つが、霊体にはまるで効かない。
『錬金銃砲・拡散銃砲』:錬金術具
拡散式の『法弾』を打ち出すことで至近距離での破壊力を高めた錬金銃砲。アンデッドに弱いのは相変わらずだが、プレート・アーマーに身を包んだ異国の騎士団に対して効果的な反撃ができるようになった点は大きい。
『錬金銃砲・連射銃砲』:錬金術具
『砲弾』を高速に連射することのできる『錬金銃砲』。場における性圧力が高まったが、弾切れも起こしやすくなった。アンデッドの軍団を相手にする際には過信は禁物。
『錬金銃砲・榴法射出機』:錬金術具
きわめて破壊力の大きい『榴法弾』を打ち出すことのできる錬金銃砲。『錬金銃砲』の開発により、従来型の少人数の魔法使いが行使する集団攻撃魔法対敵軍団、という図式から、銃砲を携えた術士の大部隊対敵の軍団という対立図式に変わり、戦術が大きく転換しつつある。また、弾丸の生成需要が高まっており、アカデミーでも魔法学部魔法科の志願者より錬金学部錬金科や工芸科を志願する者が目立つようになってきた。弾丸の生産はその基礎技術について特許を持つアカデミーに大きな利益をもたらすため、最高評議会も錬金銃砲と法弾に関する専科の設置を進めている。残す課題は、相手がアンデットである場合の対処である。
『魔法銀の弾丸』:法具
最近各地を荒らしまわるようになった『裏口の魔法使い』が率いるアンデッド部隊に対抗するため開発されたアンデッドに効果を有する『魔砲弾』。実体を残すものにも霊体にも一定の効果を発揮するが、致命的なダメージを与えるには至っておらず牽制用の域を出ないが、ないよりははるかにましな弾丸である。アンデッドの大軍への対処に手を焼くアカデミーは、錬金銃砲とこの弾丸を主装備とする術士の部隊、『術士銃砲部隊』を結成した。
『光と火の弾丸』:法具
対アンデッド戦で高い効果を発揮する実用的な弾丸。しかし生成が難しく高コストであるため量産できない課題を抱えている。『為石ルビー』を活用できないか研究開発が進められているが、アカデミーは「抑止力があるなら『魔法銀の弾丸』でよい」という消極的スタンスをとって開発資金援助をしぶるためなかなか前進していない。
『火と光のマジックパペット』
単独もしくは少人数で任務にあたる魔法使いを補助する目的でアカデミーが導入した自動人形『マジックパペット』のうち、火と光の領域の属するもの。ウィザードが連れていることが多い。複数体を同時に使役することもできるため、数の上での不利をある程度補うことができる。その駆動原理は、錬金術と魔法を組み合わせたものだと説明されており、アカデミーが専売している。
『水と氷のマジックパペット』
水と氷の領域に属するものでソーサラーが連れていることが多い。給魔の機能を持っており、『マジックパペット』を物理的に消費することで、そこに内包されていた魔力を使用者に供給することができる。単独で場に臨むソーサラーにとっては心強い存在である。同じくアカデミーの専売。
『閃光と雷のマジックパペット』
閃光と雷の領域に属するものでウォーロックが連れていることが多い。魔法力の拡張に特に優れウォーロックの魔法的特性を上手く引き出すことができる。また給魔の機能もある。同じくアカデミーの専売で、他のブランドにおける取り扱いはないが、『アカデミー術具・魔法具直営販売所』に行けばだれでも買い求めることができる。
『アイス・ソード』:氷の最高法具、ファイン・アーティファクトの一つ
ある天才ソーサラーがアカデミーの高等部在学中(権威の位階に就いていた時)にその卓越した錬金術式と魔法能力によって生成した氷のファイン・アーティファクト。3振りのみが生成されたが、2振りはすでに失われた。残る一つは熱狂的な術具・法具コレクターであるカリーナ・ハルトマンが自身の執務室に保管している。これを生成した天才ソーサラーとカリーナとの間には黒い噂がささやかれることがあるが、そのソーサラーの卓越した才能に対する嫉妬である場合が多い。
『フレイデ』:炎と光の高等法具
ある努力家のウィザードがアカデミー高等部の在学中に自ら生成した炎と光の短剣。術式媒体としての能力は極めて高く、炎と光の属性に限られるが、禁忌術式までの力を存分に引き出すことができる。また、物理的武具としても高い性能を発揮する。本人が所持する一点のみが存在し、カリーナ・ハルトマンが血眼になって探す法具の一つ。
『フラショナル』:炎と光の高等法具
『ハルトマン・マギックス』およびその系列店で取り扱われる炎と光のロングソード。一部地域では国防に従事する高等ウィザードに制式支給されている。安定的に禁忌術式までの力を引き出すことができるが属性領域は炎と光の分野に限られる。光という意味で類似する雷と閃光の領域(ウォーロックの得意分野)では究極術式まで力を導くことができる。そのため、高位のウォーロックもしばしばこれを帯刀している(ただし閃光と稲妻の禁忌術式の力を引き出すことはできない)。強力だが広く普及している武具。
『真紅のフランヴェルジュ』:炎と光の最高法具、ファイン・アーティファクトの一つ
前述した努力家のウィザードは勉学と教練を極め『終学(マスター)』の位階にたどり着きアカデミーの指導教官として活躍した。その彼女が教職時代に錬成したのがこの『真紅のフランヴェルジュ』である。きわめて大きな刀身をもつがそのほとんどは魔術的かつ魔法的に構成されており見た目よりもはるかに軽い。炎と光の属性領域に限定こそされるものの究極術式と禁忌術式の力を最大限に発揮するという際立つ魔法特性を持つ。その柄の部分には大粒の『真石ルビー』が用いられている。本人と共にすでに失われており、カリーナ・ハルトマンはこれの発見のためにその半生を費やすこととなる。

(4)法石

 『法石』には天然に存在して極めて高い魔法的特性をもつ『真石』と、錬金術と魔術あるいは魔法によって人為的に生成された『人為の法石』または単に『為石』が存在する。『真石』はその存在自体が希少できわめて高価であるため、魔力特性の高いものの価格は恐ろしいほどに高価であり、経済的に富貴である一部の魔導士のコミュニティ(その多くは純血魔導士:ソーサラー)が独占している状況にある。実業家としては十分に成功し、大きな富を有しているハルトマン姉妹やキューラリオン・エバンデスらでさえ、余程のことがない限り『真石』を扱うことはできないと言われる。『真石』は魔術と魔法の力の根源である『魔』それ自体の高密度結晶であるが、自然的な生成に頼るしかないため、入手は困難を極める。
 他方、近時は錬金術と自然科学の目覚ましい発展によって人為的に『法石』を生成することが可能になってきており、現在では『法石』といえば『人為の法石/為石』を指すことが一般的となりつつある。特にハルトマン姉妹やエバンデスのような卓越した錬金術式を行使するソーサラーの『為石』精製技術は並外れており、術具や法具に十分な魔力的拡張を行うことができるようになっている。彼女たちの重要な資金源でもある。

『真石ダイヤモンド』
 魔を払い邪を滅する『法石』の王。その存在は極めて希少で、生涯においてその実物を目にする機会を得られない者もしばしばである。強大な魔法特性を持ち、神秘へのアクセスを可能にする。

『真石ダイヤモンド』
『法石』の王の名に恥じない神々しい輝きを放っている。上図は中でも特に希少かつ強力な『オーロラダイヤモンド』の実物の魔術記録である。アカデミーの展示室にも本物はない。
『真石パール』
ダイヤモンドに次ぐ価値と力をもつ『法石』の中の『法石』。生成過程に生命的な要素が介入するためネクロマンサーの能力を特に高める『法石』である。やはり極めて高価。
『真石ルビー』
ダイヤモンド、パールと並び称される最高峰の『法石』の一つ。上記のものはその輝きの中に生命の炎の象徴である不死鳥の像が浮かんで見える『フェニックス・アイ』とよばれる逸品で、実物を目にする機会はまずない。一説では『真紅のフランヴェルジュ』に用いられているのはこの『フェニックス・アイ』であるとされるが、それが失われた今確かめる術は残されていない。
『真石クリスタル』
『真石』の中では比較的豊富に存在するものであるが、あくまで比較上の話である。当然高値で取引されるが、真面目にアカデミーやギルドの仕事に勤しんでいれば、『神秘のティアラ』の主石とするくらいはできるそうである。十二分な魔力特性を持つが、特にソーサラーの術式と相性がよく、彼女たちの才能を存分に引き立てる。

『人為の法石/為石』

『人為の法石/為石』
アカデミー法石研究学会の定例会議開催案内パンレットより引用
近時の錬金術の成果の中でも最も偉大な者のひとつが『人為の宝石/為石』の錬成成功であることは間違いない。『為石』はある特性に属する魔術的あるいは魔法的要素を人為的に凝縮して結晶化させたもので、『真石』に比べて性能が大きく劣るとはいえ、大量生産が可能になったことは大きな錬金術的ブレイクスルーとなった。また、人為的であるがゆえに加工が容易で、様々な術具や法具に応用できるという実践的長所を備えている。

『為石ルビー』
 上図の左上にあるのが、カリーナ・ハルトマンが魔法世界で初めて人為的錬成に成功した『為石』である。これがハルトマン姉妹に巨万の富をもたらしていることは言うまでもない。特に、これを載せたウィザード用の『閃光のワンド』は大ヒット商品となって売れ続けている。

『為石アメジスト』
 上図左下に示されるのが『為石アメジスト』である。量産性に優れ、魔法社会に広く普及している。生命と稲妻に属する魔法特性を大きく拡張することから、ネクロマンサーとウォーロックが愛用する。価格も手ごろで、アクセサリとしても珍重される。

『エバンデスの涙』
 キューラリオン・エバンデスが錬成に成功した、魔力特性の高いオリジナルの『為石』。上図右上のもの。天然の『エバンデスの涙』は存在しない。『キュリオス骨董堂』およびその系列店で販売される『術具』や『法具』に幅広く利用されているほか、その美しい外観のためにアクセサリとしても人気がある。

『エバンデスの涙』を生成するキューラリオン・エバンデスその人
彼女は錬金術に優れるのみならず卓越したデザインセンスと美的感覚を備えており、その手が織り成す美麗な意匠の術具や法具は多くの女性術士・魔法使いの心を捉えて離さない。『キュリオス骨董堂』製というのは大変な人気ブランドの一つを形成している。『魔法市民社会における人権向上委員会』の重鎮でもある彼女は蛇蝎のごとくパンツェ・ロッティのことを嫌っており、権力者である彼を公然と批判する数少ない人物のひとりでもある。

『グランデ・アクオス』
 『グランデ・トワイライト』社が錬成に成功した『為石』。上図右下のもの。これも錬金術のオリジナル『法石』で、天然には存在しない。『エバンデスの涙』同様安価に大量生産できる上に魔法的性能も必要十分であるため、現在の魔法社会に広く普及している。

『グランデ・アクオス』を生成するグランデ・トワイライトその人
彼女は幾度も飛び級を重ね、10代半ばにして『終学』の位階を得た稀代の天才ソーサラーの一人である。にわかには信じがたいが、『グランデ・アクオス』の原型となる『為石』の錬成に初めて成功したとき、彼女はまだ『制御の魔帽』の着装をアカデミーから義務付けられていたという。父のアルフレッド・トワイライト卿は魔法省の高級官僚を務めるソーサラーであり、母のユーリア・トワイライトもカリーナやキューラリオンと並ぶ実業家ソーサラーである。両親ともに『終学』の位階を持つ優れた血統。『キュリオス骨董堂』の製品がデザインに優れるのに対し、『グランデ・トワイライト』ブランドの製品は実用性に優れており、市場の人気を二分している。ただ、同ブランドには未だファイン・アーティファクトがなく、グランデは密かに焦りを感じて、神秘にアクセスする方法を探しているとも言われている(彼女は『終学』の位階を持つので合法的に専攻分野の神秘にアクセスし、それを研究することができる)。マリアンヌ・イゾルデという名の親友がいた。

『為石ダイヤモンド』
 さまざまな噂が囁かれるがその真相は一向に見えてこない謎めいた『為石』。リセーナ・ハルトマンが極秘に開発に成功し、いくつかは既に市場に出回っているとされるが、全くの真偽不明である。不思議なことに、当のリセーナがこれについては固く口を閉ざしており「私は姉には及ばない」と繰り返すのみである。上図の中央に位置するのがそのうちの一つ『為石ブルーダイヤモンド』であるとされている。

『週間・魔法インフィニティ』のスクープ魔術記録
ここに捉えられているのはリセーナ・ハルトマンその人であり、その手にあるのは彼女が極秘裏に錬成に成功したと噂される『為石ダイヤモンド』の一つであると報じられた。リセーナ本人はもちろん『ハルトマン・マギックス』の広報担当も「安価な『為石クリスタル』が、魔術記録時の光の加減でダイヤモンドの様に捉えられただけである」と述べ、一貫して事実を否定している。しかしその光は周辺光の映り込みというよりはその『為石』そのものから放たれているようにも見える。報道によるとリセーナは『為石スターダイヤモンド』、『為石ホワイトダイヤモンド』、『為石ブルーダイヤモンド』の3種類の錬成に成功しており、ホワイトとブルーは既に量産も可能で秘密裏に流通しているとのことである。

 ちなみに、上の『アカデミー法石研究学会の定例会議開催案内パンレット』に描かれている人物が、何かと話題のパンツェ・ロッティ教授その人である。伝え聞くところでは、彼は術士としても魔法使いとしても(劣っているという意味で)およそ『終学(Master)』に域にある者ではないというもっぱらの噂だが、大粒の『為石』を大量に配したその『神秘のティアラ』の助けによって巧みにその欠缺を補い対面を取り繕っている。
 彼自身、錬金術式の力量と美術センスはそれなりに持ち合わせているため、アカデミーの制服決定等の過程に積極的に関与しているが、その嫌われぶりは既に述べた通りである。『神秘のティアラ』の豪華さから分かる通り、金だけは豊富に持ち合わせているようで、『終学(Master)』の地位を金で買ったことは周知の事実となりつつある。しかし、そのティアラの力で拡張された状態の彼の魔法能力はそれなりに高く、また政治力のある高官でもあるため、同僚たちも面と向かって彼に意見することは少ない。しかし、一部の男子生徒や教職員からは絶大な人気と支持を集めており、それは女性たちの冷ややかな目とは対照的なほどの熱狂である。かつて、キューラリオン・エバンデスとリセーナ・ハルトマンとの間に何らかの確執を抱えていた時期があると漏れ聞こえてくる。

(5)錬金金属

 高度な錬金術を駆使して錬成された人為の金属で、魔法社会全体に広く普及しているもの。さまざまな魔術的・魔法的効果を持ち、術具や法具の製作に広く用いられている。アカデミー工芸科の卒業生は特にその取扱いにすぐれ、『魔法鍛冶』として活躍する。

『銅金』
 もっとも錬成と加工が容易な基本的な錬金素材。様々な用途に用いられるが、特に武具や防具の素材として珍重される。魔法特性は悪くなく物理防御にも優れるが、かなりの重量があるため装具に大量に用いるのが難しいという側面がある。

『銅金』のインゴット

『魔法銀』
 アンデッドを傷つけることができる数少ない魔術金属の一つ。アンデッドはこの世界における最大の脅威の一つであるため、積極的に量産されている。ただ、その耐アンデッド効果は限定的で、抑止力としては機能するが、制圧力や殲滅性には乏しい。アンデッドの活動再開をわずかに遅らせる効果があるため、その多くが『魔法銀の法弾』に加工される。

『魔法銀』のインゴット

『炎鉄』
 炎の力を魔術的に封じ込めた鉄。対アンデッド能力に優れるため、刀剣や弾薬などさまざまな武具に加工されるが、その量産は困難で、供給が追い付いていないのが実情である。『火と光の法弾』は特に重用されるが、潤沢な供給の見通しは立っていない。希少錬金金属。

『炎鉄』のインゴット

『氷鋼』
 炎鉄と対を成す水と氷の力を封じ込めた錬金金属。絶えることのない冷気を放ち、非常に硬い。こちらはすでに量産体制が整っているが、対アンデッド効果は低い。例の『アイス・ソード』の素材である。

『氷鋼』のインゴット

『魔鋳鉄』
 魔力を封じ込めた鋳鉄。装備者に魔力を供給する機能をもつため、とくに防具の素材として徴用される。ただし重いので大量に用いるのは難しく、どう軽量化するか、武具デザイナーのセンスと設計力が問われる側面がある。ブリガンダインの裏打ちに使われるのは大抵これの延べ板である。

『魔鋳鉄』のインゴット

『磁電の磁石』
 雷と磁力の力を魔術的に封入して錬成された錬金金属。半重力作用を持ち、軽いのが特性。また丈夫で加工もしやすいため、さまざまな武具に用いられるが、その特性が優れるがゆえに高価である。これをコルセットの裏打ちに用いると、装備者の身体を軽くして素早い動きを可能にする。

『磁電の磁石』のインゴット

『白金糸』
 極めて高い魔法特性を持つとともに、金属的な物理的丈夫さを誇る優れた工芸用の錬金物のひとつ。『神秘のティアラ』の土台や『増魔の靴』の形成に用いられる。金属的な丈夫さを誇りながらそれはしなやかで糸のように扱うことができ、織物を形成することもでき、たいへんに重宝される。『白金糸』製と『魔法銀』製の『神秘のティアラ』では、その価格は桁が一つ違うと言われている。

『白金糸』の糸巻き

『金糸』
 魔力の込められたまばゆく輝く金の糸。しなやかで取り扱いしやすいが、『白金糸』とは異なり金属的な丈夫さはないため、主に『ローブ』の装飾と魔力特性の増強に用いられる。ソーサラーが愛用する『金縁のローブ』がその代表的存在。やはり高価である。

『金糸』の糸巻き

『スペル・バイン』
 極めて優れた魔法特性をもつ糸。この糸で織られた織物を用いて作られた『ローブ』や服飾品はおどろくような高値で取引される。ただし、生成が難しい上、織物が透明なので、部位によっては仕様が難しい場面もある。

『スペル・バイン』の糸巻き
糸巻きの中心で光を放っているのがスペル・バインの本体である。

2 禁忌の術具と法具

 ここから先の記述は大いなる禁忌に触れる。故に、閲覧は禁じられる。

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